【神社めぐり】南宮大社~金属の神を祀る・美濃国一宮、鉄と繁栄を司る古社~

岐阜県西部、垂井町。
伊吹山を望む雄大な風景の中に、朱塗りの壮麗な社殿を構える神社があります。
それが、美濃国一宮として古代から崇敬を集める――**南宮大社(なんぐうたいしゃ)**です。

この神社は「金山彦命(かなやまひこのみこと)」を主祭神とし、金属・鉱山・鍛冶の守護神として信仰されてきました。
そのため、現在でも製鉄業・建築業・機械工業に携わる人々の厚い信仰を集めています。


◆ 神社の概要

  • 所在地:岐阜県不破郡垂井町宮代1734-1
  • 御祭神:金山彦命(かなやまひこのみこと)
  • 配祀神:見野命(みののみこと)、彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)
  • 社格:式内社・美濃国一宮・旧国幣大社
  • 創建:神武天皇の御代と伝えられる

【1】南宮大社の起源 ― 鉄の神が鎮まる地

社伝によると、南宮大社の創建は非常に古く、**神武天皇東征の際(紀元前660年頃)**に遡るとされています。
天皇が伊吹山に鎮まる荒ぶる神を平定した後、金山彦命がこの地を守護したことから、その功績を称え鎮座したのが始まりです。

金山彦命は『日本書紀』にも登場し、金属(鉄・銅・銀など)を司る神として知られます。
彼は神産巣日神(かみむすひのかみ)の子で、妹の金山姫命(かなやまひめのみこと)とともに「鉱山の神」「鍛冶の神」として古代の鉄器文化を支えました。


【2】「金属の守護神」としての信仰

南宮大社は“金属の総本宮”とも呼ばれ、
全国各地の鍛冶師・鋳物師・建築関係者から篤く崇敬されています。

たとえば、刀鍛冶たちは作刀の前に「金山彦命」に祈願を捧げ、
建築業者は金具や釘を打つ前に南宮大社の守護を願う風習が残っています。

また、「金運上昇・事業繁栄の神」としても知られ、
鉄=産業の基礎を意味することから、商売繁盛や会社の発展を願う参拝者も多いのです。


【3】戦国武将にも崇敬された神社

南宮大社は古来より国家鎮護の神社とされ、
平安時代には「延喜式神名帳」にも名を連ねる式内名神大社でした。

戦国時代には、織田信長の兵火によって社殿が焼失しましたが、
江戸時代初期、徳川家康の命により再建されました。
現存する社殿はこの時に造営されたもので、国の重要文化財に指定されています。


【4】壮麗な朱塗りの社殿群

南宮大社の社殿群は、いずれも鮮やかな朱塗りが施され、荘厳さと美しさを兼ね備えています。
特に見どころは以下の通りです。

● 楼門

重厚な二層構造の門で、参道の正面にそびえ立つ朱の楼門は圧巻。
高さ約15mの大門は、金属の神を祀るにふさわしい威厳を放ちます。

● 本殿・幣殿・拝殿

檜皮葺の屋根が美しく、桃山様式の華麗な装飾が特徴。
彫刻や彩色も見事で、国指定重要文化財に登録されています。

● 境内の南宮山

社殿の背後にある「南宮山(標高419m)」は神体山であり、古くから信仰の対象。
山中には奥宮が鎮座し、修験道の霊場としても知られています。


【5】神話の背景 ― 鉄を生み出した神の力

金山彦命は、日本神話における鉄と火の調和の神です。
火の神・軻遇突智命(かぐつちのみこと)により鉱石が生成され、
金山彦命がそれを鍛えて金属を生み出す――
この神話は、古代の製鉄文化の象徴でもあります。

南宮大社の「火」と「鉄」の神は、
“破壊と創造”“荒ぶる力と文明の力”の両面を併せ持つ神聖な存在なのです。


【6】年間行事と祭り

  • 1月1日:歳旦祭
  • 4月3日:例大祭(南宮祭)
    → 華やかな神輿行列や雅楽の奉納があり、垂井町最大の行事。
  • 7月:夏越の大祓式
  • 11月:新嘗祭

特に春の「南宮祭」は1,000年以上の歴史を持つ伝統行事で、
地元の人々が奉納舞や流鏑馬を行い、神に豊穣を感謝します。


【7】アクセス情報

  • 所在地:〒503-2124 岐阜県不破郡垂井町宮代1734-1
  • アクセス:JR垂井駅から徒歩約15分
  • 駐車場:あり(無料・約200台)
  • 公式サイト南宮大社公式HP

【8】まとめ 〜“鉄の神”が見守る繁栄の聖地〜

南宮大社は、美濃国一宮として古代から国家鎮護の神として崇敬を集め、
現代では金属の神・産業繁栄の神・金運の神として信仰されています。

社殿の美しさ、背後にそびえる神体山の神秘、
そして、火と鉄を象徴する神の力。

それらが一体となって放つエネルギーは、
まさに「現代社会の根幹を支える神社」といえるでしょう。

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