鹿島神宮・香取神宮の「要石」とは?
関東を代表する古社、鹿島神宮(茨城県)と香取神宮(千葉県)。
どちらも古くから武神を祀る神宮として知られていますが、両社を語るうえで欠かせない存在が、
**要石(かなめいし)**と呼ばれる神秘の石です。
「地震を起こす大ナマズを押さえつけている」という伝承は非常に有名で、多くの参拝者がその姿を見ようと訪れています。
今回はこの要石の正体、由緒、見どころ、そして両神宮の違いまで、詳しく解説します。
■ 要石とは?
“地震を鎮める石”として古代から信仰
要石は、地中深くまで突き刺さっているとされる霊石で、古来「地震を鎮める力を持つ」と信じられてきました。
日本では、地震は地中に棲む大ナマズが暴れることによって起きるという民間信仰が長く伝わっており、
要石はその大ナマズを押さえつけ、封じ込めている石とされています。
要石の伝承は、『鹿島宮要石記』『香取志』など古文書にも記されるほど古いもので、
両神宮の神威の象徴として大切に扱われてきました。
■ 鹿島神宮の要石
● 武神・タケミカヅチの神威が宿る霊石
鹿島神宮に祀られるのは、日本神話に登場する武神武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)。
要石はこの武神の力を象徴する霊物として扱われています。
● 見どころ
- 石の頭が地表にわずか数センチだけ露出
- 周囲が苔むし、静寂な雰囲気
- 説明板には「地震を鎮める守護の石」と明記
鹿島の要石は**凸型(盛り上がって見える)**であるのが特徴で、
地上にわずかに出ている部分からも、長い年月の信仰を感じます。
● 水戸黄門が掘らせた!?
要石にまつわる有名な逸話として、**水戸光圀(徳川光圀)**のエピソードがあります。
光圀が家臣に命じて周辺を掘らせたところ、
どこまで掘っても石が終わらず、
「やがて地の底に達するのではないか」と恐れ、工事を中止したというもの。
この話が、要石が“地中深くまでつながっている”という伝承を後押ししています。
■ 香取神宮の要石
● 経津主神(ふつぬしのかみ)の霊力を示す石
香取神宮のご祭神は経津主大神。
鹿島神宮とともに天孫降臨を導いた武神として有名です。
香取神宮にも要石が「地震を鎮める石」として古くから伝わっています。
● 見どころ
- 鹿島と違い、**凹型(へこんで見える)**が特徴
- 鬱蒼とした森の奥にあり、神秘的
- 猿田彦命を祀る奥宮の近くに位置
鹿島が「陽」なら、香取は「陰」。
そんな対比を感じさせる静かなスポットで、参拝者からは「より神秘的」との声も多い場所です。
■ 鹿島と香取、要石の違い
| 神宮 | 要石の形 | ご祭神 | 伝承 |
|---|---|---|---|
| 鹿島神宮 | 盛り上がっている(凸) | 武甕槌大神 | 大ナマズの頭を抑える |
| 香取神宮 | へこんでいる(凹) | 経津主大神 | 大ナマズの尾を抑える |
両社の要石は性質が異なると伝わり、
「鹿島が頭、香取が尾」を押さえているため、東国の地震が鎮まる――という古い言い伝えがあります。
鹿島と香取が“対”の存在であることを象徴する説話でもあり、
古代から両社が密接な関係にあることを示しています。
■ 要石の由緒
『常陸国風土記』や『古語拾遺』などにも、
武神が地を鎮めたという内容が記され、
東国の地は鹿島・香取の武神が治め、守ってきたとされています。
特に奈良時代以降、律令国家は鹿島・香取の神を
**「国家鎮護の神」**として重視し、
それが要石信仰にも深く関わっています。
地震の多い日本において、「地を鎮める力」を象徴した存在として、
要石は古代から現代まで尊崇され続けています。
■ アクセス
鹿島神宮
- 所在地:茨城県鹿嶋市宮中2306-1
- 要石の場所:奥参道の森の中
- 最寄駅:鹿島神宮駅から徒歩10分
香取神宮
- 所在地:千葉県香取市香取1697
- 要石の場所:奥宮付近、森の中
- 最寄駅:佐原駅からバス
どちらも広い境内の奥地にあり、
少し歩く分だけ、静謐な空気をたっぷり味わえる場所です。
■ まとめ
鹿島神宮と香取神宮の要石は、ただの石ではありません。
- 地震を鎮める霊石
- 古代武神の力の象徴
- 鹿島=凸、香取=凹
- 大ナマズ伝承の元になった存在
- 水戸光圀の逸話もあり話題性抜群
神話・歴史・信仰が交わる、日本でも極めて貴重な名所です。
両神宮をめぐって要石を訪れると、
東国を守ってきた武神たちの壮大な物語を肌で感じることができます。


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