日本の伝説や武家の歴史の中には、多くの名刀・霊剣が登場します。その中でも特に神秘性が高く、「天皇から源氏へと伝わった剣」として知られるのが 壺切御剣(つぼきりのみつるぎ) です。
本記事では、その由来・伝承・歴史をわかりやすく解説し、壺切御剣がどのように日本の武家文化や信仰と結びついてきたのかを紹介します。
■ 壺切御剣とは?
壺切御剣は、日本の伝説に登場する名刀で、
「壺の中の毒蛇を切ったことから壺切」と呼ばれるようになった」
と伝えられる霊剣です。
別名として、
- 壺切剣
- 髭切(ひげきり)
- 鬼切(おにきり)
などがあり、源氏の名刀伝承の中心に位置しています。
■ 壺切御剣の主な特徴
● 天皇から源氏に下された宝剣
壺切御剣は、ある天皇(時代に諸説あり)が重臣に下賜し、
その後 清和源氏の家祖・源満仲 に伝わったと言われています。
源満仲はこの剣を重宝し、以後、
- 源頼光(平安時代の武将)
- その四天王(渡辺綱など)
へと受け継がれ、退魔の剣として活躍します。
■ 代表的な伝承
● ① 壺の中の毒蛇を一刀両断した
あるとき壺の中に毒蛇が潜んでおり、
その壺に剣をかざすと、
剣が自ら動いて毒蛇を切り伏せた
という伝承があります。
これが壺切御剣の最も有名な逸話です。
● ② 「髭切」と呼ばれた理由
源頼光が寝ている間に盗賊が近づいた際、
剣を枕元に置いていた頼光の髭が、
剣の霊力によって切れた
という伝承から「髭切」とも呼ばれました。
● ③ 「鬼切」へと名を変える
頼光の家臣・渡辺綱が、
京都・一条戻橋で鬼女の腕を切り落とした伝説があります。
この時に用いた剣が髭切であり、
鬼を退治したことから「鬼切」と改名されたと伝わります。
■ 源氏の家宝としての位置づけ
壺切御剣(髭切・鬼切)は、
源氏の象徴的な宝剣 として後世に語り継がれます。
とくに、
- 頼光四天王の鬼退治伝説
- 土蜘蛛退治
- 酒呑童子伝説
など、平安時代の武勇譚の多くに関わっており、
「源氏の英雄物語」に欠かせない存在となりました。
■ 現在伝わる壺切御剣
現在、壺切御剣とされる刀は数振り伝わっていますが、
もっとも有名なのは
● 京都・北野天満宮に伝わる「鬼切丸」
- 国宝に指定されている名刀
- 源氏の家宝として伝わり、のちに豊臣秀吉→前田家へ
この鬼切丸が、壺切・髭切の後身であるとされています。
刀の姿は平安時代の古い太刀の特徴を残し、
日本刀史の中でも非常に重要な位置を占めています。
■ 壺切御剣が象徴するもの
壺切御剣の伝説は、
ただの「名刀」の話ではありません。
● ① 帝から源氏へと受け継がれる正統性
天皇から授かったという設定は、
源氏が「武家の正統性」を背負う象徴となります。
● ② 退魔・護身の象徴
鬼・妖異を断つ力を持つ剣として、
武士の心の拠り所にもなりました。
● ③ 英雄譚と武家文化の融合
頼光・綱らの物語とともに、
日本の武士道精神の初期イメージを形づくったといえます。
■ まとめ:壺切御剣は源氏伝説の中心に立つ“神秘の剣”
壺切御剣(髭切・鬼切)は、
- 毒蛇を切った壺切の伝承
- 源頼光四天王の鬼退治
- 鬼切丸としての現存刀
など、多彩な伝説と歴史を併せ持つ名刀です。
その霊剣としての存在は、
武士が台頭していく平安から鎌倉時代の物語を形づくり、
今もなお多くの人々を魅了し続けています。


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