【神話図鑑】賀茂神社の神話

― 下鴨神社と上賀茂神社をつなぐ「賀茂氏の祖神伝説」

京都最古の神社の一つとされる 賀茂神社
現在は「下鴨神社(賀茂御祖神社)」と「上賀茂神社(賀茂別雷神社)」という二社に分かれていますが、両社には共通の神話があり、古代豪族 賀茂氏 の信仰を元にした物語が存在します。

この記事では、

  • 賀茂氏の祖先神
  • 賀茂神話の中心人物
  • 両社につながる神々の関係
  • 雷の神が誕生する神話的背景

を分かりやすくまとめ、神話としての魅力を深掘りします。


■ 賀茂神社の神々 — まずは家系関係を整理

賀茂神社の神々は母系の女神の系統が中心になっており、神々の生まれ方や物語も独特です。

● 下鴨神社(賀茂御祖神社)の主祭神

  • 玉依姫命(たまよりひめのみこと)
  • 賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)

● 上賀茂神社(賀茂別雷神社)の主祭神

  • 賀茂別雷命(かもわけいかづちのみこと)(雷神)

ここから、どのように神々がつながるかを“神話的ストーリー”として見ていきましょう。


■ ① 下鴨神社の神話:賀茂氏の祖神「建角身命」と娘・玉依姫命

賀茂氏の祖神とされるのが 賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)

『山城風土記』逸文では、
彼は「八咫烏(やたがらす)」として神武天皇を導いた 導きの神 と同一視されることもあります。

★ 建角身命の娘・玉依姫の誕生

賀茂建角身命の娘が 玉依姫命

“玉に依る姫” という名からわかるように、
神霊(玉)と深い関わりを持つ神秘的な姫として描かれます。

下鴨神社は 御祖神(みおやがみ)=祖先神 を祀る社であるため、
彼らは賀茂氏の「根源の神」として信仰されてきました。


■ ② 玉依姫と「赤い矢」— 賀茂別雷命の誕生神話

上賀茂神社につながる最も有名な神話がここです。

ある日、玉依姫が川で禊をしていると、

■ 川上から 一本の赤い矢(丹塗矢) が流れてくる

姫がその矢を持ち帰り、部屋の隅に置くと……

翌朝、彼女は身籠っていたといいます。

この不思議な受胎が、雷神 賀茂別雷命 の誕生です。

ここでポイント

丹塗矢=「雷」「天からの力」「男性的神霊」を象徴する
→ 賀茂別雷命は “天の力そのもの” を象徴する神として位置づけられます。


■ ③ 賀茂別雷命の成人と「御阿礼祭」の起源

玉依姫は生まれた子を立派に育て、やがて賀茂別雷命が成人する頃…

■ 賀茂別雷命は天へ昇り、雷の神となる

天の力を宿した存在である彼は、
やがて「地を離れて天へ帰った」とされます。

その時、姫は「ここに天の神が現れたことを祝い、祀り続けるべき」と宣言し、
賀茂氏の氏神としての祭祀が始まりました。

これが古代から続く 御阿礼祭(みあれさい) の起源とされます。
現在の「葵祭」は、この御阿礼祭の流れをくむ祭です。


■ ④ 上賀茂神社の神話:賀茂別雷命の降臨と“神山”

上賀茂神社(賀茂別雷神社)は、
賀茂別雷命が降臨した場所とされる 神山(こうやま) を神体山とします。

■ 雷神が鎮まる場所としての「神山」

  • 雷=天からの力
  • 山頂=天と地をつなぐ場所
  • 御神体山信仰は古代豪族の祭祀の原型

賀茂別雷命は山頂から地を守る存在とされ、
強い浄化力や厄除けの神として信仰されてきました。


■ ⑤ 下鴨神社と上賀茂神社は “親子関係の神社”

● 下鴨神社

 母:玉依姫命
 祖父:賀茂建角身命
→ 賀茂氏の「根源」「はじまり」

● 上賀茂神社

 子:賀茂別雷命(雷神)
→ “天の力” を象徴する次世代の神

賀茂氏の祖先から、雷の神が誕生し、
その神が山に鎮まるという“親子三代”の物語こそ、
賀茂神社の神話の中心なのです。


■ ⑥ 賀茂神話が京都で重視された理由

賀茂氏は、平安京が置かれる以前からこの地を守っていた有力豪族でした。

京都の守護神へ

  • 山城国を守護する氏族
  • 賀茂社は「王城鎮護」の社
  • 平安遷都後、国家祭祀として格上げ(官幣大社)

葵祭が勅祭(天皇の祈りの祭)となったのも、
国家として賀茂神話の力を必要としたからです。


■ まとめ:賀茂神話は “京都の始まりを語る物語”

賀茂神話の魅力を簡潔にまとめると、

  • 導きの神(建角身命)
  • 神霊の力を受ける巫女(玉依姫)
  • 天から生まれた雷神(賀茂別雷命)

という 三代にわたる神々のドラマ で構成されています。

そしてこの物語が、

  • 下鴨神社(祖神を祀る社)
  • 上賀茂神社(雷神を祀る社)
    という二つの社の由緒として受け継がれ、
    平安京・京都の歴史と深く結びついていきました。

賀茂神話は、京都の歴史そのものを照らす“古代からの光”と言えるでしょう。

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