【伝説図鑑】日本神話 (その3 国譲りと天孫降臨)

第8話:オオクニヌシと国譲り交渉

高天原を治める天照大神は、「葦原中国(地上の国)」を自分の子孫に治めさせようと考えます。しかしその地は、すでに大国主神(オオクニヌシ)が平和に治めていました。

天照大神はまず天の使者・アメノホヒを遣わしますが、オオクニヌシに取り込まれて帰ってきません。続いてアメワカヒコが遣わされますが、彼も裏切ります。

そこで最後に遣わされたのが、神性高き武神・タケミカヅチ。彼は出雲の稲佐の浜に降り立ち、国を譲るように迫ります。オオクニヌシはその場で答えず、息子たちと相談し、最終的には国譲りを承諾します。

この「国譲り」は、天孫族と地祇族の統合・和合を象徴する神話であり、日本の国家成立の精神的な土台とも言える伝承です。

▼関連神社:出雲大社(島根県)
▼ご利益:国土安泰・縁結び


第9話:タケミナカタの敗北と諏訪への逃走

オオクニヌシの次男・タケミナカタは国譲りに反対し、タケミカヅチに力比べを挑みます。しかし、その圧倒的な力の前に敗れ、北方へと逃れます。

そして最終的にたどり着いたのが信濃国・諏訪の地。タケミナカタは「これより先へは行かない」と誓い、この地に鎮まりました。

この神話は「武神の封印と定着」を示し、諏訪信仰のはじまりともなっています。力で敗れた神が、新たな土地で守護神へと変わる姿は、日本神話の柔軟な包摂性を感じさせます。

▼関連神社:諏訪大社(長野県)
▼ご利益:勝運・農耕・風・水の神


第10話:アメノワカヒコの裏切りと死

天照大神から最初に使わされたアメノホヒの息子・アメノワカヒコは、地上に降りたまま、オオクニヌシの娘と結ばれ、この地に魅了されてしまいます。

天界に戻らない彼に業を煮やした天照大神は、「天の鹿の羽矢(あまのかのはや)」をもって彼を討とうとします。この矢は彼の胸を貫き、死に至らしめます。

そして彼の葬儀で、八咫烏が「裏切りの報い」としてその死を知らせに来たといわれています。

この神話は、天と地、忠誠と裏切り、そして任務と愛の狭間で揺れた男の悲劇として描かれます。

▼関連地名:羽咋(石川県)、加賀地方
▼神話の教訓:使命と欲望の対立


第11話:天孫降臨(ニニギノミコトの降臨)

高天原から地上を治めるため、天照大神の孫・ニニギノミコトがついに「天孫降臨」を果たします。

三種の神器(八咫鏡・天叢雲剣・八尺瓊勾玉)を授けられ、天の道「天の浮橋」から日向(現在の宮崎県)に降り立ちます。同行するのは猿田彦神やアメノウズメなど。

ニニギは、地上世界に秩序と正義をもたらす天孫族の長として、ここから日本の王朝の始まりを担うことになります。

▼関連神社:霧島神宮・高千穂神社(宮崎県・鹿児島県)
▼三種の神器の意味:鏡=知恵、剣=力、勾玉=仁


第12話:コノハナサクヤヒメと火中出産の伝説

ニニギノミコトは地上で、美しい姫・コノハナサクヤヒメと出会い、結婚します。彼女は一夜で身ごもったことをニニギに疑われ、「私の子なら、火の中でも無事に生まれるはず」と言って、産屋に火を放ち、その中で三柱の子を無事に出産します。

このとき生まれたのが、ホデリ、ホスセリ、そして山幸彦(ホオリ)——のちの天皇家の祖先です。

この伝説は「潔白の証明」と「母の強さ」を象徴しており、また日本人の自然信仰(花=命の象徴)とも深く関わっています。

▼関連神社:富士山本宮浅間大社、木花神社(各地の浅間神社)
▼ご利益:安産・子授け・家庭円満


【神武東征と初代天皇】

第13話:神武東征と八咫烏(ヤタガラス)の導き

天照大神の血を引く神武天皇(カムヤマトイワレビコ)は、日向の地から東へ向かい、大和(奈良)を目指します。これが「神武東征」です。

途中、熊野の山中で道に迷いますが、天の使いである「八咫烏(やたがらす)」が現れ、神武一行を導きます。これにより無事に大和へと到達し、初代天皇として即位するに至ります。

八咫烏は今も「導きの象徴」とされ、日本サッカー協会のエンブレムにも用いられています。

▼関連神社:橿原神宮(奈良県)
▼ご利益:道開き・勝利・導き

コメント

タイトルとURLをコピーしました