【神社めぐり】比叡山の守護神 ― 日吉大社(滋賀県大津市)

■ 比叡山の麓に鎮座する「山王信仰」の総本宮

滋賀県大津市坂本にある「日吉大社(ひよしたいしゃ)」は、全国におよそ3,800社ある「日吉・日枝・山王神社」の総本宮です。
その歴史は古く、延暦寺の鎮守社として、また平安京の表鬼門(北東)を守る厄除けの神として信仰されてきました。

古くから「山王さん」と呼ばれ親しまれ、神仏習合の象徴的存在として日本宗教史の中でも重要な位置を占めています。


■ 御祭神と信仰の由来

日吉大社の主祭神は以下の二柱です。

  • 大己貴神(おおなむちのかみ)
     西本宮に祀られる神で、国造りや縁結び、医療の神として知られます。
     出雲大社の大国主神と同一神とされています。
  • 大山咋神(おおやまくいのかみ)
     東本宮に祀られる神で、山と水を司る守護神。
     比叡山の地主神(じぬしのかみ)とされ、山王信仰の中心神格です。

この二柱を中心に、境内には大小約40社もの摂末社があり、それぞれが自然信仰や古代の山岳信仰と深く結びついています。


■ 山王信仰とは?

「山王信仰(さんのうしんこう)」とは、山の神を崇める古来の信仰と仏教が融合したものです。
比叡山延暦寺の守護神である日吉大社の神を「山王権現」として敬い、神と仏を同一視する「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」の思想に基づいて発展しました。

平安時代以降、天台宗とともに全国に広まり、日枝神社や日吉神社の名で各地に分祀されています。
とくに、江戸の守護として祀られた「日枝神社(東京都千代田区赤坂)」は、この山王信仰を受け継ぐ代表的な神社です。


■ 神猿(まさる)信仰 ― 厄除けと幸福の象徴

日吉大社の神使は「猿(さる)」です。
「魔が去る」「勝る」に通じることから、「まさるさん」と呼ばれ、厄除けや開運の象徴とされています。

境内のあちこちには、木彫りや石像の「神猿(まさる)」が祀られており、愛らしい姿で参拝者を出迎えます。
この神猿は夫婦円満や家庭安泰のご利益があるとされ、女性参拝者にも人気です。


■ 見どころ

  • 西本宮と東本宮の社殿
     ともに国宝に指定されており、桃山時代の華麗な建築美を今に伝えています。
     独特の「日吉造(ひよしづくり)」という建築様式が特徴です。
  • 山王鳥居
     神仏習合を象徴する独特の形をした鳥居で、上部に横木が二本あります。
     この形式の鳥居は全国でも非常に珍しいものです。
  • 紅葉の名所
     秋になると境内全体が紅葉に包まれ、「西の比叡、東の坂本」と称されるほどの美しさ。
     「もみじ祭」も開催され、多くの参拝客で賑わいます。

■ アクセス

  • 所在地:滋賀県大津市坂本5丁目1-1
  • 交通:京阪石山坂本線「坂本比叡山口駅」より徒歩約10分
         JR湖西線「比叡山坂本駅」より徒歩約20分
  • 駐車場:あり(有料)

■ まとめ

日吉大社は、比叡山延暦寺と並んで「神と仏が共に生きた」日本古来の信仰の姿を今に伝える貴重な聖地です。
自然と共に生きる精神、厄を祓い、福を呼び込む力を持つ「山王さん」。
境内を歩けば、どこか懐かしく、力強い自然信仰の息吹を感じることができるでしょう。

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