静岡市葵区宮ヶ崎町にある大歳御祖神社(おおとしみおやじんじゃ)は、静岡浅間神社(浅間神社・神部神社など七社の総称)のうちの一社であり、特に「穀物・収穫」「歳の神」の性格を色濃く持つ神社として知られています。
■主祭神
大歳御祖命(おおとしみおやのみこと)
※大歳神、御歳神と関連の深い性格を持つ神
古代から稲作・穀物の収穫をつかさどる神として広く信仰され、日本全国でも「大歳神」「御歳神」は年神信仰に深い関わりを持つ存在ですが、この地では特に「農業・食物・生命力」の根幹を祈る社として大切に守られてきました。
■歴史と由緒
大歳御祖神社が浅間神社七社の中に名を連ねていること自体、静岡の信仰が「火山鎮護の浅間信仰」と「国家的な総社である神部神社」と並行して、農耕の恵みという大地の祈りも大きな柱として存在していたことを示しています。
つまり静岡浅間神社は、
・国土の安泰(神部神社)
・富士火山の鎮護(浅間神社)
・人々の生活を支える収穫祈願(大歳御祖神社)
この三層の信仰が同じ境内で重なり合った場所だと言えます。
また、社殿の多くは江戸時代の造営が現存しており、極彩色の装飾美が魅力として際立ちます。
■見どころ
・装飾の華麗さ
静岡浅間神社の社殿群全体に共通する「極彩色と漆の華美な建築美」はそのまま大歳御祖神社にも見られます。江戸幕府と領主による庇護の痕跡がしっかりと残っています。
・年中行事
歳神に関わる意義から、新年・節目の祈りでの重みが大きく、古来「一年の最初の祈りはまず大歳御祖へ」とする古い風習があったという伝承も残っています。
■不思議な見方
静岡浅間神社を訪れると、多くは「浅間神社」が中心と感じられます。しかし古層を見れば、ここには「国」「火山」「穀物」「年神」「国造り」など、古代信仰の重要ジャンルがすべて一ヶ所に集合しているという特異性があります。
その中で「大歳御祖神社」は、火山でも国家統治でもなく「人が生きる日常の糧」を祈る神として存在している。
このバランスの中に、静岡浅間神社という複合神社の奥深さを強く感じるのです。
■まとめ
大歳御祖神社は「年と穀物の神」を祀り、静岡浅間神社の信仰構造の中で生活の営みと安寧を司る根源的な役割を担ってきました。極彩色建築の美しさだけでなく、
・古代日本の信仰構造の縮図が一社の中にあること
・浅間信仰に隠れがちだが非常に重要な位置にあること
ここが一番の見どころだと私は感じます。静岡浅間神社に訪れたら、ぜひこの大歳御祖神社にも意識して手を合わせてみて下さい。

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