【仏様図鑑】大日如来 ~宇宙そのものを体現する密教の中心仏~

私たちが目にする仏様の中でも、特に「神秘的で格が高い」とされる存在がいます。
それが、密教における最高位の仏、**大日如来(だいにちにょらい)**です。

光明そのものであり、森羅万象の根源とされる仏――。
今回は、知っているようで知らない「大日如来」の姿に迫ります。


■ 大日如来とは?

● 大日如来の名前の意味

大日」とは「大いなる太陽」の意。
サンスクリット語では「マハー・ヴァイローチャナ(Mahāvairocana)」と呼ばれ、
意味は「大いなる光明」。

つまり、**大日如来とは“宇宙を照らす無限の光の仏”**です。
密教では、この仏が全ての仏・菩薩の根源であり、「宇宙の真理を人格化した存在」とされます。


■ 大日如来の位置づけと特徴

項目内容
宗派真言宗・天台宗(密教系)
仏格如来の中の最高位、仏の王
ご利益宇宙的な加護、真理の悟得、守護、知恵、厄除け
姿勢宝冠をかぶり、装身具を身につけた如来形(例外的)
特徴金剛界と胎蔵界、2種類の姿(曼荼羅で表現)

■ 大日如来の2つの姿:金剛界・胎蔵界

大日如来は、仏像や曼荼羅において2つの異なる姿で表されます。

種別名称印相意味
胎蔵界大日如来慈悲の大日法界定印(両手を膝上で組む)宇宙の母なる慈しみ。内なる悟り
金剛界大日如来智慧の大日智拳印(左手で人差し指を立て、右手で包む)宇宙の理法・智慧の力の象徴

この2つの姿は密教における両界曼荼羅に対応し、仏の教えの「静と動」「内と外」「慈悲と智慧」を示しています。


■ 密教における大日如来の信仰

真言宗では、大日如来を「本尊中の本尊」として中心に据え、
弘法大師空海は、大日如来の教えを説くために密教(真言密教)を日本に伝えました。

● 真言宗でのご真言

おん あびらうんけん ばざらだどばん
(大日如来の真言:宇宙の本質と一体化するためのマントラ)

この真言を唱えることで、大日如来と心を通わせ、宇宙の真理に近づけると信じられています。


■ 大日如来の仏像の特徴

阿弥陀如来などと違い、大日如来は如来でありながらも**装飾のある姿(菩薩のような姿)**で表現されます。

項目特徴
表情非常に静かで、瞑想的な顔立ち
頭部宝冠をいただき、菩薩のような装飾がある
身体装身具(腕輪・首飾りなど)をつける
印相法界定印(胎蔵界)/智拳印(金剛界)
姿勢結跏趺坐(けっかふざ。両足を組んで座る)

これは「悟りの智慧と慈悲が備わった仏は、すべての姿を受け入れる」ことを象徴しています。


■ 大日如来を本尊とする有名寺院

寺院名所在地特徴
東寺(教王護国寺)京都府真言宗の総本山。立体曼荼羅に大日如来像あり
高野山 金剛峯寺和歌山県空海(弘法大師)開山。奥之院に信仰の中心
醍醐寺京都府金剛界・胎蔵界曼荼羅が整う密教寺院
室生寺奈良県美しい仏像の宝庫。金堂に大日如来像
智積院京都府智山派総本山。曼荼羅信仰と学問の中心

■ 豆知識:曼荼羅と大日如来

曼荼羅(まんだら)とは、仏の世界を図で表したもの。
密教では、曼荼羅の中心に大日如来が描かれ、その周囲に多くの仏・菩薩が取り巻いています。

  • 金剛界曼荼羅:智慧の世界。知恵と理法による救済
  • 胎蔵界曼荼羅:慈悲の世界。慈しみと命の根源的な救済

この曼荼羅を前にして行う修法(密教の儀式)を通して、宇宙の本質に触れるのが密教の醍醐味です。


■ 大日如来と現代への影響

  • 仏像彫刻の最高傑作に多く登場(運慶作など)
  • 真言宗では今も修法や加持祈祷の中心に
  • 「すべての仏の源」=全宗派を超えた象徴的存在
  • 瞑想やヨガ、スピリチュアルの分野でも「宇宙意識」として注目されている

■ まとめ|すべてを包む大いなる仏

大日如来は、単なる「一仏」ではありません。
宇宙の真理そのものであり、あらゆる仏や教えの出発点とされる存在です。

静かに座して、光を放ち、言葉では語れぬ深奥の知恵を示す――
その姿は、私たちの内なる仏性(仏になる可能性)を目覚めさせてくれるかもしれません。

密教の世界に興味をもったなら、ぜひ一度、大日如来に会いにお寺へ足を運んでみてください。

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