島根県出雲市大社町の日御碕に鎮座する日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)。
出雲大社から西へ、海沿いに向かうと到達する「日本海に沈む夕日」が特に美しい岬にある神社である。
主祭神は、上の宮(神の宮)に素戔嗚尊、下の宮(日沈宮)に天照大神という、非常に特異な組み合わせで祀られている。
「出雲に天照大神が祀られている」という点だけでも、ここが特別な意味を持つことが理解できる神社だ。
■ 歴史背景
社伝によれば、天照大神を伊勢では「日が昇る東」を守護し、出雲の日御碕では「日が沈む西」を守護する形で祀ることで日本の太陽を守った、という古来の国土観があったという。
また『延喜式』にも名神大社として記され、出雲国の重要神社の一つであり、平安期から格式が非常に高かった。
現社殿は江戸初期、1644年に徳川家光の命により造営されたもの。朱漆の神社建築として高い評価を受け、国重要文化財となっている。
■ 見どころ
・朱塗りの華麗な社殿群(江戸初期造営)
・海と断崖、沈む夕日の景観
・日沈宮と神の宮が離れず同じ境内にある特異性
特に日沈宮は海に近く、夕日と海景色が神殿に重なる光景は古代祭祀との接続を直感できると感じる人も多い。
また近くにある日御碕灯台は、日本一高い石造灯台として知られ、この地全体が「海の守護の象徴」となっているエリアだ。
■ 不思議な話:太陽の東西守護の思想
日御碕神社に残る「日本の東と西で太陽を守る」という考え方は、古代国家思想の中でも独自性が強い。
伊勢の天照=日の出
出雲の日御碕=日の入り
この“対”が国家の安泰と循環を守るという信仰で、古代人が自然現象をどれだけ宗教的に大きく捉えていたかがよく分かる。
「天照大神が伊勢だけでなく、出雲にも祀られている」という事例自体、神祇史を辿る上で重要なポイントになり、日御碕はその象徴的存在といえる。
■ まとめ
・上の宮に素戔嗚尊、下の宮に天照大神
・日沈宮という独自の祭祀思想
・国重要文化財・徳川家光造営の社殿
・海と夕日の絶景が古代信仰を直感的に理解させる聖域
日御碕神社は、「太陽信仰と日本神話」を現実の地形と時間の流れの中で体感できる場所。
出雲大社と合わせて訪れることで、古代日本の神祇観がより立体的に理解できる神社である。
  
  
  
  
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