博多の中心部、都会の喧騒の中にありながら、凛とした静けさを感じさせる古社——それが福岡市博多区に鎮座する 住吉神社(すみよしじんじゃ) です。
この神社は全国に約2,000社あるといわれる住吉神社の中でも、最古の歴史を持つ「筑前一之宮」 として知られています。大阪や下関の住吉大社と並び称される格式高い神社で、海の神々を祀る信仰の中心地です。
■ 住吉神社の由緒と歴史
住吉神社の創建は、なんと 神功皇后(じんぐうこうごう)の時代 にまで遡ると伝えられています。
新羅征討の帰途、航海の安全を守護してくださった「住吉三神」へ感謝の意を込め、神功皇后がこの地に社を建てたのが始まりといわれます。
祀られているのは以下の三柱の神々です。
- 底筒男命(そこつつのおのみこと)
- 中筒男命(なかつつのおのみこと)
- 表筒男命(うわつつのおのみこと)
この三神を総称して 「住吉三神」 と呼び、いずれも海上守護・航海安全の神として古代より信仰されてきました。
また、神功皇后が自らの戦勝祈願を託した地としても知られ、「武運長久」「勝負運」そして「厄除開運」にご利益があるとされています。
さらに、古事記や日本書紀の記述からも、福岡の住吉神社は 大阪の住吉大社よりも古い とされており、「全国住吉神社の元宮」ともいわれています。
■ 博多の中心で感じる神域の静寂
境内に一歩足を踏み入れると、そこは別世界。
立派な 桧皮葺(ひわだぶき)の本殿 は国の重要文化財にも指定されており、室町時代の建築様式を今に伝えています。
本殿の背後には神功皇后を祀る「神功皇后社」、また芸能の神として知られる「恵比須社」など多くの摂末社が並び、ひとつひとつ丁寧にお参りしたくなる趣があります。
特に、拝殿前に鎮座する力強い姿の「力石」は必見です。
かつて力自慢の若者たちがこの石を持ち上げて腕力を競ったと伝わり、現在でも「勝負運を授かる石」として人気があります。
■ ご利益と信仰
住吉三神は、もともと海の神として信仰されてきましたが、博多という貿易都市の発展とともに、「航海安全・交通安全・商売繁盛」の守護神として厚く崇敬されてきました。
また、神功皇后が戦勝祈願を行ったことから「勝負運上昇・厄除開運」のご利益もあるとされています。
境内には、静かに佇む「能楽殿」もあり、博多の伝統文化である能楽の発展にも深く関わっています。毎年10月には「住吉神社能楽殿奉納能」が行われ、優雅な舞が奉納されます。
■ 博多の「相撲発祥の地」
もうひとつ見逃せないのが、住吉神社が「相撲発祥の地」としても知られていることです。
境内には「相撲場」が設けられており、毎年「奉納相撲大会」が開催されます。これは、神功皇后が戦の前に力士たちに稽古をさせ、士気を高めたという伝承に由来するものです。
そのため、力士やスポーツ選手も勝負運を祈願して訪れることが多いのです。
■ 年中行事
- 1月:歳旦祭(さいたんさい)
新年の始まりを告げる厳かな祭典。多くの参拝客でにぎわいます。 - 5月:博多どんたく港まつり
博多を代表する祭りで、住吉神社もそのルートの中心として多くの人で賑わいます。 - 10月:相撲奉納大会・住吉祭
力士たちが奉納相撲を披露し、古式ゆかしい神事が執り行われます。
■ アクセス情報
- 所在地:福岡県福岡市博多区住吉3丁目1-51
- 交通アクセス:
・JR博多駅から徒歩約10分
・西鉄バス「住吉」停留所下車すぐ - 駐車場:あり(無料・台数制限あり)
■ おわりに
博多の住吉神社は、都市の中にありながら、古代から続く海の神の信仰を今に伝える貴重な神社です。
その歴史は古く、建築美も見事。勝負運や厄除け、航海安全などのご利益を求めて、多くの参拝者が足を運びます。
博多駅からも歩いて行ける距離にあるので、観光の合間にも立ち寄りやすいスポットです。
ぜひ一度、静かな杜に包まれたこの古社で、悠久の時の流れを感じてみてください。


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