熊本県八代市松江城跡の一角に鎮座する**八代宮(やつしろぐう)は、
南朝方の皇子として九州で奮戦した懐良親王(かねながしんのう)**を祀る神社です。
明治時代、護良親王や宗良親王と並び、南朝の忠義を讃える勅命によって創建されました。
歴史の風が薫る八代の地で、今もなお“誠の心”を伝え続ける社です。
◇ 八代宮の概要
- 所在地:熊本県八代市松江城町7-34
- 創建:明治2年(1869年)
- 御祭神:懐良親王(かねながしんのう)
- 社格:旧官幣中社
鎌倉宮(護良親王)や井伊谷宮(宗良親王)と同じく、
明治天皇の勅願によって建立された「南朝忠臣顕彰社」の一つです。
懐良親王がこの地・八代で南朝再興の志を掲げ、九州を治めたことから、
その功績を偲び祀られています。
◇ 御祭神 ― 懐良親王とは
懐良親王は、後醍醐天皇の第11皇子であり、護良親王・宗良親王の弟にあたります。
南朝方の中心人物として九州に下向し、征西将軍として活躍しました。
当時、九州には北朝方の勢力が強く残っていましたが、
懐良親王は菊池氏や阿蘇氏などの豪族を味方につけ、南朝勢力の拠点を築き上げました。
また、中国(明)との外交を通じて「日本国王懐良」として認められるなど、
その影響力は国内外に及びました。
最期は肥後国八代にて崩御したとされ、
その忠誠心と理想主義は後世まで深く敬われています。
◇ 創建の由緒
明治維新後、南朝方の正統性が改めて見直され、
明治天皇は忠義を尽くした南朝の皇族や武将を顕彰するため、
全国各地に「南朝勅願社」を建立しました。
そのうちの一つとして、懐良親王終焉の地・八代に
明治2年(1869年)、勅命により八代宮が創建されました。
創建当時の社地は、かつての八代城(松江城)跡。
静かな堀のほとりに社殿が建てられ、忠義と平和を象徴する地となっています。
◇ 境内の見どころ
● 本殿・拝殿
檜皮葺の優美な社殿が特徴。
明治の勅願社らしい端正な建築様式で、境内には静かな気品が漂います。
● 懐良親王御陵
境内奥にある御陵は、懐良親王が葬られたとされる聖域です。
玉垣に囲まれた厳かな空間で、親王の遺徳を偲ぶ参拝者が絶えません。
● 八代城跡と堀
神社が鎮座する八代城跡は、江戸時代に加藤・松井氏が治めた名城の跡。
堀や石垣が今も残り、歴史散策にもぴったりの場所です。
● 南朝三宮の一社
八代宮は、鎌倉宮(護良親王)、井伊谷宮(宗良親王)とともに
「南朝三宮(なんちょうさんぐう)」の一つに数えられます。
いずれも明治天皇が忠臣を顕彰するために創建した勅願社で、
南朝の理想を現代に伝える重要な存在です。
◇ ご利益
- 開運招福
- 国家安泰・家内安全
- 忠誠心・正義感の向上
- 学業成就・武運長久
懐良親王の生涯にちなんで、「困難に立ち向かう勇気」や「理想を貫く信念」を授かるとされています。
また、海外との交流に尽力した人物であることから、
国際関係・海外成功の守護神としても信仰されています。
◇ 行事と季節の風景
- 例大祭(10月):南朝ゆかりの伝統行事が奉納され、地元の人々で賑わいます。
- 春の桜:城跡の堀沿いに桜が咲き誇り、参拝と花見が同時に楽しめます。
- 秋の紅葉:社殿を包むように色づく紅葉が美しく、写真撮影にも人気です。
境内は四季折々に美しく、静けさの中に歴史の重みを感じさせます。
◇ アクセス
- 所在地:熊本県八代市松江城町7-34
- アクセス:
JR八代駅から徒歩約15分
九州自動車道「八代IC」から車で約10分 - 駐車場:あり(無料)
◇ まとめ
八代宮は、南北朝の激動期に理想と忠義を貫いた懐良親王の志を今に伝える社です。
静かな城跡に佇むその姿は、明治の理想「忠・孝・誠」の象徴でもあります。
歴史ロマンを感じる神社として、鎌倉宮・井伊谷宮とともに巡るのもおすすめ。
南朝三宮をすべて訪ねることで、明治の人々が見つめた“正義の系譜”を感じることができるでしょう。

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