お正月、神社へ向かう際に必ず目にする「門松」。これは単なる季節の飾りではなく、新年の神様である**「年神様(としがみさま)」を自分の家や地域へお招きするための「案内標識」**です。
1. 門松はなぜ「松」なのか?——その神聖な由来
門松の主役は、その名の通り「松」です。 平安時代、宮中で行われていた**「小松引き」**という行事がルーツとされています。新しい年の初めに、野山で芽吹いたばかりの松の幼木を根こそぎ引き抜き、長寿を願って飾ったのが始まりです。
- 「待つ」と「祀る」: 古来、松は神様が降りてくるのを「待つ(マツ)」木、そして神様を「祀る(マツる)」木であると信じられてきました。
- 常緑樹の生命力: 冬でも青々と葉を茂らせる松は、枯れることのない「不老長寿」と「繁栄」の象徴なのです。
2. 徳川家康の執念? 竹の切り口に隠された伝説
現代の門松といえば、斜めに切られた「竹」が印象的ですが、実はあの形には戦国時代の凄まじいエピソードが隠されています。
もともと竹の切り口は真横に切る「寸胴(ずんどう)」が主流でした。しかし、一説には徳川家康が、宿敵である武田信玄に大敗した「三方ヶ原の戦い」のあと、武田の「竹」を斬るという呪詛を込めて斜めに切り落としたのが、現代の**「そぎ」**の始まりだと言われています。
現在では、その切り口が笑っている顔に見えることから**「笑い口」**と呼ばれ、「笑う門には福来る」という非常に縁起の良い意匠として定着しています。
3. 「雄松」と「雌松」——左右の配置に宿る調和
門松をよく見ると、左右で松の種類が違うことにお気づきでしょうか?
- 左:雄松(黒松 / クロマツ) 樹皮が黒く、葉が硬くて鋭い。男性的な力強さを象徴します。
- 右:雌松(赤松 / アカマツ) 樹皮が赤みを帯び、葉が細くて柔らかい。女性的な優美さを象徴します。
このペアを左右に置くことで、家庭の調和や子孫繁栄を願う意味が込められています。参拝の際、神社の門松がどちらを向いているか、ぜひ観察してみてください。
4. 運気を呼び込む「入飾り」と「出飾り」
さらにマニアックな視点として、3本の竹の並べ方があります。
- 入(いれ)飾り: 一番背の低い竹が「内側(玄関側)」に来る配置。商売繁盛や「福を招き入れる」という意味が強く、店舗などでよく見られます。
- 出(だし)飾り: 一番低い竹が「外側」に来る配置。子供の自立や「災いを外に出す」という意味があり、一般家庭で伝統的に使われます。
5. まとめ:門松は神様への「招待状」
門松は、私たちが神様に対して「準備はできています、どうぞこちらへお越しください」と伝える誠意の証です。
神社へ参拝する際、立派な門松を見かけたら、その形や松の種類、竹の切り口をじっくり眺めてみてください。先人たちが込めた「今年こそは幸せになりたい、平和でありたい」という切実な願いが、今の時代にも受け継がれていることに気づくはずです。


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