〜出雲神話の舞台、須賀の地に伝わる古社〜
島根県雲南市大東町須賀に鎮座する**布須神社(ふすじんじゃ)は、
日本神話に登場する須佐之男命(すさのおのみこと)と稲田姫命(いなたひめのみこと)**が新居を構えたと伝わる神聖な地に建つ神社です。
出雲の神話を辿るうえで欠かせないスポットの一つであり、
「ヤマタノオロチ退治」の後、二柱の神が鎮まったとされる須賀の地に深く結びついています。
■ 神社の概要
- 所在地:島根県雲南市大東町須賀260
- 主祭神:須佐之男命(すさのおのみこと)
- 配祀神:稲田姫命(いなたひめのみこと)
- 創建:神代(伝)
- 社格:旧村社
「布須」という社名は、古代の言葉で“神聖な場を包み守る”という意味を持つともいわれています。
その名の通り、山と水に囲まれた静謐な境内は、まさに神が降臨したような厳かな雰囲気を漂わせています。
■ 由緒・歴史
布須神社は、古くから**須賀神社(すがじんじゃ)**の奥宮・元宮にあたると伝わる神社です。
神話によれば、
須佐之男命は八岐大蛇(やまたのおろち)を退治したのち、稲田姫命を妻に迎え、
この須賀の地に宮を建てて「ここに来て心がすがすがしくなった」と言われたことから、
この地が「須賀(すが)」と呼ばれるようになったと伝わります。
『出雲国風土記』(奈良時代)にもこの地の名が見られ、古代から聖地として崇敬されていたことがうかがえます。
その中で布須神社は、スサノオとイナタヒメが初めて鎮座された地として伝承されており、
須賀神社の本殿を建てる以前に祀られた“原初の宮”とされています。
■ 神社の見どころ
◎ 神話の息づく静かな社殿
布須神社は、山あいの集落の中にひっそりと鎮座しています。
杉木立に囲まれた境内は、清らかな空気に満ちており、
鳥居をくぐると一瞬にして別世界へ踏み込んだかのような静寂に包まれます。
社殿は木造の素朴な佇まいながら、どこか温かみがあり、
古代信仰の原点を感じさせる雰囲気を漂わせています。
◎ 「須賀の宮」発祥の地
須賀神社が「日本初之宮」と称されるのは、この布須神社の存在あってこそ。
布須神社があった場所に、後に須賀神社が建てられたと伝わっています。
そのため、布須神社は須賀信仰の原点とも呼ばれています。
◎ 神域を流れる清流
境内近くを流れる小川は、古くから「御手洗川(みたらしがわ)」と呼ばれ、
禊(みそぎ)の場として使われてきました。
清らかな水音が響く境内は、まるでスサノオが浄めを行ったかのような神聖な気配に満ちています。
■ ご祭神とご利益
主祭神である須佐之男命は、災厄を祓う神・農業の守護神として信仰されています。
また、配祀神の稲田姫命は、夫婦円満・縁結び・家庭円満の神として崇められています。
そのため布須神社では、
- 厄除け・災難除け
- 縁結び
- 家内安全
- 農業守護
などのご利益があるといわれています。
特に夫婦や恋人での参拝は、縁を深めるご利益があると伝わっています。
■ 年中行事
- 例祭(10月15日)
五穀豊穣と地域の安全を祈願する伝統の祭りで、太鼓や神楽の奉納も行われます。 - 春祭(4月)
農作業の始まりを告げる祈年祭で、豊かな実りを願う地元の人々が集います。
■ アクセス
- 所在地:島根県雲南市大東町須賀260
- 交通アクセス:
JR木次線「出雲大東駅」から車で約15分。
松江市中心部から車で約1時間。
近隣には、スサノオとイナタヒメが鎮まる須賀神社、
そして縁結びで知られる八重垣神社など、神話ゆかりの神社が多く点在しています。
■ まとめ
布須神社は、出雲神話の象徴であるスサノオとイナタヒメの物語を今に伝える、
まさに「神話の原点」ともいえる神社です。
静寂と清らかな自然の中で、
八岐大蛇を退治した英雄神と、慈愛に満ちた女神の結びつきを感じることができるでしょう。
出雲の神話を辿る旅の際には、ぜひこの布須神社にも足を運んでみてください。
華やかさはなくとも、そこには日本神話の息づく原風景が残されています。


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