◆はじめに
山形県と秋田県にまたがる秀峰・鳥海山(ちょうかいざん)。
その雄大な山容は「出羽富士(でわふじ)」とも称され、古来より人々の信仰を集めてきました。
その鳥海山をご神体として祀るのが、今回ご紹介する**大物忌神社(おおものいみじんじゃ)**です。
「延喜式神名帳」に名を連ねる名神大社であり、出羽国一之宮として格式の高い神社。
山岳信仰と海の神、農耕の神が融合した東北を代表する霊験あらたかな古社です。
◆神社の概要
- 名称:大物忌神社(おおものいみじんじゃ)
- 鎮座地:
 ・本社:山形県飽海郡遊佐町吹浦字布倉162(鳥海山頂・吹浦口)
 ・口ノ宮:山形県飽海郡遊佐町吹浦字布倉162(里宮)
- 社格:延喜式内社・名神大社・出羽国一之宮・国幣中社
- 御祭神:大物忌大神(おおものいみのおおかみ)=鳥海山の神
- 別称:鳥海山大物忌神社
◆御祭神・大物忌大神とは
主祭神の**大物忌大神(おおものいみのおおかみ)**は、古くから鳥海山に宿る霊峰の神とされ、
その正体は「天照大神の弟神・月読命(つくよみのみこと)」であるとも、
あるいは「国土守護の神」または「農業・海運を司る神」とも伝えられています。
「忌(いみ)」とは“神聖で犯してはならないもの”を意味し、
「大物忌」とは“偉大なる神聖な存在”を示す言葉。
その名の通り、**鳥海山そのものが神体山(しんたいさん)**であり、古代から山を畏敬し祀る自然崇拝の中心でした。
◆神社の起源と歴史
創建は不詳ですが、古事記や日本書紀の時代にまでさかのぼると伝えられています。
『続日本紀』によると、宝亀11年(780年)に鳥海山が大噴火し、
その鎮めとして朝廷が**「鳥海山大物忌神」を祀った**と記録されています。
平安時代には「延喜式神名帳」に**「出羽国飽海郡 大物忌神社 名神大」**と記され、
朝廷から特別に崇敬を受けた格式の高い神社でした。
中世以降は修験道の聖地として栄え、山伏たちが鳥海山登拝を行い、
江戸時代には酒田港を通じて多くの信者が「鳥海詣」を行ったと伝わります。
現在も、山頂の本社と里宮の吹浦口ノ宮・蕨岡口ノ宮の三社をあわせて「大物忌神社」と称します。
◆ご利益
大物忌大神は「山・海・農」を司る神として、多くのご利益を授けてくださいます。
- 🌾 五穀豊穣・農業守護
- 🌊 海上安全・航海守護
- 💰 商売繁盛・金運上昇
- 🗻 登山安全・旅の守護
- 🧘 心願成就・厄除開運
特に、山と海の両方を見守る神として、古来より漁業関係者や農民からの信仰が篤い神社です。
◆見どころ
◇鳥海山頂本社(ちょうかいさんちょうほんしゃ)
標高2,236メートルの鳥海山頂に鎮座する本社は、
「天上の宮」とも呼ばれ、晴天時には日本海や佐渡島まで望める絶景の地。
古代の人々はこの山頂を「神の座」と考え、山頂で祈ることが神に直接願う行為とされました。
夏季の登山期間(7月〜9月)には、多くの登拝者がここを目指します。
◇吹浦口ノ宮(ふくらくちのみや)
山麓の遊佐町吹浦にある「口ノ宮(里宮)」は、
山頂参拝が難しい人々のために建立された社。
立派な随神門と木造の社殿は重厚で、国の重要文化財にも指定されています。
また、境内には樹齢数百年の杉並木が続き、清らかな気に満ちた参道が魅力です。
◇蕨岡口ノ宮(わらびおかくちのみや)
こちらは山形県と秋田県の県境近くにあり、
鳥海山登拝のもう一つの入口として古くから栄えました。
山伏たちの修験道文化が今も色濃く残り、古式ゆかしい鳥海信仰の姿を見ることができます。
◆年中行事
- 春季例大祭(5月3日):五穀豊穣と安全を祈願。
- 鳥海登拝神事(7月上旬~8月下旬):修験者や登山者が山頂本社へ登拝。
- 秋季例大祭(9月10日):豊作への感謝を捧げる祭。
- 冬季祈祷(12月):一年の感謝と新年の無事を祈願。
◆アクセス情報
- 所在地(吹浦口ノ宮):山形県飽海郡遊佐町吹浦字布倉162
- アクセス:
 JR羽越本線「吹浦駅」から徒歩約15分
 日本海東北自動車道「遊佐比子IC」から車で約10分
- 駐車場:あり(無料)
◆まとめ
大物忌神社は、山形県を代表する出羽国一之宮であり、
鳥海山という壮大な自然そのものを神として祀る、東北屈指の聖地です。
山と海、そして人々の暮らしを見守り続けてきたその神格は、
現代においても「自然と共に生きる日本人の信仰心」を感じさせてくれます。
神々が宿る鳥海山の麓で、
あなたも静かに手を合わせ、悠久の自然の息吹とともに祈りを捧げてみてください。
 
  
  
  
  
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