境界を守る厄除けの神 ― 日本最古級の道祖神
■ 久那戸神とは?
久那戸神は、『古事記』に登場する 道の守護神・境界の神 です。
「岐神(くなどのかみ)」「久那斗神」「クナドの大神」などとも表記され、
悪霊・災厄の侵入を防ぎ、道を守る神 として信仰されてきました。
特に 村境・神域の境・分岐点 に祀られ、「塞(さい)の神」「道祖神」と同一視されることもあります。
■ 神話での久那戸神
『古事記』で黄泉国から戻ったイザナギが禊(みそぎ)を行った際、
その汚れを祓う過程で誕生した神々のひと柱として登場します。
● 久那戸神が担った役割
- 国の境界を守る神として配置
- 邪悪なものが人々の住む世界に入り込むのを防ぐ
- 旅の安全、人の行き交う道を整える守護神として発展
“境界に立って災いを封じる”という点から、
後世には 村の入口や三叉路に祀られる石の神(道祖神) に重ねられていきました。
■ 久那戸神の神格・ご利益
久那戸神は「境界」を司るため、以下のご利益が期待されます。
● ご利益
- 厄除け・災厄封じ
- 悪霊・邪気・疫病の侵入防止
- 交通安全・旅の安全
- 土地や家の守護
- 魔除け
現代の感覚では、
「トラブルの侵入を防ぐ」「境界でブロックする守護神」
として非常にわかりやすい存在です。
■ 久那戸神を祀る主な神社
久那戸神単独を祀る神社は多くありませんが、
古くから 塞の神・道祖神 として各地に信仰が残っています。
● 主な神社
- 久那戸神社(奈良県御所市)
日本でも特に有名な久那戸神の古社。
境界の守護神として厚く信仰され、延喜式内社にも比定される古社。 - 大神神社(奈良県桜井市)境内末社・久延彦神社の近くに関係社が存在
三輪山信仰と関わり、境界・道の守りの神格が見られる。 - 各地の道祖神(石碑・石像)
実質的に久那戸神の性格を受け継ぐとされる。
さらに、
「塞(さい)の神」「道祖神」「賽の神」の多くは
久那戸神と同系統の神として祀られています。
■ 久那戸神とその他の神の関係
久那戸神はしばしば以下の神と習合・同一視されます。
- 道祖神(どうそじん)
旅の安全・村境を守る神 - 岐神(ふなどのかみ/くなどのかみ)
交通・道の神。久那戸神と同一とする説が一般的 - 塞の神(さいのかみ)
辺境・境界・村境を守る神
これらの神々は地域差が大きいものの、
共通して 「悪いものを村に入れない」守護の役割 を持ちます。
■ 久那戸神の信仰が伝えるメッセージ
久那戸神の存在意義は、
「境界に守りの力が宿る」という古代日本人の世界観そのものです。
- 境界に立つと災いを食い止められる
- 村と外の世界を区切るラインが神聖視される
- 家や土地にも“守りの境界”が必要
現代でも、
玄関に盛り塩を置く、家の表に魔除けを飾る文化はこの思想の延長線上にあります。
久那戸神は、
“悪いものを家族に近づけない、日本の最古のセキュリティ神” ともいえるでしょう。


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