日本神話に登場する中でも、ひときわドラマチックな人生を歩んだ神。
それが「建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)」です。
荒ぶる嵐の神でありながら、剣でヤマタノオロチを退治し、
のちには出雲の地で家族を得て、農耕神・英雄神としても信仰された存在です。
今回は、そんな激しくも魅力的な神・建速須佐之男命を紹介します。
◆ 基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
神名 | 建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと) |
別名 | 須佐之男命(すさのおのみこと)、素戔嗚尊(すさのおのみこと) |
神格 | 荒神(嵐・海)、英雄神、農耕神、疫病除けの神 |
ご利益 | 厄除け、勝運、五穀豊穣、商売繁盛、縁結び、病気平癒 |
主な信仰地 | 出雲大社、須佐神社、氷川神社、津島神社、八坂神社など |
◆ 神話での活躍
◉ 天界を追放される
須佐之男命は、イザナギ命が黄泉の国から戻って禊を行ったときに、
右目から天照大神(姉)、左目から月読命(兄)、鼻から須佐之男命(弟)が生まれました。
しかし彼は、母のいる根の国(死の国)に行きたいと泣き叫び、
天照大神の怒りを買い、高天原を追放されます。
◉ ヤマタノオロチ退治
地上(出雲の国)に降りた須佐之男命は、
クシナダヒメという少女を助けるため、**八つの頭と八つの尾を持つ大蛇「ヤマタノオロチ」**を退治します。
その尾から出てきた剣が、のちの草薙剣(くさなぎのつるぎ)。
この剣は天照大神に献上され、三種の神器のひとつとなりました。
◉ 出雲の開拓神に
須佐之男命はその後、出雲の地でクシナダヒメと結婚し、
家を建てて「足名椎命(あしなづちのみこと)・手名椎命(てなづちのみこと)」とともに国を開きます。
彼は、荒神から守護神へと変化していきます。
◆ 名前の意味と神格
名前 | 意味 |
---|---|
建速(たけはや) | 勇猛で素早い、激しい |
須佐(すさ) | 荒ぶる、進む、浄める(諸説あり) |
男命(おのみこと) | 男性神の尊称 |
つまり、**「勇ましくて勢いのある、荒ぶる男性神」**という意味を持っています。
◆ ご利益と信仰
建速須佐之男命は、さまざまな性質を持つため、
全国の神社で幅広いご利益を祈願されてきました。
ご利益 | 解説 |
---|---|
厄除け・疫病除け | 荒ぶる神として悪を祓う力を持つ |
縁結び | クシナダヒメとの神婚譚から、夫婦和合の象徴 |
五穀豊穣 | 出雲で農耕の神となったことから |
商売繁盛 | 氷川神社・津島神社などでの信仰に由来 |
勝運上昇 | ヤマタノオロチ退治の武勇にちなむ |
◆ 須佐之男命が祀られている神社
神社名 | 所在地 | 特徴 |
---|---|---|
出雲大社 | 島根県出雲市 | 子孫・大国主神を祀る、神話の舞台 |
須佐神社 | 島根県出雲市 | 須佐之男命の御魂を祀ると伝わる |
津島神社 | 愛知県津島市 | 疫病除けの神として全国に広まる |
八坂神社 | 京都府京都市 | 祇園信仰の中心。疫病退散の御神徳 |
氷川神社 | 埼玉県さいたま市 | 武蔵国の総鎮守として有名 |
◆ まとめ|荒ぶる神から慈しみの神へ
建速須佐之男命は、荒々しく暴れる神でありながら、
人々を守り、家族を築き、国を開いた神でもあります。
特性 | 詳細 |
---|---|
荒神 | 嵐、災い、浄化の象徴 |
英雄神 | 悪を討ち、命を守る力 |
父神 | 出雲系神話の中心となる存在 |
守護神 | 疫病や災害から人々を守る |
その多面性こそが、今も多くの人々に信仰される理由でしょう。
あなたが何かに挑戦したいとき、
逆境の中で立ち向かうとき、
ぜひ建速須佐之男命の名を思い出してみてください。
「荒ぶる力」は、正しく使えば、誰かを守る力になる――
そんな神の姿が、きっと力を与えてくれるはずです。
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