全国に数ある神社の中でも、「こんぴらさん」の名で広く親しまれているのが**金刀比羅宮(ことひらぐう)**です。
その総本宮は香川県琴平町に鎮座し、古くから海上安全・五穀豊穣・商売繁盛の神として、全国から厚い信仰を集めてきました。
今回はこの「金刀比羅宮」系の神々について、主祭神や全国の有名社、特徴、そして神仏習合の影響まで詳しくご紹介します。
🏯主祭神
大物主神(おおものぬしのかみ)
(別名:金刀比羅大神/事代主命と同一視されることも)
この神は、奈良・三輪山の大神神社の御祭神と同神とされる、
海陸の交通・商業・医薬・農耕を司る神です。
また、金刀比羅宮では次の神々も配祀されています。
- 崇徳天皇(すとくてんのう)(鎮魂と和合の神)
- 大物主神の荒魂(行動力・開運・航海守護)
これにより、「国土の平安と人々の幸せ」を守る総合的な神格を持つ神社系統となっています。
⛩全国に広がる「金刀比羅宮」系の有名神社
金刀比羅信仰は江戸時代に全国へと爆発的に広まりました。
「一生に一度はこんぴら参り」と言われたほどのブームが起こり、全国の村々に「金毘羅神社」「琴平神社」「金刀比羅宮」の名を冠した分霊社が建てられました。
ここではその代表的な神社をご紹介します。
🏮1. 金刀比羅宮(香川県仲多度郡琴平町)
金刀比羅信仰の総本宮。
讃岐の象頭山の中腹に鎮座し、1368段の石段を登って参拝する“こんぴら参り”が有名です。
古くは「金毘羅大権現」として仏教色を帯び、海上守護の神として全国の船乗りから厚い信仰を集めました。
🏮2. 琴平神社(北海道小樽市)
北海道開拓の時代に、海上安全と商売繁盛を願って建立された金刀比羅宮の分社。
北前船の航路安全を祈願する拠点として信仰を集めました。
🏮3. 琴平神社(東京都港区芝)
江戸時代、讃岐の金毘羅大権現を勧請した東京の代表的な「こんぴらさん」。
多くの江戸庶民が“お伊勢参り”“こんぴら参り”を夢見て訪れた地です。
🏮4. 金刀比羅神社(福島県いわき市)
東北地方を代表する「金毘羅信仰」の中心。
航海安全だけでなく、山の恵みや鉱業安全を祈る神としても信仰を集めています。
🏮5. 琴平神社(長崎県長崎市)
江戸時代、長崎の港町に航海安全の神として祀られた「金毘羅大権現」。
海外との交易を行っていた商人・船主たちがこぞって参拝しました。
🌊金刀比羅宮系の特徴
- 海上安全・商売繁盛の守護神
—「海の神」「航海の守り神」として全国の船乗り・漁師・商人から信仰。
—近年では交通安全・旅行安全・仕事運にもご利益があるとされます。 - 江戸時代の庶民信仰の象徴
—「お伊勢参り」と並んで“こんぴら参り”が一大ブーム。
—代参(他人が代理でお参りする制度)や講(信者の集まり)を通じて全国に広まりました。 - 山岳信仰と海洋信仰の融合
—象頭山という霊山信仰と、海上守護という海の信仰が一体化。
—山と海の神を併せ持つ稀有な存在です。
🕉神仏習合の影響
金刀比羅信仰は、古代インドの金毘羅(クンビーラ)神に由来します。
仏教では、龍王八部衆の一尊「金毘羅大将」として登場し、
海を守護する神・航海の守護神として崇められました。
日本ではこの金毘羅大将が、
**大物主神(国津神)**と融合して「金毘羅大権現」として祀られ、
中世以降に神仏習合の象徴的存在となります。
- 神道では:大物主神(海・商業の神)
- 仏教では:金毘羅大将(龍神・海の守護者)
この両者が重なり、
「海を渡る人々を守り、人生航路を導く神」として信仰されるようになりました。
🪷まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 総本宮 | 香川県琴平町・金刀比羅宮 |
| 主祭神 | 大物主神(=金刀比羅大神) |
| 配祀神 | 崇徳天皇など |
| ご利益 | 海上安全・商売繁盛・交通安全・夢成就 |
| 神仏習合 | 金毘羅大将(仏教)との習合により「金毘羅大権現」と呼ばれる |
| 特徴 | 山岳信仰・海洋信仰・庶民信仰が融合した全国最大級の信仰体系 |
「人生という航海を安全に、そして豊かに導いてくれる神」。
それが金刀比羅宮系の神々の本質です。
現代においても、旅や挑戦、事業の成功を願う多くの人々が“こんぴらさん”を訪れています。

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