滋賀県野洲市に鎮座する 御上神社(みかみじんじゃ) は、近江の名峰・三上山(みかみやま) の麓にある由緒正しい古社です。
その荘厳な佇まいと、神秘的な伝承の数々から「近江の出雲」とも呼ばれ、古代より信仰を集めてきました。
今回は、そんな御上神社の魅力を、歴史・伝説・見どころを交えながら詳しくご紹介します。
■ 御上神社の基本情報
- 所在地:滋賀県野洲市三上838
- 御祭神:天之御影命(あめのみかげのみこと)
- 社格:延喜式内社・名神大社/旧国幣中社
- ご神体:三上山(標高432m)
- 創建:神代の時代(伝・崇神天皇7年)
■ 三上山と御神体信仰
御上神社の背後にそびえる円錐形の山・三上山 は、古くから「近江富士」と呼ばれています。
その美しい姿は、遠くからでも目を引き、まるで自然そのものが神の姿を映しているかのよう。
この山こそが、御上神社のご神体。
つまり本殿の奥には本来「山そのもの」が祀られているという、古代信仰の原形を今に伝える神社なのです。
■ 由緒 ― 古代鍛冶の神を祀る社
御上神社の主祭神・天之御影命(あめのみかげのみこと) は、『古事記』や『日本書紀』にも登場する神で、
天照大神の御鏡(八咫鏡)を造った神 とされています。
そのため御上神社は、金属精錬・鏡造り・鍛冶の神を祀る社として、古代の製鉄集団「鍛冶氏族」から厚い信仰を受けてきました。
特に近江の国は古代から銅・鉄の生産が盛んであり、御上神社はその中心的な信仰拠点といわれています。
また、奈良時代の「延喜式神名帳」にも名神大社として記載されており、
朝廷から国家安泰の祈願を託されるほどの格式を誇っていました。
■ 神秘の伝説 ― ヤマタノオロチと三上山
三上山には数々の伝説が残されています。
中でも有名なのが、「ヤマタノオロチ」と関係する伝説です。
一説によると、三上山はヤマタノオロチの首が埋められた場所とも言われています。
その証として、山の形がまるで龍がうねるように見えることから、古くは「龍神の山」とも呼ばれました。
また、山中には龍神を祀る祠が点在し、雨乞い・水の神としての信仰も篤かったと伝わります。
この伝承は、御上神社の御祭神・天之御影命が「鏡=太陽の神」とされることから、
太陽と水、光と龍という相反する自然信仰が融合した古代の信仰体系を今に伝える証でもあります。
■ 国宝の本殿 ― 鎌倉時代の神社建築美
御上神社の本殿は、**鎌倉時代(1299年)**に建てられたもので、
国宝に指定されています。
檜皮葺(ひわだぶき)の屋根と流麗な「三間社流造(さんげんしゃながれづくり)」の構造は、
神社建築として極めて洗練されており、後世の神社建築にも大きな影響を与えたといわれます。
特に見どころは、柱や斗栱(ときょう)の繊細な彫刻と均整の取れたプロポーション。
近江の名工たちの高い技術が結集された傑作で、境内に立つと、その静謐な美に自然と心が整うことでしょう。
■ 見どころとパワースポット
- 🌿 三上山登拝
標高432mの山頂まで約1時間。山頂には「御上神社奥宮」があり、古代信仰の原点を感じられる神域です。 - 🔔 神門と拝殿
桃山時代の再建と伝えられ、どっしりとした構えが印象的。正面に立つと、背後の三上山と一直線に重なります。 - 💧 湧水「天の真名井」
境内の奥に湧く霊水。古来より病気平癒・延命の水として信仰されてきました。 - ✨ ご利益
鏡造りの神にちなみ、「物事の真実を見通す眼を授かる」「心を映す清めの力」「仕事運・技術運上昇」などが信仰されています。
■ 御上神社を訪れるなら
御上神社へは、JR琵琶湖線「野洲駅」から徒歩約30分。
または、駅からバスで「三上神社前」下車すぐです。
近隣には古墳群や、同じく三上山を遥拝する「三上山古墳」もあり、
古代近江の歴史ロマンを感じながら散策するのもおすすめです。
■ まとめ ― 古代の祈りが息づく山麓の聖地
御上神社は、ただの「古い神社」ではありません。
そこには、自然を神と崇めた日本人の原初的信仰と、古代職人たちの魂が今も息づいています。
背後にそびえる三上山を仰ぎながら、風に揺れる木々の音に耳を澄ませば、
千年以上前の人々の祈りが、静かに心に響くことでしょう。
📸 おすすめ撮影スポット
- 拝殿越しに見る三上山のシルエット
- 朝霧に包まれる神門前
- 夕暮れ時の本殿の屋根の曲線

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