**『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』**は、平安初期頃に成立したと考えられる古代史書です。通称「旧事紀」。
内容は神代から神武天皇までの歴史を記し、記紀(古事記・日本書紀)と同様に神話・系譜・国史を扱う資料ですが、記紀とは異なる伝承・記録を数多く含みます。
また、物部氏や忌部氏など、古代豪族側の視点・系譜が強く反映されているのが最大の特徴です。
■全10巻の構成
『先代旧事本紀』は以下の10巻から構成されています
- 天神本紀
- 天孫本紀
- 天皇本紀
- 國造本紀
- 職員本紀
- 神祇本紀
- 皇后本紀
- 帝王本紀
- 王子本紀
- 氏族本紀
特に物部系・忌部系の神祇観が強い点は日本書紀と比較研究される大きなポイント。
例えば國造本紀は全国の国造氏族の系譜記録が多く、古代地方統治の実像把握に重要な資料とされています。
■なぜ「謎が多い書物」なのか
学術的にみて、『先代旧事本紀』の成立過程は不明な点が非常に多く、
「偽書か?」「古伝承を残す超貴重資料か?」という議論が1000年以上つづいています。
しかし近年は古代豪族系資料の比較、考古学的裏付け、地域の伝承材料として
記紀だけでは見えない古代国家形成のもう一つの層を示す書物として注目度が再び上昇しています。
■この書の価値
- 記紀にない特殊伝承が多い
- 古代祭祀の具体像がやや立体的
- 氏族史の補完資料として有力
- 出雲・物部・忌部など「神祇の裏ルート」に強い
「国家中心から見た歴史=日本書紀」
に対し
「豪族・地方神祇側から見た古代史=旧事紀」
そういう対照関係にあると理解すると非常に面白い読み方ができます。
■現代においての活用
神社巡りや地方の神話研究では、この資料が手掛かりになることも多いです。
同じ神でも
なぜ地域によって伝承が違うのか
なぜ特定氏族が強い権威を持っていたのか
そのヒントは旧事紀側にある事が多い。
ブログ、フィールドワーク、神社研究者の中では
「記紀と旧事紀をセットで読む」ことがだんだん常識化しつつあります。
まとめ
『先代旧事本紀』は、まだ全貌が掴み切れていない、古代史最大級の「未解明アーカイブ」。
記紀と並びながらも正史とは別方向の光を当てる、もう一つの古代日本史です。
古代史・神話・神社を深く掘りたい人にとって
記紀と旧事紀の対照読みは必須ともいえる奥深い世界が開けます。

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