伊勢神宮 内宮別宮「月讀宮」の境内には、月の神を祀る月讀宮を中心に、四つの別宮が並列しています。
その中の一社が 「伊佐奈弥宮(いざなみのみや)」。
国土を生み、神々を生み、生命を生み育んだ母神「伊弉冉尊」を祀る、美しく意味深い別宮です。
◆御祭神
- 伊弉冉尊(いざなみのみこと)
伊弉諾尊と共に国生み神話を行い、
天照大御神・月讀尊・須佐之男命を産んだ母神です。
伊佐奈岐宮(伊弉諾) と向かい合うように鎮座している構造は、
「父と母」「陰と陽」「命を生む始源」をそのまま空間で表したような神域となっています。
◆由緒と背景
伊佐奈弥宮は、延喜式にも名を連ねる由緒ある別宮。
伊勢神宮内宮の別宮群の中でも、特に“命”の概念と向き合う場所として古くから敬われてきました。
月讀宮、月讀荒御魂宮、伊佐奈岐宮と並列して祀られることで、
神話の系譜がそのまま一列に視覚化され、参拝という行為の中で
「はじまり → 巡り → 命を生み、育む」という流れが体験できる構造を作り上げています。
◆ご利益
伊弉冉尊は、命を生み育む母神であることから、以下のようなご利益が信仰されています。
- 安産・子宝
- 家族円満
- 家庭の守護
- 生命力回復・心の安定
- 物事を育てる力(事業育成にも通ずる)
「育む」というテーマの神徳は、現代人にも非常に響くものがあります。
◆参拝のポイント
四つの宮が横並びに並ぶ構造は伊勢でも非常に特徴的な景観で、
その中でも伊佐奈弥宮は“女性性の源”を象徴する柔らかさ・深みのある空気が漂っています。
参拝順序に決まりはありませんが、
伊佐奈岐宮 → 伊佐奈弥宮 と対で参ることで、神話が示す父母の力のバランスを体感できます。
伊勢へ来たなら、天照大御神や月讀尊を参るだけでなく、
その根源にある「命のはじまり」を祀るこの伊佐奈弥宮にも静かに手を合わせ、
生きる力の源をもう一度自分の中に取り戻してみてください。


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