🏯はじめに
全国各地に「恵比寿神社」「蛭子神社」「事代主神社」といった名を冠する神社があります。
その総本社とされるのが、島根県松江市美保関町に鎮座する【美保神社(みほじんじゃ)】です。
美保神社は「えびす様(事代主神)」を祀る神社の中心として厚く信仰され、
漁業・商業繁栄の守護神として日本各地の「えびす信仰」の源流をなしています。
🌊主祭神と由緒
主祭神:事代主神(ことしろぬしのかみ)・三穂津姫神(みほつひめのかみ)
- 事代主神(ことしろぬしのかみ)
大国主神の御子神であり、海上の守護神・商売繁盛の神・福の神として全国的に信仰されています。
釣竿と鯛を持つ「えびす様」の姿で知られます。 - 三穂津姫神(みほつひめのかみ)
天照大神の御子である栲幡千千姫命(たくはたちぢひめのみこと)の娘神とされ、
国土豊穣・家庭円満をもたらす女神として祀られます。
この二柱が祀られることから、美保神社は「夫婦和合」「縁結び」「音楽芸能の守護神」としても崇敬を集めています。
⛩️全国に広がる美保神社系・恵比寿神社
美保神社は出雲大社の「摂社的存在」としても知られ、
出雲大社の大国主神(父神)と、美保神社の事代主神(子神)を両参りする「出雲の両参り」は古くからの風習です。
その信仰は全国へと広がり、
「えびす信仰」「蛭子信仰」として多くの神社が派生しました。
| 神社名 | 所在地 | 備考 |
|---|---|---|
| 美保神社(総本社) | 島根県松江市美保関町 | 全国のえびす神社の総本社。出雲国二宮。 |
| 西宮神社(えびす宮総本社) | 兵庫県西宮市 | 「福男選び」で有名。美保神社の信仰と同根。 |
| 今宮戎神社 | 大阪府大阪市浪速区 | 商売繁盛の神として全国的に知られる。 |
| 京都ゑびす神社 | 京都府東山区 | 「えべっさん」の愛称で親しまれる。 |
| 蛭子神社(広田神社境外摂社) | 兵庫県西宮市 | 西宮えびすの起源とされる古社。 |
| 美保神社(北海道函館) | 北海道函館市 | 北前船交易の関係で建立された美保神社の分社。 |
これらは「えびす信仰」の広がりを示すものであり、
特に漁業・海運・商業に携わる人々にとって、古来より欠かせない守護神となっています。
🎵美保神社系の特徴
1. えびす信仰と商売繁盛の神
美保神社系の神は、笑顔で鯛を抱く「えびす様」として親しまれ、
「招福」「商売繁盛」「豊漁」のご利益があるとされています。
2. 音楽芸能の守護神
事代主神は「言霊の神」「音楽の神」としても信仰され、
雅楽や舞楽など、音楽芸能に関わる人々が奉納を行うことでも有名です。
境内には「楽器殿」があり、全国の演奏家が楽器を奉納しています。
3. 夫婦和合・縁結びの聖地
事代主神と三穂津姫神が夫婦神であるため、
良縁祈願や家庭円満を願う参拝者も多いのが特徴です。
🕉️神仏習合と本地仏
中世の神仏習合時代、美保神社の神々にも本地仏が結びつけられました。
- 事代主神の本地仏:毘沙門天(びしゃもんてん)または大黒天
福徳と商業繁栄を象徴する仏として信仰が融合しました。
えびす・大黒の「二福神信仰」はここから広まりました。 - 三穂津姫神の本地仏:弁才天(べんざいてん)
芸能・音楽・言語の女神として対応し、音楽信仰の源となりました。
このように、美保神社系の神仏習合は「えびす・大黒・弁才天」という福徳の三神信仰へと発展していきました。
🌅美保神社信仰の広がりと文化的意義
美保神社は、単なる「漁業の神」ではなく、
**人々の暮らしを豊かにする「幸福の神」**として全国的に親しまれています。
その信仰は「えびす講」や「十日えびす祭」といった民間行事に受け継がれ、
今でも商家の守り神として、町のいたるところで「えびす顔」に出会うことができます。
🪶まとめ
「美保神社系」は、
海と音楽、福と和を結びつける日本的信仰の結晶です。
- 主祭神:事代主神・三穂津姫神
- 特徴:商売繁盛・豊漁・音楽芸能・縁結び
- 神仏習合:事代主神=毘沙門天/三穂津姫神=弁才天
- 有名分社:西宮神社、今宮戎神社、京都ゑびす神社、美保神社(函館)など
出雲の「父子神信仰」と、全国の「えびす信仰」をつなぐ存在——
それが美保神社系の神々です。

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