【神社めぐり】貫前神社(ぬきさきじんじゃ)|坂下の大社として知られる上野国一之宮


⛩ 貫前神社とは

群馬県富岡市一ノ宮に鎮座する「貫前神社(ぬきさきじんじゃ)」は、上野国(こうずけのくに)の一之宮として古くから崇敬を集めてきた格式高い神社です。正式名称は「一之宮貫前神社(いちのみやぬきさきじんじゃ)」といい、延喜式にも名を連ねる式内社
社格は旧国幣中社に列せられ、現在も関東屈指の古社として知られています。

最大の特徴は、全国でも珍しい「下り宮(くだりみや)」の形をしていること。鳥居をくぐると坂を下って本殿へと向かう構造は、訪れる人々に深い印象を与えます。


🙏 御祭神

主祭神は以下の二柱です。

  • 経津主神(ふつぬしのかみ)
  • 姫大神(ひめのおおかみ)

経津主神は武神として有名で、千葉県の香取神宮の御祭神と同一神です。
日本神話では、天照大神の命を受けて建御雷神(たけみかづちのかみ)とともに地上を平定した、いわば「武の神」。
一方の姫大神はその妃神とも伝えられ、和合と調和を司る女神です。

そのため、貫前神社は「武運長久・勝負運」と「縁結び・家庭円満」の両方のご利益がある神社として信仰されています。


🏛 由緒と歴史

創建の年代は明らかではありませんが、『続日本紀』や『延喜式神名帳』などの古記録に名が見えるほど古い歴史を持ちます。

伝承によると、もともとこの地の高台に鎮座していた神が、ある日「下へ行きたい」と神託を下し、現在の場所に遷座したと伝えられています。
このため、珍しい「坂を下る宮(下り宮)」の構造となりました。

中世以降は源氏や北条氏などの武家から厚く信仰され、江戸時代には徳川家康が関東支配を進める中で社殿を再建。現在の壮麗な社殿群は、家康の寄進によるものです。


🏯 建築と境内の見どころ

■ 下り宮(くだりみや)

貫前神社最大の特徴。鳥居をくぐると長い石段を下り、その先に楼門と本殿が現れます。
一般的には「神域=高い場所」というイメージがありますが、ここでは下るほど神聖になるという珍しい構造です。
この造りは全国でも非常に珍しく、「出雲大社」と並ぶ“神域への下降”の聖地とされています。

■ 楼門(ろうもん)

徳川家康の寄進によって建立された重要文化財。朱塗りの華やかな楼門は荘厳で、力強い彫刻や装飾が見事です。

■ 本殿

本殿・幣殿・拝殿が一体化した「権現造(ごんげんづくり)」の形式。
桃山時代の華やかな意匠が色濃く残っており、群馬県指定重要文化財となっています。

■ 神橋と参道

鬱蒼とした木立の中に流れる神橋を渡ると、静けさと清涼感が一気に包み込むように感じられます。
四季折々の風景が美しく、特に秋の紅葉シーズンは見応えがあります。


🌾 ご利益

  • 武運長久・勝負運
  • 厄除開運
  • 縁結び・夫婦円満
  • 交通安全・商売繁盛

古来より武将たちが戦勝祈願を行ったことから、今も受験やスポーツの勝利祈願で訪れる人も多いです。


🎎 年間祭事

  • 元旦祭(1月1日):新年の無事と繁栄を祈る祭り。
  • 春季例大祭(4月):五穀豊穣を祈る神事。
  • 夏越の大祓(6月30日):茅の輪くぐりで心身を清める行事。
  • 秋季例大祭(10月):神輿の渡御や伝統芸能が奉納される盛大な祭り。

🚗 アクセス情報

  • 所在地:群馬県富岡市一ノ宮1535
  • アクセス:上信電鉄「上州一ノ宮駅」から徒歩約5分
  • 駐車場:あり(無料)

🪶 まとめ

貫前神社は、上野国の歴史と信仰を今に伝える古社でありながら、「坂を下る神社」という独特の構造を持つ全国でも稀な存在です。
その不思議な造形には、「人が頭を垂れて神のもとへ進む」——謙虚さの象徴が込められているとも言われます。

訪れれば、静謐な森の中で、時代を超えて受け継がれる“祈り”の形を感じることができるでしょう。

🌿 群馬観光や富岡製糸場見学とあわせて、「坂下の大社」貫前神社へ、ぜひ足を運んでみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました