【神社めぐり】駒形神社~「奥羽の駒形様」と呼ばれた霊峰信仰の中(岩手県)

今回紹介するのは岩手県奥州市に鎮座する駒形神社。
馬に関する信仰で知られ、そして「奥羽の駒形様」と称され古代から信仰を集めてきた神社である。

主祭神は
・駒形大神(馬の守護の神とされる総称的神格)
これに加えて、八幡神・大国主命・天照大神・熊野三柱神などが配祀されている。

特に「駒形大神」という神名が象徴するように、この地は古来より“馬”と深い結びつきを持つ。

■ 霊山「駒ヶ岳」を中心とした山岳信仰

駒形神社の信仰の原点は、奥羽山脈の名峰「駒ヶ岳」。
古代、この山は「馬の形をした神が住む山」と考えられ、そこから駒形大神への信仰が生まれたとされる。

古代東北の山岳信仰・修験の要衝であり、国史にみえる記述では、平安期の『延喜式神名帳』に名神大社として名前が残る格式の高い神社である。

駒形神社は複数の峰・山頂を神座とする信仰形態をとり、山頂を“奥宮”とするスタイルは今も続く。
実際の奥宮は標高1,130mの駒ヶ岳山頂に鎮座している。

■ 平泉文化との関連

平泉が栄華を誇った奥州藤原氏の時代、この駒形信仰はより一層尊崇を集めた。
黄金文化・中央との交流の中で、馬を中心とした軍事・交通の要としての信仰が高まり、駒形神社の社勢も非常に大きくなったといわれる。

■ 現在の本社・本殿は江戸期の姿を受け継ぐ

現在、本社の社殿は江戸中期に再興されたもので、神域として非常に落ち着いた雰囲気を持つ。
周囲は北上川の流域の平野と山岳の境界付近にあり、古代から「自然信仰の地」として成立した理由がよく体感できる。

■ 不思議な話:神馬が導くという伝承

駒形神社には「馬が神に導かれる」という話が多く残る。
迷った馬が自然と駒形神社に向かって歩き出した、あるいは行方不明になった馬が神社の近くで見つかったといった伝承がいくつか伝わる。

これらは「駒形大神=馬を守る神」というイメージを強く裏付けるものとして、今も地元では語り継がれている。

また、社号の「駒」を冠する神社は全国に数多くあるが、その総本宮として扱われている点も特筆すべきポイントである。

■ まとめ

・「馬」の信仰を中心とする古代山岳信仰の中心
・延喜式名神大社に列せられる格式の高い神社
・奥宮は駒ヶ岳山頂に鎮座
・馬にまつわる不思議な伝承が多い

岩手県という土地柄、古い歴史文化や山岳信仰の系譜が色濃く残る神社。
駒ヶ岳の自然と共に、神域の感覚を静かに味わえる場所だと思う。

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