日本には「日本三奇(にほんさんき)」と呼ばれる三つの不可思議な存在があります。
それは 天之逆鉾・石乃宝殿・四口の神竈。
これらは、ただの観光スポットでも、ただの神社の一部でもありません。
「どうしてこの形になったのか」
「なぜこの状態が保たれているのか」
「人の力だけでは説明がつくのか」
そうした問いが残り続けているため、古くから特別視され、“奇”として語られてきた存在です。
”日本三奇(にほんさんき)”とは
日本三奇(にほんさんき)とは、江戸時代の医者である橘南谿(たちばな なんけい)が本に書いた日本に三か所ある不思議な物について「三つの奇跡」として本の中で定義したものです。
■ 天之逆鉾(宮崎県 高千穂峰山頂)

霧島連山の高千穂峰の頂に突き立てられる一本の鉾。
これが“天孫降臨の地に残る神器”として伝わる天之逆鉾です。
神話の世界では「伊邪那岐と伊邪那美が国造りの際に用いた矛」である天沼鉾だとされ、山頂に実在の形で残されていること自体が驚異的。
誰がいつどのように設置したのか、明確な答えがないまま時代を超えて存在し続け、歴史人物・文人・武人までもがこの場所を訪れてきました。
鉾の部分は地震や噴火により、現在はレプリカとされており、柄の部分は当時の姿そのものだとされています。
一説には天孫降臨の際に瓊瓊杵尊が山頂に突き刺したとの説があり、偉人坂本龍馬も高千穂峰を訪れた際に鉾を引き抜いたという逸話も残されています。
鉾が山頂に“刺さったまま”の姿。
まさに「天と地を結ぶ象徴」としての神秘を今も放ち続けています。
天之逆鉾については別のページでさらに詳しくまとめているので、興味があればそちらのページも見てください。
■ 石乃宝殿(兵庫県 高砂市 生石神社境内)
生石神社の御神体として祀られている巨大な石造物。
まるで建物の心柱を造る途中で、巨岩ごと時間が止まってしまったかのような形状をしています。
特筆すべきは「浮いているように見える」という点。
支えがあるはずの場所に、決定的な接点が見えず、“浮石”と表現されるほどの異様さが人々を惹きつけます。
古代の国造り神々の物語、疫病平定の逸話など、多くの神話的背景も重なり、
「人工なのか、自然なのか、神が造りかけて残したものなのか」
その答えが今も議論され続けている、謎の巨岩建造物です。
■ 四口の神竈(宮城県 塩竈市 御釜神社境内)
四つの口を持つ竈に水が満たされ続ける。
これが塩竈に伝わる不思議な神具「四口の神竈」。
特徴は
「水が溢れない」
「枯れない」
と古くから伝わる性質。
さらには重大な出来事の前に水色が変化したとする伝承も残っており、かつては国や藩に報告が必要とされたほど重要な“予兆の器”として扱われていました。
日常の道具であるはずの竈が「神の兆しを示す装置」として信仰され続けていることこそ、この神竈が三奇に含まれる理由と言えるでしょう。
■ 日本三奇が示すもの
これら三つには共通する特徴があります。
- 古代信仰と強い結びつき
- 物理・歴史の説明だけでは割り切れない点
- いまこの時代にも“謎”として残っている
つまり日本三奇とは、**神話と現実の境界線上に露出した「異常値」**と言える存在。
神話の中にあるものが、現実世界に物体として残っている不気味さ。
科学の前に“違和感”として立ち現れる奇妙さ。
それが三奇を三奇たらしめています。
観光で訪れてもいいですが、
ここは「古代の世界の入口」を実際に覗き込む場所として歩くのが最も面白い。

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