■ 火防の神を祀る全国総本宮
静岡県浜松市天竜区、標高866メートルの霊峰「秋葉山(あきはさん)」の山頂に鎮座するのが、
**秋葉山本宮秋葉神社(あきはさんほんぐうあきばじんじゃ)**です。
全国に約4,500社ある「秋葉神社」「秋葉社」「火防神社」の総本宮で、
火災から守ってくれる「火防の神」として、江戸時代から庶民に広く信仰されてきました。
秋葉山は古来より「神の宿る山」として崇められ、修験者や山伏たちが火を扱う修行を行った霊場でもあります。
■ 御祭神 ― 火之迦具土大神(ひのかぐつちのおおかみ)
主祭神は 火之迦具土大神(ひのかぐつちのおおかみ)。
『古事記』『日本書紀』に登場する「火の神」であり、伊邪那美命を焼き殺したほどの強大な火力を持つ神です。
その荒々しさから恐れられる一方、火は文明をもたらす神聖な存在でもあります。
秋葉山本宮秋葉神社では、この神の力を「災いを防ぎ、恵みをもたらす火」として祀り上げています。
■ 神仏習合と秋葉信仰の広がり
秋葉山は奈良時代より修験の地として知られ、
平安時代には「秋葉三尺坊大権現(しゅじゃくぼうだいごんげん)」という仏教的な姿で信仰されました。
三尺坊は、白狐に乗り、手に火を灯して空を飛ぶという伝説の天狗。
火伏せ・防火の神として庶民に広まり、江戸時代には江戸の町火消しや商家からも絶大な信仰を集めました。
とくに江戸の「秋葉講(あきはこう)」は、秋葉山に参詣して火伏祈願の護符を受け、
それを各家庭や商店に配るという形で全国に広がっていきました。
■ 上社と下社の構成
秋葉山本宮秋葉神社は、山頂の「上社」と山麓の「下社」から成り立っています。
● 上社(山頂本宮)
標高866mの秋葉山山頂にあり、駿河湾や遠州灘を一望できる絶景の地。
社殿は黄金色に輝き、「金色の社殿」としても知られています。
ここに登拝すれば、火防の御神徳とともに「心の浄化」「挑戦の勇気」を授かるといわれます。
● 下社(山麓)
登山口付近に位置し、上社への参拝を前に心身を清める「禊の社」。
こちらでも御朱印をいただくことができ、下社のみの参拝でもご利益があるとされています。
■ 年中行事と火祭り
毎年12月15・16日に行われる「火まつり(火防祭)」は、秋葉山最大の神事です。
古式ゆかしい行列とともに、夜の闇を照らす松明が山を彩り、火伏の祈りが奉納されます。
神職が松明を持って舞う「火の舞」は圧巻で、
“炎の中に神を見る”という秋葉信仰の象徴的な儀式でもあります。
■ ご利益
- 火防・防火
- 厄除開運
- 商売繁盛
- 家内安全
- 災難除け
火を扱う職業(料理人・大工・工場従事者など)や、
家庭の安全を願う参拝者からも絶大な信仰を集めています。
■ 見どころ
- 黄金色の本殿:
陽光を浴びて輝く社殿はまさに「神域」。
遠くからでも光を放つ姿は、まるで火の神そのもののようです。 - 遥拝所(上社展望台):
浜松市街地や太平洋まで一望できる絶景スポット。
天気が良ければ富士山も望むことができます。 - 秋葉山参道:
樹齢数百年の杉並木が続く登山道は、修験の霊気に満ちています。
車でも上社まで行けますが、徒歩で登ると特別な清らかさを感じられるでしょう。
■ アクセス
- 所在地:静岡県浜松市天竜区春野町領家841
- 交通:天竜浜名湖鉄道「二俣本町駅」から車で約40分
東名高速「浜松IC」から約1時間 - 駐車場:あり(上社・下社とも無料)
■ まとめ
秋葉山本宮秋葉神社は、火の神を祀る日本随一の霊場であり、
「火を制する者は災いを制す」という信仰の象徴でもあります。
山頂からの眺望、荘厳な黄金の社殿、そして古来より受け継がれてきた火祭り。
そのすべてが、「火」と「祈り」の融合した神聖な世界を体験させてくれます。
火災除けや家庭安全を祈る方はもちろん、
強い心や新たな挑戦への勇気を求める方にもおすすめの神社です。
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