【仏様図鑑】薬師如来 〜病を癒し、身心を救う東方の仏様〜

私たち人間にとって、病気やけがは避けて通れないもの。
そんな「病苦」から救ってくれる仏様として、古来より深く信仰されてきたのが 薬師如来(やくしにょらい) です。

今回は、医薬・健康の守り仏である薬師如来について、わかりやすく丁寧に解説します。


■ 薬師如来とは?

● 正式名称は「薬師瑠璃光如来」

薬師如来の正式なお名前は
薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)

瑠璃(るり)」とは宝石の一種で、透き通る青い光を放つ石のこと。
つまり薬師如来は「青く清らかな光を放ち、病を癒す仏様」とされます。

● 東方浄瑠璃世界の仏

薬師如来は、東方(ひがし)の浄瑠璃世界を治める如来。
西方の阿弥陀如来に対し、東方に位置する救済の仏とされ、**現世利益(生きている間の救い)**を司ります。


■ 薬師如来のご利益・信仰

薬師如来は、「病気の平癒」「健康長寿」「心の癒し」など、身体と心の苦しみを取り除く仏様として古くから信仰されています。

● 代表的なご利益

  • 病気・けがの回復
  • 健康祈願・無病息災
  • 医療関係者の守護
  • 心の平穏・不安解消
  • 延命・長寿祈願
  • 安産・子授け

現代でも多くの薬師如来を祀るお寺で「健康祈願」「お守り」「病気平癒祈願」が盛んに行われています。


■ 薬師如来の仏像の特徴

薬師如来像には、はっきりとした特徴があります。阿弥陀如来と混同されやすいですが、**手に持つ薬壺(やっこ)**が最大の特徴です。

要素特徴
表情厳しさとやさしさをあわせもつ表情
僧衣をまとい、シンプルで質素な姿
頭部肉髻(にっけい)と螺髪(らほつ)あり
手の形(印相)右手で施無畏印(せむいいん)、左手に**薬壺(やっこ)**を持つ

薬壺には、人の苦しみを癒す霊薬が入っているとされ、現代の「医薬の守り神」のような存在としても信仰されています。


■ 薬師如来の脇侍と眷属:薬師三尊・十二神将

● 薬師三尊

薬師如来像は、以下のような三尊形式で安置されることがあります。

仏名役割
薬師如来(中央)主尊。病を癒し命を延ばす
日光菩薩(右)日の光で世界を照らす
月光菩薩(左)月のやさしさで心を癒す

● 十二神将

薬師如来を守護する12体の武神。
それぞれが十二支に対応しており、信者の病を除くために力を尽くします。


■ 薬師如来の信仰の歴史

日本では飛鳥時代からすでに信仰されており、奈良時代には国家仏教としても重要視されました。

  • 聖徳太子が薬師信仰を広めたとされる
  • **薬師寺(奈良県)**が国家鎮護の寺院として建立
  • 平安・鎌倉時代には民間にも広まり、病気平癒祈願が一般的に

「仏の力で病を治す」という信仰は、近代の医学が発達するまで広く人々を支えていました。


■ 薬師如来を本尊とする有名寺院

寺院名所在地特徴
薬師寺奈良県奈良市天武天皇が発願した大寺。国宝の薬師三尊像を安置
清水寺(奥の院)京都府京都市観音信仰のほか、薬師如来への信仰もあり
湯殿山神社本宮(奥之院)山形県修験道の霊地。湯で癒す信仰と結びつく
平泉 中尊寺(薬師堂)岩手県奥州藤原氏ゆかりの古刹に薬師如来を安置
薬王院全国各地「薬師」の名を冠する寺院多数あり

■ 豆知識:薬師如来と現代医療のつながり

  • 薬師如来は「医王如来」とも呼ばれる
  • 医学・薬学を志す人が祈願する仏様でもある
  • お守りや護摩札には「病気平癒」「健康長寿」などが書かれる
  • コロナ禍でも薬師信仰が見直される場面もあった

■ まとめ|薬師如来は「心身を癒す仏様」

現代社会においても、病や不安はつきもの。
薬師如来は、そんな苦しみに寄り添い、私たちの「生きる力」を支えてくれる仏様です。

厳しくも温かいそのまなざしは、苦しみに打ちひしがれるときこそ、
「見守られている安心感」を与えてくれます。

仏様のちからで心身が癒され、日々を健やかに生きるきっかけになりますように。

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