「和合(わごう)」――
それは、争いをおさめ、人と人、神と神、すべての縁を「結び直す」力。
今回ご紹介するのは、日本神話の中でも登場がわずかでありながら、非常に深い意味と信仰を持つ女神――
**菊理姫命(くくりひめのみこと)**です。
その名の「くくる(括る)」が象徴するように、
争いや断絶を癒し、縁を結び、心をつなぐ神として、近年は特に女性を中心に人気が高まっています。
◆ 菊理姫命とは?
項目 | 内容 |
---|---|
神名 | 菊理姫命(くくりひめのみこと) |
別名 | 白山比咩神(しらやまひめのかみ)とも同一視される |
神格 | 調停神・縁結び神・水の神・霊山の神 |
ご利益 | 縁結び、仲直り、人間関係円満、夫婦和合、安産、水の守護、魂の癒し |
主な神社 | 白山比咩神社(石川県)、白山神社(全国各地に分霊)など |
◆ 神話における登場シーンは「たった一度」
菊理姫命が神話に登場するのは、『日本書紀』の一書(異伝)にたった一度だけ。
黄泉の国から戻ったイザナギ命と、それを責めるイザナミ命が口論する場面で、
仲裁役として間に立ち、なにかを語る女神として登場します。
「是の時に菊理媛神、亦、言(こと)有り。伊奘諾尊、その言を美(よ)しとしたまふ。」
(このとき菊理姫神が言葉を述べた。それを聞いた伊奘諾尊は、その言葉を良しとされた。)
──とありますが、その「言葉の内容」は一切書かれていないのです。
このことが、菊理姫命を「謎めいた神」「霊的な力を持つ神」として際立たせています。
◆ 「括る神」としてのご利益
「くくりひめ」という名前からも分かるように、くくる=まとめる・縁を結ぶ・整えるという意味を持ち、以下のような場面で信仰されています。
ご利益 | 内容 |
---|---|
💞 縁結び・仲直り | 男女の縁はもちろん、人間関係のトラブルを調停する力 |
🏠 家庭円満・夫婦和合 | 争いや不和を鎮め、平和と愛をもたらす |
💧 水の守護 | 白山の水源信仰とともに、水の恵み・浄化力を司る |
👶 安産 | 優しく包み込む女性神として、命の誕生を守護 |
🕊 心の癒し | 不安定な心を静め、魂の調和を図る女神としても人気上昇中 |
◆ 白山信仰の中心|白山比咩神との関係
菊理姫命は、北陸地方を中心に広がる白山信仰の主祭神「白山比咩神(しらやまひめのかみ)」と同一神とみなされることが一般的です。
◉ 白山比咩神社(石川県白山市)
- 北陸最大の霊山「白山」を御神体とする古社。
- 全国の「白山神社」の総本社。
- 主祭神は菊理姫命。イザナギ命・イザナミ命とともに祀られることが多い。
この「白山(はくさん)」は富士山・立山と並ぶ日本三名山のひとつで、
山岳信仰・修験道の拠点としても栄え、多くの信者を集めました。
◆ なぜ人気が高まっているのか?
現代において、菊理姫命は以下のような意味で特に注目を集めています。
- 人間関係の悩みが増える現代で、「仲をとりもつ神」としての力が求められている
- 精神性の高い女性神として、心の平穏やスピリチュアルな癒しを与えてくれる
- 他の神々と異なり、「沈黙の中に語る神」として、内面の声を導いてくれる存在
◆ まとめ|声なき声でつなぐ神、菊理姫命
項目 | 内容 |
---|---|
神名 | 菊理姫命(くくりひめのみこと) |
神格 | 調停神、縁結び、水神、霊山の女神 |
ご利益 | 人間関係改善、縁結び、夫婦円満、水の守護、安産、魂の癒し |
主な信仰 | 白山信仰、白山比咩神社を中心に全国へ拡大 |
特徴 | 『日本書紀』に一言のみ登場する謎多き女神 |
「言葉を語らぬ神」にこそ、
人の心が求める静かな力と導きが宿るのかもしれません。
争いを癒し、縁をつなぎ、心を整えてくれる――
そんな「括る女神」菊理姫命は、今も私たちの人生にそっと寄り添ってくれる神様です。
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