京都は千年以上にわたり日本の都であり続け、政治・文化・信仰の中心地として独自の祭礼文化を育んできました。
その中でも 「京都三大祭り」 と総称されるのが、
- 葵祭(あおいまつり)
- 祇園祭(ぎおんまつり)
- 時代祭(じだいまつり)
の三つです。
これらは単なる観光行事ではなく、国家安泰・都の平穏・疫病退散といった切実な祈りから生まれ、今もなお神事として受け継がれています。
本記事では、それぞれの祭りについて「どの神社の祭礼か」「なぜ始まったのか」「何が行われているのか」「何を意味するのか」を丁寧に掘り下げ、京都三大祭りの本質に迫ります。
京都三大祭り 一覧表
| 祭り名 | 開催時期 | 関連神社 | 主な性格 |
|---|---|---|---|
| 葵祭 | 5月15日 | 賀茂別雷神社・賀茂御祖神社 | 国家鎮護・五穀豊穣 |
| 祇園祭 | 7月(1か月間) | 八坂神社 | 疫病退散・厄除け |
| 時代祭 | 10月22日 | 平安神宮 | 都の歴史顕彰 |
第一の祭り:葵祭
― 神代にまで遡る、京都最古の王朝祭礼 ―
■ 祭りを行う神社
両社の総称が「賀茂社」であり、葵祭は賀茂社の例祭です。
■ 祭りの起源と意味
葵祭の起源は**『日本書紀』**に記される6世紀、欽明天皇の時代にまで遡ります。
当時、
- 風雨による凶作
- 疫病の流行
が相次ぎ、これを 賀茂の神の祟り と考え、天皇が勅使を派遣して祭礼を行ったのが始まりとされます。
つまり葵祭は、
国家の危機を鎮めるために行われた「国家鎮護の祭」
だったのです。
■ 「葵祭」という名の由来
葵祭の名は、祭礼に使われる 「二葉葵(ふたばあおい)」 に由来します。
- 神職・勅使・牛車・装束に葵を飾る
- 葵は賀茂神の神紋
葵は
生命力・再生・神聖性
を象徴する植物で、賀茂信仰の中核をなします。
■ 葵祭で何が行われるのか
① 路頭の儀(ろとうのぎ)
5月15日、京都御所から賀茂社へ向かう行列。
- 斎王代
- 勅使
- 官人
- 牛車
など、平安王朝そのままの姿で進みます。
これは単なるパレードではなく、
天皇の使者が神に祈りを捧げに向かう神事
です。
② 社頭の儀
上賀茂神社・下鴨神社での正式な奉幣・祝詞奏上。
■ 葵祭の本質
- 神の怒りを鎮める
- 国の安泰と五穀豊穣を祈る
- 天皇と神を結ぶ儀式
👉 「神代と王朝を今に伝える生きた儀式」
それが葵祭です。
第二の祭り:祇園祭
― 疫病を封じる、都最大の霊的防衛祭礼 ―
■ 祭りを行う神社
- 八坂神社(旧・祇園社)
主祭神:
- 素戔嗚尊(すさのおのみこと)
- 櫛稲田姫命
- 八柱御子神
■ 祭りの起源と意味
祇園祭の起源は869年(貞観11年)。
当時の都では、
- 疫病
- 天災
- 政変
が相次ぎ、これを御霊(怨霊)や疫神の仕業と恐れました。
そこで行われたのが
「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」。
■ 祇園祭の本来の目的
祇園祭は本質的に、
疫病神を鎮め、封じ込めるための呪術的・宗教的儀礼
です。
山鉾は「動く神殿」であり、
- 神を迎える
- 災厄を集める
- 清めて祓う
という役割を担います。
■ 祇園祭で何が行われているのか
① 山鉾巡行(前祭・後祭)
巨大な山鉾が京都市中を巡行。
- 釘を使わない「縄がらみ」技法
- 霊獣・神話・歴史人物の装飾
② 神輿渡御
八坂神社の神輿が氏子区域へ出向く神事。
これは
神が町に降臨し、疫病を祓う
ことを意味します。
■ 祇園祭の本質
- 疫病退散
- 怨霊鎮魂
- 都市全体の浄化
👉 「都を守るための巨大な結界儀礼」
それが祇園祭です。
第三の祭り:時代祭
― 歴史そのものを神に捧げる近代の祭 ―
■ 祭りを行う神社
- 平安神宮
祭神:
- 桓武天皇
- 孝明天皇
■ 祭りの起源と意味
時代祭は1895年(明治28年)、
平安遷都1100年を記念して始まりました。
東京遷都によって衰退した京都の誇りと歴史を、
「千年の都として再定義する」
目的で創設された祭です。
■ 時代祭で何が行われるのか
時代行列
明治から平安時代へと逆行する形で行列が進みます。
- 明治維新志士
- 江戸時代の町人・武士
- 戦国武将
- 平安貴族
すべて考証に基づく正確な装束。
■ 時代祭の本質
- 京都の歴史そのものを神に奉納
- 都の記憶を未来へ継承
👉 「歴史を神事として捧げる祭」
それが時代祭です。
京都三大祭りが示すもの
三つの祭りは、それぞれ異なる役割を担っています。
| 祭り | 象徴するもの |
|---|---|
| 葵祭 | 神と天皇の結びつき |
| 祇園祭 | 災厄から都を守る力 |
| 時代祭 | 都の歴史と記憶 |
京都三大祭りとは、
神・人・歴史が一体となって都を支えてきた証
なのです。
まとめ
京都三大祭りは「見る行事」ではありません。
祈り・鎮め・記憶を継ぐための生きた神事です。
この視点で祭りを見ると、
山鉾一基、装束一枚にも
千年分の意味が宿っていることに気づくはずです。

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