【神社めぐり】佐太神社 ― 神在月に神々が集う出雲の聖地

■ 佐太神社とは

島根県松江市鹿島町に鎮座する**佐太神社(さだじんじゃ)**は、出雲国の二宮として古くから崇敬を集めてきた由緒ある古社です。
地元では「佐陀大社(さだたいしゃ)」とも呼ばれ、出雲大社に次ぐ格式を誇る神社として知られています。

この神社は「出雲国風土記(733年)」にもその名が記される古社であり、**神在月(旧暦10月)**には出雲大社と並び、**全国の神々をお迎えする「神迎神事」**が行われる特別な場所でもあります。


■ 御祭神

佐太神社の主祭神は以下の三柱です。

  • 正殿(中殿):佐太大神(さだのおおかみ)=猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)
  • 北殿:天照大神(あまてらすおおみかみ)
  • 南殿:素盞嗚尊(すさのおのみこと)

この三殿が並立して祀られているのが大きな特徴で、これは日本でも極めて珍しい構造です。

主祭神の佐太大神は、天孫降臨の際に道案内をした猿田彦大神と同一視され、道開き・交通安全・縁結びの神として広く信仰されています。


■ 歴史と由緒

『出雲国風土記』では「佐太大神社」として記され、当時から出雲の中心的な神社の一つでした。
中世には「佐陀大社」と呼ばれ、**出雲大社の“北方鎮護”**を担う神として信仰が広まります。

江戸時代には松江藩主・松平家の厚い崇敬を受け、社殿の修造や祭礼の保護が行われました。

明治維新後は「国幣中社」に列格し、現在も出雲地方の代表的神社として多くの参拝者を集めています。


■ 社殿の特色

佐太神社の社殿は本殿三殿並立型と呼ばれる珍しい形式で、国の重要文化財に指定されています。

中央の正殿を中心に、北と南に並ぶ二殿が左右対称に配置され、まるで三つの神々が並んで語らうような厳かな姿をしています。

また、拝殿や楼門も重厚な出雲建築の伝統を今に伝え、檜皮葺きの屋根と緩やかな反りが見事な調和を見せています。


■ 神在月の神迎神事

毎年旧暦10月10日(現在の11月中旬ごろ)には、全国の八百万の神々をお迎えする神迎祭が盛大に行われます。

この神事は、出雲大社の神迎祭と同日開催され、
「出雲大社に到着した神々は、翌日には佐太神社にも立ち寄る」
と伝えられています。

その後、神在祭(かみありさい)が7日間にわたって斎行され、神々がこの地で人々の縁結びや幸福を議論するとされています。

この期間中は、神秘的な雰囲気に包まれ、全国から多くの参拝客が訪れます。


■ 佐陀神能(さだしんのう)

佐太神社では、古来より伝わる神事芸能「佐陀神能(さだしんのう)」が奉納されます。

これは出雲地方に伝わる神楽の源流とも言われ、ユネスコ無形文化遺産および国の重要無形民俗文化財に指定されています。

全24座の演目からなり、代表的なものに「塩祓」「御座」「八雲之舞」などがあります。
神々を慰め、土地を祓い清めるこの神事は、出雲神話の原点を感じる厳かな儀式として、今も地元の人々に大切に受け継がれています。


■ アクセス

  • 所在地:島根県松江市鹿島町佐陀宮内73
  • アクセス
     JR松江駅から一畑バス「恵曇方面」行きで約30分、「佐太神社前」下車すぐ
  • 駐車場:あり(無料)

■ まとめ

佐太神社は、出雲の神々の息づく“もう一つの神在の社”
出雲大社と並んで、古代から神々を迎える重要な神社として信仰されてきました。

三殿並立の社殿、神迎の神事、そして佐陀神能――。
ここには「神々と人とを結ぶ」出雲の精神が、今も色濃く息づいています。

出雲大社を訪れる際は、ぜひ佐太神社にも足を延ばし、
神々が集う“出雲のもう一つの聖地”の空気を肌で感じてみてください。

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