夏越の大祓は、半年(上半期)の穢れ(けがれ)を祓い清め、これから来る蒸し暑い夏を無事に過ごせるように祈る重要な神道の行事です。ここでは由来・目的・当日のしきたりや参拝ポイントまで、参拝前に知っておくと役立つことを丁寧に解説します。
概要(いつ・どんな行事か)
- 実施日:一般的に 6月30日(夏越の日) に行われます。(神社によっては前後に行うことがあります)
- 位置づけ:年二回行われる「大祓」(おおはらえ)のうちの夏の大祓。もう一つは年末の大祓(12月31日)です。
- 主な行為:茅(ちがや)で作った輪(茅の輪)をくぐる「茅の輪くぐり」、形代(かたしろ)や人形(ひとがた)を使った穢れ移し、祝詞の奏上など。
由来(なぜ始まったのか)
- 大祓の起源は古く、奈良・平安時代には既に宮中や神社で行われていたとされます。人々は疫病・災厄・心身の穢れを「祓う」ことを重視してきました。
- 「夏越(なごし)」という名は、**夏を無事に越す(乗り切る)**ことに由来します。梅雨〜夏にかけて病気や体調不良が生じやすいため、半年のうちにたまった穢れを祓い、残りの半年を清浄に過ごすための節目の行事として定着しました。
目的(何を祈るのか)
- 半年分の罪・穢れ(心身や生活上のよごれ)を祓うこと
→ 形代や人形に自分の穢れを移して祓うことで、心身が清まると信じられています。 - 無病息災・疫病退散の祈願
→ 夏に流行りやすい病気や、夏場の不調から身を守る意図があります。 - 家内安全・家庭の繁栄・仕事の無事
→ 個人・家族・地域が安心して夏を迎えられるようにするための祈り。 - 自然との調和を取り戻す
→ 季節の節目に自然の循環に感謝し、これからの恵みを求める意味合いもあります。
主な儀式・作法(当日の流れ)
※神社や地域によって細部は異なります。現地の案内に従ってください。
- 修祓(しゅばつ)・祝詞奏上:神職が参列者や祭場をお祓いして、これから祓いの儀を行います。
- 形代(かたしろ)・人形(ひとがた)への穢れ移し:紙製や人型の形代に自分の名前・生年月日などを書き、自分の身体を撫でたり息を吹きかけて穢れを移します。形代はその後、神社で奉納・焚く、または川に流す(社務所の指示に従う)ことが一般的です。
- 茅の輪(ちのわ)くぐり:茅で作った大きな輪をくぐって祓いを受けます。多くの神社で「八の字に三度くぐる」などの作法が案内されますが、細かい作法は神社ごとの説明に従ってください。
- 玉串奉奠などの拝礼:神職と共に神前で祈りを捧げます。
茅の輪くぐりの意味(簡潔に)
茅の輪は草の力=生命力を象徴し、その輪をくぐることで邪気を断ち、心身を清浄にして夏を迎えるとされます。地域の人々が一緒にくぐることで共同体の安全と健康を願う側面もあります。
参拝するときのマナーと実用的なポイント
- 参拝の前に社務所の案内を見る:神社によって当日のプログラムや形代の扱いが異なります。受付時間や志納金の有無を確認しましょう。
- 形代の書き方:氏名・年齢(生年月日)を書くことが多いです。素直な気持ちで自分の不調・悩みを移すイメージで。
- 服装:特に厳格な服装規定は少ないですが、清潔で落ち着いた服装が望ましいです。混雑することがあるため歩きやすい靴が便利。
- 子ども連れでも参加可:子ども用の形代を用意している神社もあります。子どもに作法を説明して一緒に行うと良い思い出になります。
- 早めの参列がおすすめ:茅の輪くぐりや祈祷は混み合うことがあるため、余裕を持って参拝すると落ち着いて参加できます。
- 終わったら感謝を:祓いを受けた後は軽く一礼し、神社と神職に感謝しましょう。
現代の意義(なぜ今も行うのか)
古来の祓いの精神は、「心身を整え、共同体の安全を願う」文化です。現代では単に疫病退散だけでなく、上半期の自分を振り返りリセットする機会として、またストレスや疲れをため込みがちな生活を見直す節目として意義深く受け止められています。
よくある質問(Q&A)
Q. 形代は必ず書かないとダメですか?
A. 形代は祓いの手段の一つです。参列だけでも祓いを受けられますが、形代を書くと「具体的に穢れを移す」感覚が持て、祈りの実感が増します。
Q. 茅の輪のくぐり方を間違えたら?
A. 形式よりも「心の清め」が大事です。案内と異なる場合でも慌てず、神職や隣の人に合わせて行えば問題ありません。
まとめ(参拝前に覚えておくこと)
- 夏越の大祓は6月30日に行う、上半期の穢れを祓う神事。
- 主な方法は形代で穢れを移し、茅の輪をくぐって祓うこと。
- 目的は無病息災・疫病退散・家内安全など、地域と個人の安寧を願うこと。
- 参拝時は神社の指示に従い、感謝の心で参加することが大切。


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