🏔️はじめに
日本の名山信仰の中でも、富士山・立山と並び称される「三霊山(さんれいざん)」の一つが、北陸にそびえる霊峰【白山(はくさん)】です。
この白山をご神体として祀る神社が「白山神社系」であり、全国に約3,000社もの分社を持つ、日本でも有数の信仰系統です。
その総本社は、石川県白山市に鎮座する【白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)】で、
古来より「加賀一の宮」として崇敬を集めてきました。
⛩️主祭神
主祭神:菊理媛神(くくりひめのかみ)
配祀神:伊邪那岐神(いざなぎのかみ)、伊邪那美神(いざなみのかみ)
- 菊理媛神
『日本書紀』に一度だけ登場する女神で、
伊邪那岐・伊邪那美の夫婦神を和解させたと伝えられる「調和と縁結びの神」です。
その神秘性から「言葉を超えて人を結ぶ神」として信仰されています。 - 伊邪那岐神・伊邪那美神
日本の国土と八百万の神々を生んだ創造神。
白山信仰では、伊邪那美命が「白山権現」として山に鎮まる神とされ、菊理媛神とともに祀られます。
🏯全国に広がる白山神社系の代表的神社
白山信仰は、奈良時代に泰澄(たいちょう)という修験僧によって開かれ、
その後、加賀・越前・美濃を中心に全国に広がりました。
白山を遥拝するための「白山権現」や「白山社」は、東北から九州まで各地に存在します。
| 神社名 | 所在地 | 特徴・備考 |
|---|---|---|
| 白山比咩神社(総本社) | 石川県白山市三宮町 | 加賀国一の宮。全国白山神社の総本社。 |
| 平泉 白山神社 | 岩手県西磐井郡平泉町 | 中尊寺境内にあり、北方伝播の拠点となった。 |
| 白山神社(新潟) | 新潟県新潟市中央区一番堀通町 | 越後国の総鎮守。新潟総鎮守として栄える。 |
| 白山神社(東京・文京区) | 東京都文京区白山 | 加賀藩主・前田家が江戸に勧請。文京白山神社として有名。 |
| 美濃白山神社(長良) | 岐阜県岐阜市長良 | 泰澄の修行地。白山信仰の南限とも。 |
| 白山神社(長崎) | 長崎県長崎市 | 九州に伝わる白山信仰の代表。漁民の守護神として信仰。 |
🌸白山神社系の特徴
1. 山岳信仰と自然崇拝の融合
白山神社は、富士山信仰・立山信仰と並ぶ「山岳信仰」の代表格です。
山そのものを神体とし、山の霊力を通じて豊穣・水の恵み・生命の再生を願いました。
2. 水と女性の神
白山は「水源の山」であり、
その主神・菊理媛神は水の女神として、農業・安産・縁結びなどにご利益があると信じられています。
3. 縁結びと調和の神
「くくる(結ぶ)」という名前の通り、人と人との縁を取り持つ神として、
恋愛・家庭・人間関係の調和を祈る参拝者が多いのも特徴です。
🕉️神仏習合と白山権現
白山信仰は、平安時代に「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」が進み、
**白山権現(はくさんごんげん)**として仏教的な信仰と結びつきました。
白山三所権現として、次のように対応づけられます。
| 神名 | 本地仏 | ご利益・象徴 |
|---|---|---|
| 菊理媛神 | 十一面観音菩薩 | 慈悲・縁結び・水の恵み |
| 伊邪那岐神 | 阿弥陀如来 | 浄土往生・光明 |
| 伊邪那美神 | 千手観音菩薩 | 救済・再生・母性 |
特に菊理媛神=十一面観音の信仰は広く、
白山の修験者たちは観音菩薩を本地とする「白山観音信仰」を広めました。
🧘白山信仰と修験道
白山は古来、修験者(山伏)たちの修行の場でもありました。
加賀の泰澄大師が開山して以降、白山を拠点とする修験道は全国に広まり、
「越中・加賀・美濃の三道登拝ルート(白山三道)」として栄えました。
白山の修験道は、自然と人との調和を重んじる思想を広め、
今日の「環境信仰」や「水神信仰」にもその影響が見られます。
🌾文化と民間信仰への影響
白山信仰は農村社会にも深く根付いており、
「白山講」「白山まいり」といった民間信仰が全国で行われました。
また、「白山の水」は霊水として大切にされ、
安産祈願や雨乞いの神事など、生活に密着した信仰として親しまれています。
🌿まとめ
白山神社系は、水と命、そして人の縁を結ぶ信仰です。
- 主祭神:菊理媛神(配祀:伊邪那岐神・伊邪那美神)
- ご利益:縁結び・安産・水の守護・調和・再生
- 神仏習合:十一面観音・阿弥陀如来・千手観音との結びつき
- 代表社:白山比咩神社(石川)、文京白山神社(東京)、新潟白山神社 など
霊峰白山を中心に広がったこの信仰は、
自然と人、神と仏を「結ぶ」優しさに満ちた日本的信仰の象徴です。

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