【神社系統】淡路神社系 〜国生みの神を祀る「淡路信仰」の源流〜

日本神話のはじまり――それは、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)が「天の沼矛(あめのぬぼこ)」をもって大地をかき混ぜ、生まれた最初の島が淡路島でした。
この“国生み神話”の舞台に鎮座するのが、**淡路神社(あわじじんじゃ)**をはじめとする「淡路系神社」です。

今回は、この「淡路神社」系統の神々・歴史・全国の著名社、そして神仏習合の影響まで、神話の原点から紐解いていきます。


🌅主祭神と由緒

淡路神社の主祭神は、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)
一部の淡路系神社では、対となる**伊弉冉尊(いざなみのみこと)**も合わせて祀られます。

🔸伊弉諾尊(いざなぎのみこと)
日本の国土を創り、天照大神・月読命・須佐之男命を生んだ創造神。
「国産み・神産み」の神として、国家安泰・家内安全・縁結びの御神徳が厚い神です。

この伊弉諾尊が晩年を過ごしたと伝えられるのが淡路島であり、そこに創建されたのが淡路神社系の起源といわれます。


🏝総本社:伊弉諾神宮(兵庫県淡路市)

淡路系神社の中心的存在が、**兵庫県淡路市多賀に鎮座する伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)**です。

『日本書紀』に「伊弉諾尊は淡路の多賀に幽(かく)れたまう」と記されており、ここが日本最古の神社とも称される由緒深い聖地。
淡路神社はこの伊弉諾神宮の御分霊を勧請した神社であり、「国生み信仰」の象徴的な存在です。


🗾全国の主な淡路系神社

淡路神社の御祭神は「国産み・創造」の神という性格から、全国各地に勧請されました。
以下に、淡路信仰にゆかりの深い主要神社を紹介します。

🌊淡路神社(兵庫県洲本市)

淡路島内における代表的分社。
海の近くに鎮座し、国生みの神々が海上より降臨した地とされる。
地元では「淡路さん」と親しまれ、五穀豊穣・漁業安全の守護神として信仰されています。

🪶淡路神社(徳島県鳴門市)

淡路島に隣接する徳島県にも勧請された淡路社。
古くから阿波国と淡路島は文化・信仰の交流が深く、阿波の「淡路社」は国境守護の神として重視されました。

🏔淡路神社(滋賀県大津市)

近江国の淡路社。
伊弉諾尊を祀り、延喜式神名帳にも名を連ねる古社。
淡路島の神を祀ることで「国を安んずる」意が込められたとされます。

🏯淡路神社(愛知県名古屋市港区)

東海地方では、海上守護と縁結びの神として信仰される淡路社が存在。
淡路の神が伊勢・熱田と結びつくことで、古代の海上交通を象徴する神々として祀られました。


🌸淡路神社系の特徴

🏝1. 「国生み」と「再生」の信仰

伊弉諾・伊弉冉の神話は、「国生み」と「死と再生」を象徴します。
そのため、淡路系神社では「誕生」「縁結び」「厄除け」「生命力の再生」などの祈願が多く見られます。

🌀2. 海との深い関係

淡路島は古来より海人の信仰が篤く、海神との習合も進みました。
漁業・航海・造船・潮流鎮めの神として祀られ、海上交通の守護神としての性格をも併せ持ちます。

🌿3. 太陽神・月神との繋がり

伊弉諾尊は天照大神・月読命の父神であり、「陽と陰」「光と闇」を生み出した存在。
そのため、淡路系神社では太陽・月を象徴する装飾や祭祀形態が見られることがあります。


🪷神仏習合と淡路信仰

中世以降、淡路系の神々は仏教と融合し、「伊弉諾大明神」「多賀大権現」として信仰されました。
とくに伊弉諾神宮では神仏習合時代に多賀大権現と称され、近江の多賀大社(同じく伊弉諾尊を祀る)と習合関係が強まりました。

🔯本地仏との対応

淡路系の神々に対応する本地仏(ほんじぶつ)は以下のように伝えられます。

神名本地仏象徴・御利益
伊弉諾尊大日如来創造・宇宙の根源・父性
伊弉冉尊観音菩薩慈悲・母性・生命の循環

この神仏習合によって、淡路信仰は「天地生成の神」から「宇宙の根源を象徴する存在」へと深化しました。


🌅まとめ 〜国生みの神が今に伝えるもの〜

淡路神社系は、「日本のはじまり」を今に伝える神々の系統です。
その信仰は単に淡路島の地に留まらず、「命の再生」「天地の調和」「家族の絆」といった普遍的な祈りを象徴しています。

海と陸の境に立ち、朝日に輝く社殿を前にすれば――
この国のはじまりを創った神々の息吹を、今も感じることができるでしょう。


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