【神社めぐり】静岡県・三嶋大社

― 伊豆国一宮、古代より人と海を守る神 ―

◆ 伊豆国一宮・三嶋大社とは

静岡県三島市に鎮座する「三嶋大社(みしまたいしゃ)」は、古代から伊豆国の総社・一宮として崇敬を集めてきた由緒正しき神社です。
東海道を往来する人々の信仰を集め、源頼朝ゆかりの神社としても知られています。

「三嶋」の名は、伊豆諸島の神々を総括する“御島(みしま)の神”に由来し、古くから「海と大地を司る神」として崇められてきました。
今もなお、東海地方を代表する古社として、地元のみならず全国から多くの参拝者が訪れます。


◆ 御祭神 ― 大山祇命(おおやまつみのみこと)・積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)

三嶋大社の御祭神は二柱。

  • 大山祇命(おおやまつみのみこと):山や大地の神で、自然の恵みを司る。
  • 積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ):海と商いの神、恵比須様としても知られる。

この二柱を総称して「三嶋大明神(みしまだいみょうじん)」と称し、
“山の恵み(大山祇命)”と“海の恵み(事代主神)”を同時に祀る神社として、
漁業・農業・商業、あらゆる生活の繁栄を見守る神として信仰されています。


◆ 古代の起源と三嶋信仰

社伝によると、創建の年代は不詳。
しかし『延喜式神名帳』(927年)にもその名が記されており、少なくとも平安時代以前から存在していたことがわかっています。

古代の伊豆地方では、海を越えて伊豆諸島や房総半島と行き来する海人(あま)の信仰が盛んで、
彼らが崇めた“海の神”こそが三嶋の神であると考えられています。

“御島(みしま)”とは、本来「海に浮かぶ神聖な島」の意味。
つまり、三嶋大社は海上交通の守護神であり、航海安全や豊漁祈願の中心的存在でした。


◆ 源頼朝と三嶋大社

三嶋大社の名を歴史に刻んだのは、鎌倉幕府を開いた源頼朝です。

伊豆に流されていた頼朝は、平家打倒を決意する際、三嶋大社に戦勝を祈願しました。
そして治承4年(1180年)8月、頼朝は祈願の後に挙兵し、見事に勝利を収めます。
この功績に感謝して、頼朝は三嶋大社に多くの神領を寄進し、社殿の再建を行いました。

その後も北条氏・足利氏・徳川家など時の権力者たちが社殿を修復・造営し、
三嶋大社は「武運長久」「国家安泰」を祈る神として崇敬を集め続けました。


◆ 名物「三嶋大祭り」と「流鏑馬神事」

毎年8月15日〜17日にかけて行われる「三嶋大祭り」は、源頼朝の旗挙げを記念する壮大な例祭です。
勇壮な「流鏑馬神事(やぶさめしんじ)」が奉納され、鎌倉時代から続く伝統を今に伝えています。

神馬が駆け抜ける参道を矢が飛び交う姿は迫力満点。
その音とともに、三嶋の町全体がまるで中世にタイムスリップしたかのような雰囲気に包まれます。

また、祭りの期間中は、頼朝公行列や神輿渡御、太鼓台の競演なども行われ、
地元住民だけでなく多くの観光客で賑わいます。


◆ 境内の見どころ

三嶋大社の境内は、静寂と荘厳が調和した神域です。

  • 総門(重要文化財):江戸時代後期に建立。神域への入口を守る堂々たる門。
  • 舞殿(重要文化財):頼朝の寄進によると伝えられる優美な建物。
  • 本殿・幣殿・拝殿(重要文化財):徳川家光の寄進で再建された権現造の社殿。極彩色の彫刻が美しい。
  • 神池と神鹿園:神聖な池には白い鯉が泳ぎ、境内には神鹿が放し飼いにされている。

春は桜、秋は紅葉、冬は雪化粧と、四季折々の景色が参拝者を魅了します。


◆ ご利益・信仰

三嶋大社のご神徳は、

  • 開運招福
  • 商売繁盛
  • 交通安全
  • 海上安全
  • 縁結び
  • 勝運成就

と多岐にわたります。
特に、源頼朝ゆかりから「必勝祈願」の神として信仰が厚く、
スポーツ選手や受験生が参拝に訪れる姿も多く見られます。

また、縁結びの神・事代主神を祀ることから、恋愛成就の祈願も人気です。


◆ アクセス

  • 所在地:静岡県三島市大宮町2丁目1-5
  • アクセス:JR「三島駅」南口より徒歩約15分
  • 駐車場:あり(有料)

◆ まとめ

古代の海人信仰からはじまり、源頼朝の祈願所として栄えた三嶋大社。
その歴史は日本の国づくりとともに歩んできたといっても過言ではありません。

三嶋の神は今もなお、海と山、人と人を結ぶ「導きの神」として、多くの人々の願いを受け止め続けています。
旅の途中で立ち寄れば、静寂の中に確かに感じる“時の息吹”があなたを包むことでしょう。

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