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【深堀記事】浦島伝説の古典的記述― 丹後国風土記 原文紹介―

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 ここでは浦島太郎伝説について記載のある丹後の風土記から、浦島太郎伝説に関する原文を切り抜きしご紹介をしていきます。

①『丹後国風土記』逸文(浦嶋子伝)

(※『釈日本紀』巻十四所引)

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【原文】

丹後國風土記曰。
 与謝郡。
 日置里。
 此里有(二)筒川村(一)。此人夫、日下部首等先祖、名云(二)筒川嶼子(一)。
 爲人、姿容秀美、風流無レ類。斯、所謂水江浦嶼子者也。
 是、旧宰伊預部馬養連、所レ記無(二)相乖(一)。故、略(二)陳所由之旨(一)。
 長谷朝倉宮御宇天皇御世、嶼子独乘(二)小船(一)、汎(二)出海中(一)爲レ釣。経(二)三日三夜
 (一)、不レ得(二)一魚(一)、乃得(二)五色龜(一)。心思(二)奇異(一)、置(二)于船中(一)即寐、
 忽爲(二)婦人(一)。其容 美麗、更不レ可レ比。
 嶼子問曰「人宅遥遠、海庭人乏、詎人忽來」。
 女娘微咲對曰「風流之士、獨汎(二)蒼海(一)。不レ勝(二)近談(一)、就(二)風雲(一)來」。
 嶼子復問曰「風雲何處來」。
 女娘答曰「天上仙家之人也。請君勿レ 疑。垂(二)相談之愛(一)」。
 爰嶼子知(二)神女(一)、鎭(二)懼疑心(一)。
 女娘語曰「賤妾之意。共(二)天地(一)畢。倶(二)日月(一)極。但君奈何、早(二)先許不之意(一)」。
 嶼子答曰「更無レ所レ言。何觸乎」。
 女娘曰「君冝レ廻レ棹、赴(二)于蓬山(一)」。嶼子従往。
 女娘、教(二)令眠目(一)、即不意之間、至(二)海中博大之嶋(一)。其地如レ敷レ玉。
 闕臺晻映、樓堂玲瓏 。目所レ不レ見、耳所レ不レ聞。
 携手徐行、到(二)一太宅之門(一)。
 女娘曰「君且立(二)此處(一)」、開レ門 入レ内。
 即七竪子來、相語曰「是龜比売之夫也」。
 亦八竪子來、相語曰「是龜比売之夫也」。
 茲知(二)女 娘之名龜比売(一)。及女娘出來。
 嶼子語(二)竪子等事(一)。
 女娘曰「其七竪子者、昴星也。其八竪子者、畢星也。君莫恠焉」。
 即立レ前引導、進(二)入于内(一)。
 女娘父母共相迎、揖而定レ坐。
 于斯、称(二)説人間仙都之別(一)、談(二)議人神偶曾之嘉(一)。
 乃薦(二) 百品尊味(一)。兄弟姉妹等、擧レ坏獻酥酬。隣里幼女等、紅顔戯接。
 仙哥寥亮、神儛逶迤。其爲(二)歡宴 (一)、万倍(二)人間(一)。於茲不レ知(二)日暮(一)。
 但黄昏之時、群仙侶等、漸々退散、即女娘獨留。雙レ肩接レ袖、成(二)夫婦之理(一)。
 于時嶼子、遺(二)舊俗(一)遊(二)仙都(一)、既経(二)三歳(一)。
 忽起(二)懐土之心(一)、独恋(二)二親(一)。
 故、吟哀繁發、嗟歎日益。
 女娘問曰「比來観(二)君夫之貌(一)、異(二)於常時(一)。願聞(二)其志(一)」。
 嶼子對曰「古人言。小人懐レ土。死狐首レ岳。僕以(二)虚談(一)。今斯信然也」。
 女娘問曰「君欲レ帰乎」。
 嶼子答曰「僕近離(二)親故之俗(一)、遠人(二)神仙之堺(一)。不レ忍(二)恋眷(一)、
 輙申(二)軽慮(一)。所望暫還(二)本俗(一)、奉(二)拝二親(一)」。
 女娘、拭レ涙歎曰 「意等(二)金石(一)、共期(二)萬歳(一)、何眷(二)郷里(一)、棄遺一時」。
 即相携徘徊。相談慟哀。
 遂、接レ袂退去、就(二)于岐路(一)。於是、女娘父母親族。但悲レ別送之。
 女娘取(二)玉匣(一)、授(二)嶼子、謂曰「君終不レ遺(二)賎妾(一)、有(二)眷尋(一)者、
 堅(二)握匣(一)、 慎莫開見」。
 即相分乗レ船、仍教(二)令眠目(一)、忽到(二)本土筒川郷(一)。即瞻(二)眺村邑(一)、
 人物遷易、更無レ所レ由。
 爰問(二)郷人(一)曰「水江浦嶼子之家人、今在(二)何処(一)」。
 郷人答曰「君何處人、問(二)舊遠人(一)乎。
 吾聞(二)古老等(一)曰、先世有(二)水江浦嶼子(一)。
 独遊(二)蒼海(一)、復不(二)還來(一)、今経(二) 三百餘歳(一)者、何忽問レ此乎」。
 即銜(二)棄心(一)、雖レ廻(二)郷里(一)、不レ会(二)一親(一)、既逕(二 )旬月(一)。
 乃撫(二)玉匣(一)、而感(二)思神女(一)。
 於是嶼子、忘(二)前日期(一)、忽開(二)玉匣(一)、
 即未レ瞻之間、芳蘭之体、率(二)于風雲(一)、翩飛(二) 蒼天(一)。
 嶼子、即乖(二)違期要(一)、還知(二)復 難(一)レ会。廻レ首踟蹰、咽レ涙徘徊。 

 于斯、拭レ涙歌曰、
 等許余蔽尓 久母多智和多留 美頭能睿能 宇良志麻能古賀 許等母知和多留
 神女遥飛、芳音歌曰、
 夜麻等蔽尓、加是布企阿義天 久母婆奈禮 所企遠理
 等母与 和遠和須良須奈
 嶼子更、不レ勝(二)恋望(一)、歌曰、
 古良尓古非 阿佐刀遠比良企。和我遠礼婆。等許与能波麻能。奈美能等企許由。
 後時人、追加歌曰、
 美頭能睿能、宇良志麻能古我 多麻久志義 阿気受阿理世波 麻多母阿波麻志遠
 等許余蔽尓 久母多智和多留 多由女 久母波都賀米等 和礼曾加奈志企


【現代語訳】

◆ 前半部 現代語訳

丹後国風土記にいう。
与謝郡、日置里。
この里に筒川村がある。
ここに住む人物で、日下部首らの先祖、名を筒川嶼子という。
人となりは、容姿すぐれ、風雅で並ぶ者がいなかった。
いわゆる水江の浦嶼子である。
これは、旧宰・伊預部馬養連が記した内容と一致している。
よって、その由来のあらましを述べる。
長谷朝倉宮で天下を治めた天皇の御代、
嶼子は一人で小舟に乗り、海に出て釣りをした。
三日三夜を経ても一匹の魚も釣れず、
ついに五色の亀を得た。
不思議に思い、船中に置いて眠ったところ、
忽ち婦人となった。
その姿は美しく、比べるものがなかった。
嶼子が問うた。
「ここは人家も遠く、海には人もいない。どうして突然現れたのか。」
女は微笑んで答えた。
「風雅の士が独り大海に漕ぎ出ている。親しく語りたいと思い、風雲に乗って来ました。」
嶼子がさらに問うた。
「風雲とはどこから来たのか。」
女は答えた。
「私は天上の仙家の者です。どうか疑わないでください。あなたと契りを結びたいのです。」
ここで嶼子は神女であると知り、疑いを鎮めた。
女は言った。
「私の願いは、天地とともに尽きることなく、日月とともに極まること。
なのに、あなたはなぜ早くも別れを口にするのですか。」
嶼子は答えた。
「他に言うことはない。何を恐れよう。」
女は言った。
「では、船を返して蓬山へ参りましょう。」
嶼子は従った。
女は目を閉じるように教えた。
すると、いつの間にか海中の大きな島に着いた。
その地は玉を敷きつめたようであった。
宮殿や楼閣は光り輝き、
目にも見たことがなく、耳にも聞いたことがない世界であった。
手を携えて歩き、大きな邸の門に至る。
女は「ここで待っていてください」と言い、中へ入った。
すると七人の童子が来て言った。
「これは亀比売の夫だ。」
また八人の童子が来て言った。
「これは亀比売の夫だ。」
ここで女の名が亀比売であると知る。
嶼子が童子のことを尋ねると、
女は言った。
「七人は昴星、八人は畢星です。怪しむことはありません。」
女は前に立ち導いて奥へ進む。
父母が迎え、礼をして座についた。
ここで人間界と仙都の違いを語り合い、
人と神が偶然に出会った喜びを語った。
多くの珍味が供され、
兄弟姉妹は杯を挙げて酬い、
隣の里の若い娘たちは笑顔で戯れ、
仙人の歌は澄み渡り、神々の舞はゆるやかに続いた。
その宴の楽しさは人間界の万倍であった。
夕暮れを知らぬほどであったが、
黄昏になると仙人たちは退き、
女だけが残り、肩を並べ袖を重ね、夫婦となった。
こうして嶼子は旧俗を離れ、仙都で三年を過ごした。


