全国に約2,300社あるといわれる「八坂神社」。
その総本社は京都・祇園に鎮座する八坂神社(旧称・祇園社)です。
かつては「祇園社」「感神院」などとも呼ばれ、平安時代から人々に疫病除けの神として厚く信仰されてきました。
■ 主祭神:素戔嗚尊(スサノオノミコト)
八坂神社系の主祭神は、素戔嗚尊(スサノオノミコト)。
荒ぶる神でありながら、八岐大蛇退治や稲田姫命との神話に見られるように、厄を祓い、生命を守る力を持つ神として知られています。
また、八坂神社では素戔嗚尊の妻・櫛稲田姫命(クシイナダヒメノミコト)、子である**八柱御子神(やはしらのみこがみ)**も合わせて祀られています。
この「家族神」としての構成が、八坂神社の温かみある信仰の特色です。
■ 全国の有名な八坂神社
● 京都府・八坂神社(総本社)
祇園の地に鎮座し、全国の八坂・祇園信仰の中心。
毎年7月に行われる「祇園祭」は、日本三大祭のひとつで、疫病退散を祈る神事として始まりました。
この祇園祭こそが、「祇園信仰=八坂神社信仰」の象徴です。
● 東京・八坂神社(新宿区榎町)
江戸の町を守護した祇園社の分霊を勧請。
現在も「牛頭天王社」「天王様」と呼ばれ、厄除け・病気平癒のご利益で知られます。
● 大阪・浪速八坂神社
大阪市浪速区に鎮座する古社で、同じく疫病除けの神として信仰。
「天王寺」や「今宮戎」と並ぶ浪速三社のひとつとされます。
● 福岡県・祇園八坂神社(博多)
博多祇園山笠で知られる神社。
この祭は京都の祇園祭と同様、疫病退散の願いから生まれたもので、博多の町を守る氏神として人々の心に根付いています。
● 北海道・札幌八坂神社(札幌市南区)
明治期に京都八坂神社の御分霊を祀った道内の代表社。
厳しい自然の中でも、無病息災・家内安全を願う人々に篤く信仰されています。
■ 八坂神社の特徴
八坂神社系の神社には、以下のような共通した特徴があります。
- 疫病退散・厄除けの神としての信仰が中心
- 神紋は「木瓜紋(もっこうもん)」が多く使用される
- 境内には「牛」や「鈴」を祀る社があり、病気平癒を象徴
- 「祇園祭」などの神幸祭が盛んで、地域の中心的行事となる
特に、「祇園信仰」と呼ばれるこの系統の神社は、古くから人々の生命を守る神社として発展してきました。
■ 神仏習合の影響 〜牛頭天王信仰〜
八坂神社信仰を語るうえで欠かせないのが、**牛頭天王(ごずてんのう)**の存在です。
牛頭天王は、インドの祇園精舎を守護する神で、仏教とともに日本へ伝わりました。
平安時代、祇園社ではこの牛頭天王を素戔嗚尊と習合させ、「祇園天王」「天王社」として信仰されました。
そのため、かつての八坂神社の古名には「祇園感神院」「天王社」などの呼び方が残っています。
明治の神仏分離令によって、仏の名である「牛頭天王」は公的には廃され、
現在は純粋に神道の神・素戔嗚尊として祀られていますが、
今なお地域によっては「天王さん」「祇園さん」と親しみを込めて呼ばれています。
■ おわりに
八坂神社系の神社は、恐れと祈りの文化の融合を体現した存在です。
疫病や災厄を祓う「祇園信仰」は、千年以上の時を超えて今も息づき、
現代の人々の「健康」や「生命の安寧」を守り続けています。
全国どこへ行っても、「天王さん」「祇園さん」と呼ばれる神社に出会ったら、
それはきっと——京都・八坂神社の祈りの流れを受け継ぐ社です。

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