【神社めぐり】広島県・速谷神社

広島県廿日市市に鎮座する速谷神社は、中国地方において屈指の古社であり、特に交通安全の守護神として全国的にも知られた神社です。宮島(厳島神社)のある地域の中心的な古社で、非常に由緒ある歴史を持っています。


主祭神

速谷大神(はやたにのおおかみ)

この神は、『日本書紀』にも登場するとされる交通守護・国土鎮護の神。
特に「道」の安全、旅の安全に関わる神として、現在でも交通安全祈願の参拝者が絶えません。


歴史的背景・社伝

創建は非常に古く、社伝では「大化改新より前」とも言われています。
平安時代の延喜式神名帳にも記載される式内名神大社であり、安芸国の一宮として国の中心的祭祀が行われた神社です。

古代よりこの地域は西国と畿内を結ぶ要地であり、海上交通、陸上交通が交錯する交通の要衝でした。
そのため「交通安全」を司る速谷大神は、この地に祀られる必然があったとも言えるのです。

中世・近世にも権威は揺らぐことなく、厳島神社の近隣にある古社として、海上安全や国土鎮護祈願の中心地であり続けました。


見どころ

・荘厳かつ落ち着いた雰囲気の社殿と、参道に広がる神域感
・石灯籠、石橋など境内に残る古い意匠
・御神徳にちなんだ交通安全のお守り、車のお祓いスペースが明確に整備されている点
・厳島神社とともに、この地域の古代祭祀文化を感じられる神社であること

特に速谷神社は“現代も活きている信仰”という点が特徴です。
交通安全という現代社会の実生活に直結する御利益から、年間を通して参拝者が多いのが印象的です。


不思議な話・伝承

速谷神社には「参拝した帰りに道中で良い流れが訪れる」という言い伝えが残っています。
古代より陸海交通を支えた神であるため、進む道に停滞がある人が参拝に来ると“道が開ける”とも語られてきました。

また、宮島との関係も歴史的に深く、古代祭祀の段階では“海と陸の守護を対で担っていた”という説を指摘する研究者もいます。
これは、厳島が海の象徴、速谷が陸の象徴であった可能性を示すもので、神社配置そのものが古代の交通観、自然観を反映しているのではないかとも言われています。


まとめ

速谷神社は、古代の交通・道に対する信仰を現代にも明確に残す、数少ない古社です。
厳島神社と合わせて巡ると、この地域の古代信仰体系がより立体的に見えてくるでしょう。

広島・宮島観光の際には、ぜひこの速谷神社も合わせて参拝してみてください。
ここには、海と陸の接点で育まれた古代からの祈りが、今なお息づいています。

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