【神社めぐり】香川県・金刀比羅宮を訪ねて

今回は香川県仲多度郡琴平町に鎮座する「金刀比羅宮(ことひらぐう)」について紹介します。
「こんぴらさん」として全国的に知られ、海の安全を守る神として特に船乗りたちから厚い信仰を受けてきた神社です。


主祭神

大物主神
崇徳天皇


金刀比羅宮の歴史的背景

金刀比羅宮の起源は古く、古代において讃岐国の象頭山は山岳信仰の対象であり、そこから金刀比羅信仰が発展していったとされています。古来「金毘羅大権現」の名で広く信仰を集め、中世から近世にかけては海上交通の守護神として日本中の海運関係者・商人・漁民がこぞって参拝しました。

江戸時代にはとくに檀家制度の制約を受けない「全国参詣」が許されていたことで、伊勢と並んで「全国から参拝が許された例外」的な場所として有名となり、四国の山中にありながら全国的な信仰圏を築きました。


階段1368段を登った先にある世界

金刀比羅宮と言えば「長い石段」が象徴的です。
表参道の石段は785段、本宮までは1368段。上り切った先の本宮から見える讃岐平野の広がりは、まさに「ご褒美」と呼ぶべき景観です。

そして本宮拝殿横から更に奥へと道は続き、さらに奥社まで登れば計約2000段を超えます。
苦労して参ることで功徳に結びつく、そんな古代以来の信仰の構造を体で実感できる神社です。


見どころ

・大参道の風格ある石段
・本宮からの讃岐平野の眺望
・社宝館に展示される奉納品や絵馬
・海運に関する奉納文化が圧倒的に多いこと

特に江戸~昭和初期にかけて、船橋・舵・帆など“現物奉納”が多数行われており、海と生活か密接だった時代のリアリティをそのまま感じることができます。


不思議な話・社伝

金刀比羅信仰は明らかに「海の神である大物主」と、「怨霊信仰の代表ともいえる崇徳天皇」の二重構造です。
主祭神に崇徳天皇を祀るのは、実は瀬戸内信仰との強いつながりがあるとされます。
瀬戸内は海上交通の要であり、祟り・災厄を鎮める意味でも崇徳天皇の信仰が深く根づき、海の神と怨霊の神格が融合していったと考えられています。

「こんぴらさんは海の神、なのに山にある」という矛盾にも見える構造が逆に信仰を強め、日本特有の宗教的重層性がよく見える典型例といえます。


まとめ

金刀比羅宮は、ただの観光名所ではありません。
古代の山岳信仰、海上安全の祈り、崇徳天皇信仰という三層が重なることで形成された、一種独特の「日本宗教史の交差点」です。

階段を登りながら、古代から続く人々の祈りと、海に生きた日本人の歴史を感じて歩くことができる場所。
香川県を訪れた際は、じっくり時間をかけて参拝してみてください。

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