【神社めぐり】日吉神社(滋賀県大津市)〜山王信仰の聖地と比叡の守護神〜

■ 比叡山の守り神としての歴史

滋賀県大津市坂本に鎮座する**日吉大社(ひよしたいしゃ)は、全国の日吉神社・日枝神社・山王神社の総本社です。
創建は非常に古く、社伝によれば
崇神天皇7年(紀元前90年)にまで遡ると伝えられています。
比叡山の麓に位置し、山の神として崇められてきた
大山咋神(おおやまくいのかみ)**を主祭神とし、延暦寺の守護神としても知られています。

平安時代以降は、都の鬼門を守護する神として朝廷から篤い信仰を受け、さらに天台宗の発展とともに**「山王信仰」**が全国に広がっていきました。


■ 御祭神と神徳

東本宮の主祭神:大山咋神(おおやまくいのかみ)
…山の神・土地の神・農業の神として、豊穣と安泰を司る神。
「己の山を治め、人の領地を守る」とされ、地主神(じぬしのかみ)としての信仰が厚いです。

西本宮の主祭神:大己貴神(おおなむちのかみ)
…国造りの神・縁結びの神として知られ、出雲大社の大国主神と同神。

この二柱を中心に、境内には摂社・末社が約40社も鎮座しており、それぞれが自然や生活と密接に関わる神々を祀っています。


■ 山王信仰と神仏習合の象徴

日吉大社は、日本における神仏習合の象徴的存在でもあります。
延暦寺が開かれて以降、比叡山を守護するために山王権現という名で神が仏教と一体化し、「神は仏の化身」とする考え方が定着しました。

この「山王信仰」は、後に江戸の**日枝神社(赤坂)**や、全国の山王社へと広がっていきました。
神仏分離令により明治期に「権現」の名は廃されましたが、その文化的影響は今なお深く残っています。


■ 伝説と信仰の象徴 〜神猿(まさる)〜

日吉大社といえば、境内でよく見られる**「神猿(まさる)」**の像。
猿は神の使いとされ、「魔が去る(まがさる)」=「まさる」という語呂合わせから、厄除け・勝運の象徴とされています。

拝殿前や授与所では、神猿みくじやお守りなど、可愛らしい猿モチーフの授与品が人気です。


■ 年中行事と自然美

春は約3000本の桜、秋は紅葉が山を染める名所として知られ、四季折々の表情を楽しめます。
特に4月の「山王祭」は近江地方を代表する祭礼で、千年以上の伝統を持つ壮大な神事。
神輿の渡御や湖上の行列は圧巻で、「動く文化財」とも称されます。


■ アクセス情報

  • 所在地:滋賀県大津市坂本5丁目1-1
  • アクセス:JR湖西線「比叡山坂本駅」または京阪「坂本比叡山口駅」より徒歩約10分
  • 駐車場:あり(有料)

■ まとめ 〜山と人をつなぐ古社〜

日吉大社は、比叡山を背景に「山の神」と「人の暮らし」を結ぶ神社として、千年以上の歴史を刻んできました。
神仏習合の名残を今に伝え、猿の神使に守られる境内は、穏やかでどこか温かい雰囲気に包まれています。

自然と共に生きる日本人の信仰の原点がここにあり、訪れる人々に「和と調和」の心を教えてくれる場所です。

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