「尾張」という土地の神話を語るとき、
忘れてはならないのが――**建筒草命（たけつつくさのみこと）**という神の存在です。
草薙剣（くさなぎのつるぎ）の神話や、ヤマトタケル命の伝承、さらには尾張氏の祖先とされる系譜に深く関わるこの神は、“神宝を守り、伝える”役割を果たした神として注目されます。
今回は、そんな建筒草命についてご紹介します。
◆ 建筒草命とは？
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 神名 | 建筒草命（たけつつくさのみこと） |
| 読み方 | たけつつくさのみこと |
| 神格 | 尾張氏の祖神、武神、守護神、草薙剣に関わる神 |
| ご利益 | 家系守護、武運長久、神宝守護、土地鎮護 |
| 主な伝承地 | 熱田神宮（愛知県名古屋市）、尾張地方 |
◆ 建筒草命の神話的背景
建筒草命は、『先代旧事本紀（せんだいくじほんぎ）』や『尾張国風土記』逸文などに登場し、
草薙剣（くさなぎのつるぎ）を熱田に納めた重要人物として伝えられています。
◉ 主な系譜と役割
- 父：天火明命（あめのほあかりのみこと）
（尾張氏の始祖神であり、天照大神の孫とも伝えられる） - 建筒草命：草薙剣を熱田に奉納し、剣を祀る「熱田神宮」の神事の祖とも言われる
つまり、建筒草命は――
「草薙剣」と「熱田の地」と「尾張氏」の接点に立つ神なのです。
◆ 草薙剣との関わり
草薙剣は、三種の神器のひとつとして知られる天叢雲剣（あめのむらくものつるぎ）の別名で、
もとはスサノオ命がヤマタノオロチを討った際にその尾から取り出したもの。
その後、この剣はヤマトタケル命が東征で使用し、最終的に熱田の地に留め置かれました。
◉ 建筒草命の役割
- 草薙剣を尾張の地に守り伝えた存在
- 熱田神宮の神剣奉納伝承に登場
- 剣を祀るための神事や祭祀を整えたとされ、“剣の番人”のような神
◆ 祀られている神社
◉ 熱田神宮（愛知県名古屋市）
- 主祭神は熱田大神（草薙剣の御霊）であり、建筒草命はその摂社・別宮などで祀られている場合がある。
- 境内の八剣宮などにも建筒草命を含む尾張氏縁の神々が祀られている。
◉ その他の関連神社
| 神社名 | 所在地 | 備考 |
|---|---|---|
| 尾張大國霊神社（国府宮） | 愛知県稲沢市 | 尾張氏の祖神とともに信仰される |
| 建筒草神社 | 地域によっては小祠として現存 |
◆ ご利益と信仰
| ご利益 | 意味 |
|---|---|
| 🏯 家系守護 | 尾張氏の祖神として、家系の安寧を祈る |
| ⚔ 武運長久 | 剣神との関わりから、武士や武道家の信仰もあり |
| 🔥 神宝守護 | 貴重な宝（草薙剣）を守り伝えた精神の象徴 |
| 🌾 地域鎮護 | 尾張の地に根ざす信仰として、土地の繁栄と守護の神 |
◆ 現代における意義
建筒草命は、古代豪族・尾張氏の精神的支柱であり、三種の神器と直結する神として見直されています。
地域の祭祀や神道系の研究者の中では、「熱田神宮のもう一人の主役」と言われることもあります。
また、“重要なものを託され、それを誠実に守りぬく力”という面では、
現代人にも通じる生き方の指針として捉えることができるでしょう。
◆ まとめ｜草薙剣を今に伝える、誠の守護神
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 神名 | 建筒草命（たけつつくさのみこと） |
| 神格 | 武神、守護神、草薙剣奉納の神 |
| ご利益 | 家系守護、武運長久、土地鎮護、忠誠・誠実の象徴 |
| 関連地 | 熱田神宮、尾張地方 |
| 系譜 | 天火明命の子、尾張氏の祖神系統 |
剣を託され、地を守り、誠を尽くした神――
建筒草命は、派手な神話に登場しなくとも、日本神話の“本流”を静かに支え続けた存在です。
熱田を訪れた際には、ぜひ草薙剣の神話の陰にこの神の存在を感じてみてください。
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