◆はじめに
宮城県塩竈市に鎮座する「志波彦神社(しわひこじんじゃ)」は、東北を代表する古社の一つであり、陸奥国の開拓と国土経営を司る神として崇敬を集めています。
隣接する「塩竈神社」とともに**「陸奥国一之宮」**に列せられ、二社一体として古くから「東北鎮護の神」として信仰されてきました。
荘厳な社殿と美しい庭園、そして松島湾を一望できる高台の景観が見事で、歴史的にも霊的にも非常に価値の高い神社です。
◆神社の概要
- 名称:志波彦神社(しわひこじんじゃ)
- 鎮座地:宮城県塩竈市一森山1-1(塩竈神社境内)
- 社格:旧国幣中社/陸奥国一之宮
- 御祭神:志波彦大神(しわひこのおおかみ)
- 創建:不詳(延喜式神名帳に記載あり、平安時代以前)
- 別称:陸奥総社・志波彦神社・鹽竈神社(しおがまじんじゃ)と並び立つ古社
◆御祭神・志波彦大神とは?
志波彦神社の御祭神は志波彦大神(しわひこのおおかみ)。
志波彦大神は『延喜式神名帳』にも記される古代の神で、陸奥地方の国土開発や農業振興、殖産興業に尽力したと伝わります。
その神徳は「国土守護」「殖産繁栄」「交通安全」「五穀豊穣」など、地域の発展と繁栄を導く神として篤く信仰されてきました。
また、一説には、志波彦大神は**天香語山命(あめのかごやまのみこと)**の御子神であるとも伝えられ、
塩竈神社の主神「塩土老翁神(しおつちのおじのかみ)」と深い関係を持つ神とされています。
◆志波彦神社の歴史
志波彦神社の創建年代は明らかではありませんが、平安時代中期の「延喜式神名帳」(927年)にすでにその名が記載されていることから、少なくとも千年以上の歴史を持つことがわかります。
もともとは陸奥国府(現・多賀城市)付近に鎮座していたとされますが、明治4年(1871年)に鹽竈神社の境内・一森山へと遷座されました。
以来、両社は同じ境内に祀られ、**「志波彦神社・鹽竈神社」**として二社一体の信仰を集めています。
明治時代には国幣中社に列せられ、東北地方の鎮護の神として国家的にも崇敬される存在となりました。
◆ご利益
志波彦大神は、国土経営の神・繁栄の神として以下のようなご利益で知られています。
- 国土安泰・国家繁栄
- 五穀豊穣・農業守護
- 商売繁盛・事業発展
- 交通安全・航海安全
- 家内安全・開運招福
塩竈神社の「航海安全」「安産祈願」の信仰と合わせて、生活のあらゆる面を守護する二柱の神として信仰されています。
◆見どころ
◇荘厳な社殿と共に立つ二社の姿
志波彦神社と塩竈神社は、同じ高台「一森山」に並び立っています。
志波彦神社は東側、塩竈神社は西側に鎮座し、二社を合わせて参拝することで陰陽の調和と完全な御加護を得られると伝わります。
社殿は昭和13年に再建されたもの。流麗な檜造りの社殿は、重厚でありながらも明るく清々しい佇まいです。
◇境内から望む松島湾の絶景
境内からは日本三景・松島湾を一望でき、四季折々の風景が楽しめます。
特に春の桜、秋の紅葉シーズンには多くの参拝客や写真愛好家で賑わいます。
眼下に広がる景色を眺めながら参拝すると、まるで“天上から陸奥国を見守る神”の視点に立ったような気持ちになるでしょう。
◇鹽竈神社との関係
志波彦神社と塩竈神社は、古くから切っても切れない関係にあります。
塩竈神社が「海を司る神」であるのに対し、志波彦神社は「陸を司る神」。
この二社が共に鎮座することで、海と陸・陰と陽・外と内の調和を象徴しているのです。
そのため、両社を参拝することは、人生全体のバランスを整え、あらゆる災厄を祓う「完全な八方除け」とも言われています。
◇志波彦神社博物館(志波彦神社鹽竈神社博物館)
境内には、両社の歴史や文化財を紹介する博物館があります。
国宝や重要文化財に指定された古文書・神輿・刀剣類などが展示され、
志波彦大神・塩竈大神の信仰がいかに地域と共に歩んできたかを知ることができます。
◆年中行事
- 歳旦祭(1月1日):新年の平穏と繁栄を祈る祭典。
- 例大祭(7月10日):両社合同で行われる最大の祭礼。神輿渡御が市内を練り歩き、華やかに行われます。
- 新嘗祭(11月23日):五穀豊穣に感謝する神事。農業関係者の参拝も多い行事です。
◆アクセス情報
- 所在地:宮城県塩竈市一森山1-1
- アクセス:
JR仙石線「本塩釜駅」より徒歩約15分
三陸自動車道「利府中IC」より車で約10分 - 駐車場:あり(無料・約200台)
◆まとめ
志波彦神社は、陸奥国の開拓と繁栄を導いた“国土経営の神”を祀る、東北屈指の名社です。
隣の塩竈神社と共に参拝することで、海と陸、外と内、陰と陽の調和を得ると言われ、まさに人生を整える場所といえるでしょう。
清らかな空気と美しい景観に包まれながら、志波彦大神の御神徳に感謝し、日々の繁栄と平安を祈る——
そんな心静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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