【書物図鑑】『古事記』新しい時代の幕開け!神話のクライマックス「天孫降臨」

「国譲り」によって、地上世界である葦原中国(あしはらのなかつくに)の統治権は、大国主神(オオクニヌシノカミ)から天上の神々(高天原)へと移されました。

いよいよ、高天原の主宰神である天照大御神(アマテラスオオミカミ)の孫が地上に降り立ち、統治を始める――この壮大な出来事こそが、『古事記』神話のクライマックス、「天孫降臨(てんそんこうりん)」です。

この記事では、日本の皇室の祖神が地上へ降り立つまでの準備、旅路、そしてその後の展開を詳しく解説します。


1. 降臨の主人公と準備

天孫降臨とは、「天照大御神の孫(天孫)が、高天原から地上へ降臨すること」を意味します。

👑 邇邇芸命(ニニギノミコト)の使命

当初、降臨を命じられたのはアマテラスの子である天忍穂耳命(アメノオシホミミノミコト)でしたが、彼は地上が騒がしいとしてためらいました。その後、その子である邇邇芸命(ニニギノミコト)が降臨の使命を引き継ぐことになります。

💎 三種の神器の継承

ニニギノミコトは、地上世界を治めるための正統な証として、アマテラスから三種の神器を授けられます。

神器概要象徴する意味
八咫鏡(やたのかがみ)天岩戸神話でアマテラスを誘い出した鏡。アマテラス自身の御魂(みたま)であり、誠実さ。
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)装飾品として使われた勾玉。豊かな実り生命力の象徴。
草薙剣(くさなぎのつるぎ)スサノオがヤマタノオロチから得て献上した剣。武力英知の象徴。

アマテラスはニニギノミコトに、「この鏡を私自身だと思って、祀りなさい」という神勅(しんちょく、神の命令)を与えました。


2. 降臨の旅路と道案内の神

ニニギノミコトは、地上へ向かうにあたり、高天原の重要な神々を五伴緒(いつとものお)として連れて行きます。

⛩️ 猿田毘古神(サルタビコ)の出現

ニニギノミコトが高天原から降臨しようとすると、その進路にあたる天の八衢(やちまた、道の交差点)に、強烈な光を放つ、異様な姿の神が立ちはだかっていました。

この神が誰なのか確かめるため、アマテラスは天岩戸神話で活躍した天宇受売命(アメノウズメノミコト)を派遣します。

アメノウズメが問いかけると、その神は「自分は猿田毘古神といい、天孫が降臨することを聞き、道案内のために迎えに来た」と答えます。

🌊 猿女君(さるめのきみ)の始まり

ニニギノミコトは、無事に降臨を果たした後、猿田毘古神を道案内役として派遣してくれたアメノウズメに対し、「その猿田毘古神を送り届け、名を名乗って仕えなさい」と命じました。これにより、アメノウズメは猿女君(さるめのきみ)の祖となり、猿田毘古神とアメノウズメは後に結ばれることになります。


3. 天孫降臨の地と永遠の繁栄の神勅

ニニギノミコト一行は、ついに高天原から地上へ降り立ちます。

🗻 降臨の地

ニニギノミコトが降り立ったのは、日向(ひむか)の高千穂の峰(たかちほのたけ)です。そこから、彼は国見を行い、「ここは韓国(からくに、朝鮮半島)に向かい、真の朝日の直(ただ)に当たる、誠に良い土地である」と宣言します。

🌾 永遠の繁栄の神勅

ニニギノミコトが地上に降りる際、アマテラスから授けられた神勅は、日本の統治の根幹を示すものです。

  1. 「豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は、我が子の孫が治めるべき国である。」
  2. 「葦原の中つ国を平穏に治めよ。」
  3. 「宝(神器)は、私を祀るようにして祭りなさい。」

この神勅によって、天孫の統治が永遠に続くこと、そして武力ではなく平和的な稲穂の国として統治されるべきことが定められました。


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