【神社めぐり】尾張と三河の境を守る古社 ― 猿投神社(さなげじんじゃ)


■ 山の神が鎮まる、尾張と三河の“結びの社”

愛知県豊田市猿投町に鎮座する「猿投神社(さなげじんじゃ)」は、
尾張国と三河国の境に位置する山岳信仰の古社です。
社名の「猿投(さなげ)」は、御祭神の神霊が宿るとされる**猿投山(さなげやま)**に由来し、
山そのものがご神体として崇められてきました。

この神社は、古代より三河国の総鎮守・砥鹿神社と並び称され、
山の神・境界の神として、地域の安全と繁栄を守ってきた存在です。


■ 由緒と歴史

『延喜式神名帳』にも記載される式内社で、
創建は第12代景行天皇の御代(約1900年前)と伝えられています。

主祭神は、大碓命(おおうすのみこと)
日本武尊(やまとたけるのみこと)の実兄にあたり、
一時は天皇の命に背いたために東国へ追放されたものの、
最終的にこの猿投の地で神格化されたといわれます。

神話によると、大碓命が猿投山で神々の怒りを鎮めるため、
自ら命を投じて国土を守ったという伝承が残っています。
その霊を祀ったのが、現在の猿投神社の始まりとされています。


■ 境内の見どころ

  • 本殿・拝殿
     現在の社殿は江戸時代中期の再建で、重厚な檜造り。
     杉木立に囲まれ、山の神社らしい厳かな空気が漂います。
  • 西の宮・東の宮
     猿投神社には三社があり、中心となるのが「本社(中の宮)」。
     さらに猿投山山頂には「東の宮」と「西の宮」が鎮座しています。
     東の宮は大碓命の御魂を祀り、西の宮は妻神・宮簀媛命(みやすひめのみこと)を祀るとされ、
     それぞれ山道を1〜2時間かけて登拝することができます。
     登拝者の間では“心身を清める修験の道”として人気です。
  • 神馬像と御神杉
     境内の入り口に立つ「神馬像」は、戦国武将たちが戦勝祈願を行った名残。
     また、樹齢千年を超える「御神杉」は、まさに生命力の象徴です。
  • 猿投山の伝説
     「猿投山」という名には、“神が怒って猿を山に投げた”という伝説が残ります。
     山中には「猿投神社奥之院」や「猿投七滝」など、神話と自然が融合した聖地が点在しています。

■ ご利益

  • 厄除け・災難除け
  • 家内安全
  • 縁結び
  • 商売繁盛
  • 交通安全
  • 健康長寿

特に「災難除け」の神として信仰が厚く、地元では「厄年のときは猿投さんへ」と言われるほど。
また、猿投山に登ることで“身も心も浄化される”と伝えられています。


■ 年中行事

  • 例大祭(10月第2日曜)
     五穀豊穣と地域繁栄を祈る盛大な神事。
     神輿渡御や太鼓奉納などが行われ、地元住民が一体となって盛り上がります。
  • 初詣
     山里にありながら参拝者が多く、静かな中に神気を感じられる名所。
  • 猿投山登拝祭(春・秋)
     東の宮・西の宮を参拝する山岳信仰行事。
     登拝者は山頂から三河湾を望み、自然と神への感謝を捧げます。

■ アクセス情報

  • 所在地:愛知県豊田市猿投町大城5
  • アクセス
     ・名鉄三河線「平戸橋駅」より車で約10分
     ・東名高速道路「豊田東IC」から車で約15分
  • 駐車場:あり(無料)

■ まとめ

猿投神社は、神話・自然・信仰が一体となった“生きた古社”です。
山そのものを神とし、古代の人々が自然と共に生きてきた証が今も残っています。

猿投山の登拝とあわせて訪れれば、
神の息吹を感じるような静謐な時間があなたを包み込むでしょう。

「心の厄を祓い、未来への道をひらく」
そんな力を授けてくれる、愛知が誇る霊験あらたかな神社です。

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