【神社めぐり】井伊谷宮 ― 幕末の動乱に散った皇子を祀る、井伊家ゆかりの聖地

静岡県浜松市北区にある井伊谷宮(いいのやぐう)は、明治時代に創建された比較的新しい神社です。
祀られているのは、南朝の忠臣として知られる宗良親王(むねながしんのう)

戦国時代には井伊直虎の舞台として知られた「井伊谷」の地にあり、井伊家ゆかりの史跡も点在しています。

自然豊かな谷にひっそりと佇むこの神社は、歴史好きにも人気の高い“南朝浪漫”を感じられる場所です。


◇ 井伊谷宮の概要

  • 所在地:静岡県浜松市北区引佐町井伊谷1991-1
  • 創建:明治5年(1872年)
  • 御祭神:宗良親王(むねながしんのう)
  • 社格:旧官幣中社

明治維新後、南北朝時代において忠節を尽くした皇族や武将を顕彰する動きが高まり、
宗良親王を祀る神社として明治天皇の勅命により創建されました。

この地・井伊谷は、かつて宗良親王が拠点としたゆかりの地でもあり、
また戦国武将・井伊家発祥の地としても知られています。


◇ 御祭神 ― 宗良親王とは

宗良親王は、後醍醐天皇の第8皇子であり、南北朝時代に南朝方として各地を転戦した皇族です。
和歌の才能にも秀で、『新葉和歌集』には多くの歌が収められています。

鎌倉を脱した後、駿河・遠江を経てこの井伊谷の地に入り、南朝再興を志して挙兵。
この地を拠点に戦いましたが、やがて敗れて生涯を終えたと伝えられています。

その忠義と高潔な精神は、明治維新後に改めて評価され、
明治天皇の勅命によってこの地に社殿が建立されたのです。


◇ 創建の歴史

井伊谷宮は明治5年(1872年)、宗良親王を顕彰するために明治天皇の勅願によって創建されました。
社殿の造営は井伊家をはじめとする旧幕臣や地元有志の寄進によって行われ、
南朝の忠義を象徴する神社として全国から崇敬を集めました。

創建当初より官幣中社(国家的に重要な神社)に列せられ、
同時期に建立された「湊川神社(楠木正成公)」「吉野神宮(後醍醐天皇)」などと並び、
南朝ゆかりの神々を祀る“南朝三社”の一つとされています。


◇ 境内の見どころ

● 本殿・拝殿

荘厳でありながらも自然と調和した木造建築が特徴。
背後には小高い丘があり、古代よりの霊地であることを感じさせます。

● 宗良親王御陵

境内奥には宗良親王の御陵が静かに佇み、参拝者が絶えません。
苔むした石段を登ると、厳かな空気に包まれる聖域が現れます。

● 井伊家の史跡群

神社の周辺には、井伊谷城跡龍潭寺など、井伊家ゆかりの史跡が点在しています。
特に龍潭寺は井伊直虎の菩提寺として知られ、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の舞台にもなりました。

● 宮司家と井伊家の関係

井伊谷宮の初代宮司は、旧彦根藩井伊家の家臣が務めたと伝えられており、
神社と井伊家との深い縁が今も語り継がれています。


◇ ご利益

  • 開運招福
  • 忠誠心・信義の向上
  • 学業成就・芸能上達(宗良親王が和歌の達人であったことから)
  • 国家安泰・家内安全

とくに宗良親王の「不屈の精神」や「誠実さ」にあやかりたいと、
学生や企業経営者などからも厚く信仰されています。


◇ 季節の行事

  • 春祭(4月):地域の人々が多く集う伝統行事。
  • 例大祭(10月):舞楽や神楽が奉納され、華やかな雰囲気に包まれます。
  • 紅葉の季節(11月):境内の木々が色づき、特に御陵付近は見事な紅葉の名所となります。

◇ アクセス

  • 所在地:静岡県浜松市北区引佐町井伊谷1991-1
  • アクセス
    JR浜松駅から遠鉄バス「渋川方面行き」乗車、「神宮前」下車すぐ
    東名高速道路「浜松西IC」より車で約20分
  • 駐車場:あり(無料)

◇ まとめ

井伊谷宮は、明治の時代に生まれた“忠義と誠の社”です。
南朝の理想を掲げた宗良親王の志と、井伊家の歴史が交差するこの地には、
時代を超えて受け継がれる「正義を貫く心」が息づいています。

紅葉の美しい秋や、井伊谷城跡を巡る歴史散策とともに訪れれば、
より深く日本の歴史と信仰の繋がりを感じることができるでしょう。

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