神 様 図 鑑 — No. 043
ひこほほでみのみこと(やまさちひこ) 彦火火出見尊
山幸彦として知られる天孫の孫神 / 海神の宮への冒険と鯛の骨から釣り針を見つけた神 / 天皇家の直接の祖神
① 名前と出典
| 正式名称 | 彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)日本書紀 |
|---|---|
| 古事記表記 | 火遠理命(ほをりのみこと)古事記 |
| 通称・別名 | 山幸彦(やまさちひこ)——兄・火照命(海幸彦)と対比した通称。古事記・日本書紀 |
| 名前の意味 | 「彦(ひこ)」は神の子・貴い男性の意。「火火出見(ほほでみ)」は「火の霊力が広く輝く・ほのほのように輝いて現れる」という意。全体として「火の霊力が輝き出る神」——天孫の血統の輝きを体現した神という意味。「山幸彦」の「幸(さち)」は古語で「猟具・漁具の霊力・豊かな獲物」を意味し、山の幸(獲物)を得る者という意。 |
| 初出文献 | 古事記(712年)中巻・日本書紀(720年)神代下。瓊瓊杵尊(No.035)と木花之佐久夜毘売(No.025)の三男として生まれ、兄・海幸彦との釣り針の貸し借りと海神の宮への冒険を経て天皇家の血統を継いだ神として詳細に記録される。 |
② 神様の種類・神格
| 分類 | 天津神——瓊瓊杵尊の御子・天孫三代目・神武天皇の祖父神——天照大神(祖祖母)→天忍穂耳命(祖父)→瓊瓊杵尊(父)→彦火火出見尊という天孫の系譜の三代目。海神の宮での体験を経て地上と海(異界)の両方の力を体得し、その血統が神武天皇へとつながる。 |
|---|---|
| 神格 | 天孫神・農業神・漁業神・縁結神・海の守護神・弓矢の神 |
| 特徴 | 「山幸彦と海幸彦」という物語は「山(陸)と海の対立・和解」という日本の自然観を体現する神話として、日本の自然信仰の根幹に位置する。海神の宮で知った「潮満珠(しおみちのたま)・潮涸珠(しおひるのたま)」という海を操る宝珠を用いて兄を制したことが、「天孫が海も山も制する支配者になった」ことを示す。 |
③ 系図
④ 活躍した時代
瓊瓊杵尊の三男として生まれた彦火火出見尊は、兄・海幸彦の釣り針を失って海神の宮を訪れ、そこで豊玉毘売命と出会い婚姻した。海神から授かった知恵と宝珠を用いて帰還し兄を制した後、高千穂の地で576年間過ごしたとされる。その御子・鵜葺草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)が生まれ、その子が神武天皇となって日本を統一したことで、彦火火出見尊は「神武天皇の祖父神」として天皇家の血統の重要な一節を担う。
祀られる神社
登場する神話・伝説
「山幸彦と海幸彦」の物語は日本神話最大の「異界冒険譚」のひとつです。山で狩りをする山幸彦(彦火火出見尊)と海で漁をする海幸彦(兄・火照命)が道具を交換したところ、山幸彦が海幸彦の大切な釣り針を魚に持っていかれてしまい、針を返せない山幸彦は途方に暮れました。そこで海神の宮(「竜宮」に相当する海の底の神の国)を訪れ、そこで海神の娘・豊玉毘売命と出会い婚姻するという展開は「浦島太郎」の原型とも言われています。
海神の宮への冒険——失った釣り針を求めて竜宮へ
兄の釣り針を失った山幸彦は浜辺で嘆いていたところ、塩椎神(しおつちのかみ)という老翁に出会い「海神(わたつみ)の宮を訪ねよ」と助言を受けた。海神の宮に着いた山幸彦は豊玉毘売命(海神の娘)と出会い、その美しさに魅了されて求婚し婚姻した。海神の宮で三年を過ごした後、海神から「釣り針は鯛の喉に刺さっている」と教えてもらい、さらに「潮満珠(しおみちのたま)・潮涸珠(しおひるのたま)」という潮を操る宝珠を授かって地上に戻った。この宝珠を用いて兄・海幸彦を制し、「海の支配者」の力も手に入れた山幸彦は陸と海を統べる神となった。
豊玉毘売命の出産と別れ——神話最大の悲恋
地上に戻った山幸彦のもとに身ごもった豊玉毘売命が海から訪れ、出産のための産屋(うぶや)を作った。豊玉毘売命は「出産の際は本来の姿になるので絶対に覗かないでほしい」と頼んだが、山幸彦は我慢できずに覗いてしまった。そこには鮫(さめ)のような巨大な姿(本来の海の生き物の姿)で苦しんでいる豊玉毘売命の姿があった。「覗かれた」と知った豊玉毘売命は深く傷ついて海へ帰り、以後海と陸の行き来ができなくなったという。この「覗き見による別れ」という悲恋のテーマは日本神話の中でも最も感動的な場面のひとつとして語り継がれている。
逸話・エピソード
霧島神宮(鹿児島県霧島市)は天孫降臨の地・高千穂峰を御神体山として仰ぐ壮大な神宮で、彦火火出見尊(山幸彦)と父神・瓊瓊杵尊(No.035)の両神を主祭神として祀る。深い杉の森に囲まれた朱塗りの社殿と霧島連峰の絶景が組み合わさった「日本最強クラスの神話パワースポット」として、神社ファン・歴史ファンから熱烈な支持を受ける。縁結りの神としての信仰も厚く、「坂本龍馬の日本初の新婚旅行で参拝した」という逸話でも有名。名古屋から飛行機で鹿児島まで約1時間10分→バス・タクシーで約40分。
宮崎県日南市の鵜戸神宮(うどじんぐう)は日向灘を臨む断崖の洞窟の中に鎮座するという全国でも稀有なロケーションの神社。豊玉毘売命が彦火火出見尊の御子(鵜葺草葺不合命)を出産した場所として伝えられ、境内の洞窟の中に本殿が設けられている。「岩の上のくぼみに運玉(運玉)を投げ入れると願いが叶う」という独特の参拝作法も有名で、特に縁結び・安産・子育てのご利益で女性参拝者から絶大な人気を誇る。宮崎の「日向神話三社」(霧島神宮・高千穂神社・鵜戸神宮)のひとつとして、九州の神話旅行の必訪地。

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