石川県羽咋(はくい)市。能登半島の付け根に位置するこの地に、古代より「海の彼方から来た神」を祀ると伝えられる由緒正しき古社があります。
その名は――気多神社(けたじんじゃ)。
古来より“けがれ(穢れ)の少ない地”とされ、「多くの気(生命の気)」が集まる神域として、北陸地方の人々から篤く信仰されてきました。
◆ 神社の概要
- 所在地:石川県羽咋市寺家町ク1番地
- 御祭神:大己貴命(おおなむちのみこと)
- 社格:延喜式内社・加賀国一宮・国幣大社
- 創建:崇神天皇の御代(紀元前97年頃)とも伝わる
【1】古代の海人信仰と「気多」の名の由来
「気多」という名は、“気(け)=霊力・生命力”が“多く集まる”場所という意味を持ちます。
古代、この地は日本海を往来する海人(あま)たちの信仰拠点であり、海の向こうから来る神々を祀る“海辺の聖地”でした。
社伝によれば、主祭神の**大己貴命(おおなむちのみこと)**が出雲から北陸へ渡り、この地で国造りを行った際に鎮座したといわれます。
つまり、出雲大社と深いつながりを持つ“北陸の出雲”ともいえる存在なのです。
【2】延喜式内社・加賀国一宮としての格式
『延喜式神名帳』(927年)にもその名を連ねる古社で、平安時代にはすでに「加賀国一宮」として国を代表する神社でした。
室町時代には足利将軍家の崇敬を受け、江戸時代には加賀藩主・前田家が篤く庇護。社領や社殿の再建を行うなど、長きにわたり国家的な信仰を集め続けました。
【3】気多神社と恋愛・縁結び信仰
気多神社が特に有名なのは、その縁結びの御利益です。
主祭神・大己貴命は、数多くの女性神と結ばれた「縁の神」として知られ、出雲大社の御祭神・大国主命と同一神。
そのため、「良縁」「結婚成就」「復縁」など、恋愛にまつわる祈願が全国から絶えません。
境内にある「むすび神苑」は、縁結び祈願のために整備された聖域。
神苑の奥にある「入らずの森」は古代から神が宿る禁足地とされ、一般の立ち入りが禁止されています。
森の中から吹く風は“神の息吹”と呼ばれ、訪れる人々はその清らかな気に包まれます。
【4】神話と伝説 ― 海を越えて来た神
気多神社の伝承では、海の向こう「常世の国」から神がこの地に渡来したといわれています。
そのため、境内には海と深く関わる神事が多く、毎年1月に行われる「気多の神事」では、白装束の神職が日本海に向かって祓いを行います。
また、「入らずの森」は古代の神籬(ひもろぎ)――神が降臨する場所とされ、神代のままの自然が今も残されています。
樹齢数百年の巨木が立ち並び、まるで時間が止まったような神秘的な空気が漂っています。
【5】境内の見どころ
● 大拝殿
檜皮葺(ひわだぶき)の屋根が美しい本殿は、国の重要文化財に指定。
荘厳な佇まいながらも、木の香りが感じられる温かみのある建築です。
● むすび神苑
良縁祈願専用の参道があり、ハート型の絵馬や恋のお守りが人気。
若い女性を中心に多くの参拝者が訪れます。
● 入らずの森
一般立ち入り禁止の神域。
神職のみが神事の際に入ることが許される“聖なる森”として、今も厳格に守られています。
【6】祭事と行事
- 1月:気多の神事(お祓い神事)
- 2月:節分祭(厄除け)
- 4月:春季例大祭
- 9月:気多の例祭(お旅まつり)
- 11月:七五三詣・縁結び祭
特に1月の神事では、日本海の荒波の中で行われる「祓いの儀」が有名で、古代の海人信仰の名残を今に伝えています。
【7】アクセス情報
- 所在地:〒925-0003 石川県羽咋市寺家町ク1
- アクセス:JR羽咋駅から徒歩約20分/のと里山海道「柳田IC」より約10分
- 駐車場:あり(無料)
【8】まとめ 〜「気多の神」の宿る地へ〜
気多神社は、北陸の中でも特に“神の気が満ちる場所”として知られています。
その空気は、訪れるだけで心が浄化されるような神聖さ。
海の向こうから渡来した神が今も鎮まり、森に神々の息吹が漂う――
そんな“古代の原風景”が今も息づく、まさに日本の原始信仰を今に伝える神社です。
恋愛成就を願う人はもちろん、心の浄化や運気上昇を求める人にもおすすめの聖地です。
🕊️編集後記
私が訪れた際、「入らずの森」から吹く風はまるで呼吸をするように心地よく、
“ああ、ここには本当に神がいる”と感じました。
ぜひあなたも、静かに森の前に立ち、神々の「気」を感じてみてください。

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