【神社めぐり】明治神宮 ― 近代日本の象徴として生まれた“永遠の杜(もり)”

東京・原宿。
都心の喧騒を一歩離れると、静寂と緑に包まれた広大な森が広がります。
その中心に鎮座するのが、日本を代表する神社のひとつ――**明治神宮(めいじじんぐう)**です。

明治神宮は、明治天皇と昭憲皇太后をお祀りする神社であり、近代日本の幕開けを象徴する聖地。
創建から100年を超えた今も、毎年多くの人々が参拝に訪れ、心を整える場所として親しまれています。


■ 御祭神 ― 明治天皇と昭憲皇太后

明治神宮の御祭神は、

  • 明治天皇(めいじてんのう)
  • 昭憲皇太后(しょうけんこうたいごう)

の二柱です。

明治天皇は、日本を近代国家へと導いた天皇として知られます。
五箇条の御誓文を発布し、西洋文明を積極的に取り入れながらも、日本の伝統を重んじる姿勢を貫かれました。

一方、昭憲皇太后は日本の女性教育の普及や福祉活動に尽力され、
慈愛と知恵の象徴として国民から深く尊敬されました。

この二柱を共に祀る明治神宮は、**「国の礎を築いた御心を永遠に伝える場」**として創建されました。


■ 創建の由緒 ― 国民の想いから生まれた神社

明治天皇が崩御されたのは1912年(明治45年)、昭憲皇太后はその2年後に薨去。
国民は深い悲しみに包まれ、「両陛下を永くお祀りする場所を」との声が全国に広がりました。

1915年、現在の代々木の地が御鎮座の地に選ばれ、
全国から10万人を超える青年たちが奉仕活動として植林を行いました。

この時に植えられた10万本以上の木々が、現在の「明治の杜」として繁り、
人工的に作られたとは思えないほど自然に溶け込んだ森を形成しています。
その設計理念は「永遠の森」――100年先、200年先を見据えた神聖な空間なのです。


■ 社殿と建築美 ― 静謐さを湛える“日本の原型”

明治神宮の社殿は、**檜造りの「神明造(しんめいづくり)」**で、
伊勢神宮の建築様式を基本とした、質実で荘厳な美しさを持ちます。

特に、南神門をくぐった瞬間に感じる「静けさ」と「空気の変化」は格別。
木漏れ日が参道を照らし、玉砂利の音が心に響く――そんな凛とした空間が広がります。

2020年には創建100年を迎え、社殿の修復や境内整備が行われ、今もその美しさを保ち続けています。


■ 神秘の杜 ― 人が創り、自然が育てた奇跡

明治神宮の森は、約70万平方メートル(東京ドーム15個分)の広さを誇り、
国内外の植物が共生する“人工の自然林”です。

当初はスギやヒノキ、シイ、カシなどが人の手で植えられましたが、
現在では自然の遷移により、より豊かな森へと成長しています。

この森は「都市の中の生命循環」の象徴であり、
人と自然の共存のモデルケースとして世界的にも評価されています。


■ 文化と行事 ― 日本の心を伝える祭典

明治神宮では、年間を通じて様々な神事や文化行事が行われます。

  • 元旦の初詣:全国最多の参拝者数を誇り、300万人以上が訪れる。
  • 春・秋の大祭:神楽奉納や流鏑馬神事など、伝統文化を体感できる。
  • 結婚式:白無垢姿の花嫁が回廊を進む姿は、まさに“日本の美”そのもの。

また、境内にある「清正井(きよまさのいど)」は、パワースポットとしても有名です。
かつて加藤清正が掘ったと伝えられる井戸で、透明な湧水が心を浄化すると言われています。


■ アクセスと参拝情報

  • 所在地:東京都渋谷区代々木神園町1-1
  • アクセス
    • JR山手線「原宿駅」徒歩1分
    • 東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前駅」徒歩1分
  • 開門時間:季節により変動(目安:日の出〜日の入り)
  • 公式サイトhttps://www.meijijingu.or.jp/

■ まとめ ― 明治の心を、未来へ

明治神宮は、
「文明開化の時代にあっても、日本の魂を忘れない」という明治天皇の教えを体現する場所です。

人工の森が100年の時を経て自然と一体となったように、
この神社もまた、人々の祈りと時の流れが共に育てた“生きる聖地”といえるでしょう。

静かな杜の中で立ち止まり、心を整える――
そこには、**過去と未来をつなぐ“日本の原点”**が息づいています。

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