【仏様図鑑】准胝観音(じゅんていかんのん)― 七倶胝仏母と称される密教系の観音菩薩

観音菩薩にはさまざまな化身があり、その中には仏教が中国・日本に伝来する過程で特に密教において重要視された存在もあります。
その一尊が、今回ご紹介する「准胝観音(じゅんていかんのん)」です。

准胝観音は、千手観音や十一面観音のように広く知られてはいないかもしれませんが、密教修法において極めて尊い存在とされ、「七倶胝仏母(しちくていぶつも)」という異名を持つほど、深い信仰の対象となっています。


■ 准胝観音とは?

准胝観音は、サンスクリット語で「チュンダー(Cundī)」と呼ばれ、「純潔・清浄・柔和」を意味する女尊の仏です。
密教では観音菩薩の一尊とされ、慈悲と智慧を兼ね備えた仏母として尊崇されます。

● 七倶胝仏母とは?

「七倶胝仏母」とは「七億の仏を生み出す母」という意味で、無数の仏や菩薩を生み出す力を持つとされています。
つまり、准胝観音は無限の救済力を象徴しているのです。


■ 准胝観音の特徴

項目内容
姿通常は三目十八臂(目が三つ、手が十八本)
性別女尊(女性の姿)で描かれることが多い
持物武器・法具・蓮華・宝珠などさまざま
合掌中央の両手は合掌することが多い
台座蓮華座に座る姿、あるいは立像も存在

十八の手には煩悩を断ち、衆生を救うための道具が握られており、その一つひとつが象徴的な意味を持ちます。


■ 准胝観音のご利益

准胝観音は密教修法の本尊として、特に「現世利益(げんぜりやく)」に秀でた仏として信仰されてきました。

ご利益内容
所願成就願いごとの成就全般(特に現世的な願望)
病気平癒心身の病の快癒
延命長寿健康と長寿を願う
安産・子授け女性の守護仏として特に厚く信仰される
学業成就智慧を授ける仏として学業にもご利益

■ 准胝観音の真言

准胝観音を礼拝するときに唱える真言は以下の通りです:

オン シャレイ シュレイ ジュンテイ ソワカ

この真言は准胝観音の慈悲と智慧を呼び起こすもので、特に密教の修行者が修法の中で重視しています。


■ 准胝観音を祀る寺院

准胝観音を本尊あるいは重要な尊像として祀る寺院は、日本ではそれほど多くありませんが、密教系の寺院でまれに祀られています。

寺院名所在地特徴
金剛峯寺和歌山県高野山高野山真言宗の総本山、密教修法で准胝観音を祀る
醍醐寺京都府京都市真言宗醍醐派、修験道において准胝法が伝わる
円成寺奈良県奈良市准胝観音像を安置する密教寺院

■ まとめ|密教における母なる仏、准胝観音の慈悲と智慧

准胝観音は「万人の願いを叶える仏」として、密教を中心に篤く信仰されてきた観音菩薩です。
その柔和な姿と圧倒的な救済力は、多くの仏を生み出す母なる存在として、現代においても多くの人々の心のよりどころとなっています。

普段の観音信仰とはひと味違う、密教的な世界に触れてみたい方には、ぜひ准胝観音へのお参りや真言の読誦をおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました