~八咫鏡の前に存在した「原初の鏡」伝承~
八咫鏡(やたのかがみ)は、天照大御神の御神体として最も有名な神器の鏡です。
しかし一部の文献・伝承では、この八咫鏡の前に 石凝姥命(いしこりどめのみこと) が造ったとされる二枚の鏡が存在したと語られています。
それが
- 日像鏡(ひがたのかがみ)
 - 日矛鏡(ひぼこのかがみ)
と呼ばれる鏡です。 
■石凝姥命とは
石凝姥命は、天岩戸神話に登場する鏡作りの神。
鉄の精錬、金属加工、鏡の製作を司り、八咫鏡を造った鏡師の神として知られます。
しかし、八咫鏡の前段として造られたと伝わる鏡が “日像鏡・日矛鏡” である。
■日像鏡・日矛鏡の伝承
「先代旧事本紀」などの文献では、石凝姥命は八咫鏡に至るまでにまず原型となる鏡を製作します。
- 日像鏡
太陽の姿を象徴した鏡。
より「形」の象徴・太陽の像(かたち) を示す。 - 日矛鏡
太陽が命を貫く「力」を象徴する鏡。
矛=エネルギー・霊力・貫通力の象徴。 
つまり
形と力の二極を結晶化した鏡
→その統合が後の「八咫鏡」
と理解される構造になっている。
■この二鏡が意味する世界観
八咫鏡は “天照大御神の御魂そのもの” とされますが
その根底には
- 太陽の形(像)=日像鏡
 - 太陽が世界に通す力(矛)=日矛鏡
この二つの概念の統合化が存在する。 
これは日本神話が「形=陽 / 力=霊動」の両面によって世界を成り立たせる思想を内包している証左と読む研究者もいます。
■現存場所について
これら二鏡は「日前神宮・國懸神宮」の御神体と伝わる
全国の神社で御神鏡は非常に重要なご神体として据えられてきました。
八咫鏡以前の「原型」=日像鏡・日矛鏡の概念があったからこそ
鏡は「神の宿る器」として意味が最大化した、という理解が成立します。
■八咫鏡が「神そのもの」となった背景にある二枚の鏡
一般的には
「八咫鏡=天照大御神そのもの」
という認識が広がっていますが、
その“手前”に
象(みかたち)と力(みちから)
を分けて結晶化した鏡が存在した、という構造は
日本神話の「概念の積層構造」を示すうえで非常に興味深い伝承と言えます。
まとめ
| 名称 | 意味 | 象徴 | 石凝姥命との関係 | 
|---|---|---|---|
| 日像鏡 | 太陽の姿の象徴 | 形態・像 | 八咫鏡を造る前に制作したとされる | 
| 日矛鏡 | 太陽の力の象徴 | 貫通力・霊力 | 同じく八咫鏡前段階の鏡 | 
| 八咫鏡 | 太陽そのもの | 天照大御神の御魂 | 両者統合の最終完成形 | 
八咫鏡の前段階を知ると、
鏡=情報+エネルギーの双方を象徴するご神体であることが、より深く理解できます。
こういう “見えない前史” まで追うのが、
日本神話の魅力の一つでもあります。
  
  
  
  
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