― 雄略天皇二十二年条 現代語訳 ―
浦島伝説は、後世の御伽話として広まる以前に、すでに奈良時代の正史に記録されています。
ここでは、日本書紀 巻第十四・雄略天皇二十二年条に記される原文を紹介し、現代語訳を付します。
二十二年、
秋七月、
丹波國餘社郡筒川人瑞江浦嶋子、
乗レ舟而釣、遂得(二)大龜(一)。
便化(二)爲女(一)。
於レ是浦嶋子感以爲レ婦、
相逐入レ海、到(二)蓬莱山(一)、
歴(二)覩仙衆(一)。
語在(二)別巻(一)。
◆ 現代語訳
雄略天皇二十二年、秋七月のこと。
丹波国余社郡筒川の人、瑞江の浦嶋子が、
舟に乗って釣りをしていたところ、大きな亀を釣り上げた。
するとその亀は、たちまち女に変わった。
そこで浦嶋子は心を動かされ、その女を妻とした。
二人は連れ立って海に入り、
蓬莱山へと至った。
そこで仙人たちの姿を目にした。
その詳しい物語は別巻にある。
◆ 用語の簡潔な補足(本文理解のため)
- 丹波国余社郡筒川
現在の京都府北部(丹後地方)にあたる地域。 - 蓬莱山(ほうらいさん)
中国神仙思想における仙境の島。日本古代では「常世(とこよ)」観と結びつく。 - 語在別巻
「詳細な物語は別巻にある」という意味。
現存する『日本書紀』本文にはその別巻は残っていない。
◆ まとめ
この記述は非常に簡潔ですが、後世の浦島太郎物語の基本構造――
- 釣りをする
- 亀を得る
- 亀が女に変わる
- 妻となる
- 海中の蓬莱山へ至る
- 仙人の世界を見る
という骨格が、すでに奈良時代の国家編纂史書に記されていることがわかります。
ここでは玉手箱や帰郷後の老化は記されておらず、
あくまで「蓬莱山へ至り仙衆を見る」という神仙譚の核心のみが簡潔に記録されています。

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