【名所めぐり】稲佐の浜 ― 神々が降り立つ「国譲り神話」の舞台。出雲随一の聖なる海岸 

 島根県出雲市大社町にある稲佐の浜(いなさのはま)は、日本神話「国譲り」の舞台として知られる出雲随一の聖地です。
 白い砂浜と奇岩「弁天島」が象徴的な景勝地で、出雲大社から歩いて行ける立地もあり、全国から多くの参拝者が訪れます。

 朝夕に見せる神秘的な景観はまさに“神々が降り立つ場所”。
 神話を知らなくても心に響く、美しさと荘厳さが同居する海岸です。


■ 稲佐の浜とは?

 出雲大社の西方に広がる白砂の海岸で、古代から神迎えの浜として神聖視されてきました。

 象徴となっている岩島「弁天島」には、小さなお社と注連縄が掛けられており、海と神・人をつなぐ神聖な象徴として今も大切にされています。


■ 神話「国譲り」と稲佐の浜

● 天照大神の使者が降り立った地

『古事記』『日本書紀』に登場する「国譲り神話」。
天照大神は出雲を治める大国主命に国を譲るよう求め、
その使者として**武甕槌命(たけみかづちのみこと)**を派遣します。

その武甕槌命が降り立った場所こそ、稲佐の浜。

そしてこの地で、大国主命は国譲りについての決断を迫られました。

● 「天と地の分かれ目」とされる聖地

この交渉は、
“海岸で向き合う神と神”
という、非常にドラマチックな情景で描かれています。

稲佐の浜は、それほどまでに重要な神話的舞台であり、
古代の人々が“海”を通じて異界・神界を意識していたことを象徴しています。


■ 現在の稲佐の浜の役割 ― 神迎神事

● 出雲大社「神在祭」の始まりの地

旧暦10月、全国の八百万の神々が出雲に集まる「神在月(かみありづき)」。
日本中が“神無月”と呼ぶ中、出雲だけが神々で満ちる特別な期間です。

このとき行われるのが「神迎神事(かみむかえしんじ)」。
その最初の神事が行われるのが、まさに稲佐の浜。

祭主が松明を掲げ、波音の中で神々をお迎えする光景は壮麗そのもの。
多くの参拝者が見守る、出雲を象徴する神事です。


■ 稲佐の浜の見どころ

◆ ① 弁天島(べんてんじま)

稲佐の浜のアイコンともいえる奇岩。
頂上の小祠は市杵島姫命(弁才天)を祀っているとされ、
長年の風と波が作り上げた神秘的な姿は写真スポットとしても人気です。

◆ ② 夕日の名所

稲佐の浜は“日本の夕日百選”にも選ばれた絶景スポット。
特に、弁天島に夕日が重なる瞬間は圧巻で、
カメラを構えた旅行者が多く集まります。

◆ ③ 出雲大社から歩いて巡礼できる

出雲大社の西端から徒歩約15分ほど。
神社参拝と海岸巡りをセットで楽しめる稀有な場所です。

◆ ④ 白砂と青い海のコントラスト

神話の舞台でありながら、海水浴場として親しまれる一面も。
澄んだ青い海と白砂のコントラストは、一年を通して美しい景観を見せます。


■ 稲佐の浜の歴史的価値

  • 『出雲國風土記』(奈良時代)にも記載
  • 古代から祭祀が行われていたと推定
  • 出雲大社との信仰圏が一体であることを示す場所

“海を通じて神が来る”という古代的な信仰を、最もよく残す海岸のひとつです。


■ アクセス

所在地:島根県出雲市大社町杵築北
・出雲大社から徒歩約15分
・一畑電車「出雲大社前駅」から徒歩20分
・駐車場あり(観光シーズンは混雑)


■ 稲佐の浜はこんな人におすすめ

  • 出雲神話に興味がある
  • 神在祭や神迎神事を見てみたい
  • 夕日の絶景スポットを巡りたい
  • 出雲大社周辺の聖地巡礼をしたい
  • 神秘的な海岸の雰囲気が好き

■ まとめ

稲佐の浜は、単なる海岸ではありません。
**神々が降り立ち、国が譲られ、今も神々を迎える“現役の聖地”**です。

海と空、風と岩が織り成す自然の美しさに、
古代神話がそのまま息づいている稀有な場所。

出雲大社を訪れる際は、必ず足を運びたい聖なる名所です。

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