◆ 後半部 現代語訳

やがて故郷を思う心が起こり、
両親を恋い慕うようになった。
女は尋ねた。
「最近あなたの様子がいつもと違う。どうかその思いを聞かせてください。」
嶼子は答えた。
「昔の人は言いました。
小人は故郷を思う。死んだ狐は丘に向かって頭を向ける、と。
空言と思っていたが、今は本当だと知った。」
女は言った。
「帰りたいのですか。」
嶼子は答えた。
「しばし故郷に帰り、両親を拝みたい。」
女は涙を拭いて嘆いた。
「私たちは万歳を誓ったのに、なぜ郷里を恋い慕うのですか。」
互いに悲しみ、ついに別れの道に至る。
父母や親族も涙ながらに見送った。
女は玉匣を取り、嶼子に授けて言った。
「決して私を忘れず、恋しくなっても、固く握って、決して開けてはなりません。」
舟に分かれて乗り、目を閉じると、
忽ち筒川郷に着いた。
村を眺めると、人も家も変わり、面影はなかった。
郷人に尋ねると、
「水江の浦嶼子は三百年以上前の人だ」と言う。
嶼子は打ちひしがれ、
一月余りを過ごした後、
玉匣を撫でて神女を思い、
ついに約束を忘れて開いてしまう。
すると芳香ある気が風雲とともに天に舞い上がった。
嶼子は約束を破ったことを悟り、
再会は叶わぬと知り、
涙を流して立ち尽くした。


◆ 歌の現代語訳

嶼子の歌

等許余蔽尓 久母多智和多留 美頭能睿能 宇良志麻能古賀 許等母知和多留

常世の方へ雲が立ち渡る。
水の江の浦島の子が言葉を交わしたあの世界へ。


神女の歌

夜麻等蔽尓、加是布企阿義天 久母婆奈禮 所企遠理 等母与 和遠和須良須奈

大和の方へ風が吹き上げ、雲が離れ飛び散る。
友よ、私を忘れないで。


嶼子の歌

古良尓古非 阿佐刀遠比良企 和我遠礼婆 等許与能波麻能 奈美能等企許由

子らを恋い、朝戸を開けば、
常世の浜の波の音が聞こえる。


後人の歌

美頭能睿能 宇良志麻能古我 多麻久志義 阿気受阿理世波 麻多母阿波麻志遠

水の江の浦島の子が玉匣を開けなかったなら、
また会えただろうに。

等許余蔽尓 久母多智和多留 多由女 久母波都賀米等 和礼曾加奈志企

常世へ雲が立ち渡る。
夢か雲の告げか、私は悲しい。



まとめ

浦島伝説は、

  • 『丹後国風土記』(逸文)
  • 『日本書紀』
  • 『万葉集』

という奈良時代以前〜奈良時代の史料にすでに記録されており、
後世の「おとぎ話」よりはるかに古い、神仙思想を伴う説話であることが分かります。

原文を読むと、

  • 亀=海神の娘
  • 蓬萊山(神仙郷)
  • 玉匣(禁忌の箱)
  • 三年=数百年

という要素はすでに奈良時代には完成していたことが確認できます。

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